第393話 天罡星⑪
『はう! 次が『第一門』ということは、これで全部なのですか?』
船の上で、[シン]が指をくわえながら尋ねる。
「ああ。『第一門』を守護する[
そう……[呼保義]と『第二門』の守護者である[
それよりも。
「この世界の真実、か……」
俺が知っているのは、この世界が『ガイスト×レブナント』というゲームの世界で、俺達はそのゲームのキャラクターだっていうこと。
そして、このゲームの結末を知っていて、このままだとサクヤさんには最悪のシナリオが待っているっていうことだ。
「……ヨーヘイくん、今は悩んでいても仕方がない。まずは、その守護者に話を聞こうではないか」
「はは……ですね」
俺とサクヤさんは頷き合っていると。
「ッ! 見えたワ!」
俺達の“梁山泊”
「ふむ……さすがに出迎えてまで、ということはないか」
桟橋に船をつけて島に足を踏み入れると、サクヤさんがポツリ、と呟いた。
「クク……いずれにせよ、この鳥居の向こうにはいるのだ。慌てる必要はあるまい」
「ま、それはそうだな」
俺達は鳥居をくぐり、[呼保義]と[玉麒麟]の待つ舞台へと向かうと。
『待っていたわ』
『待っていたぞ』
中原王国の鎧をまとった屈強な中年の男と、涼やかな表情を浮かべた黒髪の綺麗な女性が舞台の上で控えていた。
男の名は、『第二門』の守護者、[玉麒麟]
そして……この女性こそが、“梁山泊”
「それで……[知多星]から聞いたが、俺達に
『ええ、もちろん』
[呼保義]はニコリ、と微笑んだ瞬間、舞台の上に円卓と人数分の椅子が出現した。
『ふふ……どうぞお掛けになって?』
「は、はあ……」
勧められるまま俺達は椅子に座る……っ!?
『大丈夫。毒などは入っておりませんよ』
突然目の前に現れた、湯気の立ったお茶を見て驚く俺達に、[呼保義]はクスクスと笑いながらそう言った。
『ふむ……[呼保義]殿、彼等にはどこから話をするかの……?』
『そうですね……』
[呼保義]は、口元に手を当てて思案する。
『……まず、この世界がどのようなものなのか、ご存知ですか?』
「この世界、ですか……?」
どうする……? 俺と、『攻略サイト』のことを告げた中条はこの世界がゲームの世界だってことは知っているが、それをサクヤさんとプラーミャに知られてもいいんだろうか……。
『ふふ、ご安心ください。今は私と[玉麒麟]、それにあなたと[シン]だけですから』
「っ!?」
『はう!?』
周りを見ると、いつの間にか霧に包まれ、一緒に席に座っていたはずのサクヤさん達の姿がなかった。
『……これは、我が時の狭間へとお主達二人のみを連れてきただけだ。話が終われば、すぐに戻れる』
「そ、そうか……」
『それで……答えを聞かせてもらえますか?』
「あ、ああ……ここは“ゲームの世界”、だろ……?」
俺は二人の表情を
『……ゲームというものが何を意味するのかは分かりませんが、少なくともここは、別の世界にある物語です』
「…………………………」
『ふふ……ですが、本音を言うと[神行太保]のマスターが知っているとは思いませんでした』
あれ? わざわざ俺に尋ねてきたから、知ってるモンだと思ってたのに……。
『ふむ……これは興味深いな……』
『ふふ……[神行太保]のマスターは、特別な存在のようですね』
ええと……二人してまじまじと見るの、やめてほしいなあ……。
『はう! [シン]のマスターはすごいのです! 素敵なのです! 天下無双なのです!』
「いや、最後はおかしい」
俺は冷静に[シン]にツッコミを入れると、[呼保義]がクスクスと笑った。
『では、[シン]のマスター……あなたは、その物語の結末がどうなるか、ご存知ですか?』
「……(コクリ)」
『そうですか……』
俺が頷くのを見て、[呼保義]が一瞬悲しそうな表情を浮かべた。
『物語通りに進めていっても、おそらくあなた自身には特に影響はないでしょう。元々、あなたはこの物語に関与する人物ではありませんから』
「はは……でしょうね」
『……それでもなお、こうやってこの“梁山泊”
「はい」
こんなの、問われるまでもない。
俺は、この物語の結末をぶっ壊して、サクヤさんを救うんだ。
そして……サクヤさんの隣に、俺は……。
『……どうやら、私達がお教えできることはほとんどないみたいですね』
『ふむ……それはそれで物足りぬがな……』
「い、いやいや、まだ“管理者”について教えてもらってないぞ!?」
苦笑しながら頷き合う二人を見て、俺は思わずツッコんでしまった。
そもそも、その“管理者”について教えてもらえるって、[知多星]からは聞いてたんだぞ!?
『ふふ……心配しないで?
「
おかしいぞ!? “梁山泊”
なのに、なんで次が……!?
『ほら、あなたの仲間達が待っています。私達と共に戻りましょう』
「あ! オ、オイ!?」
[呼保義]と[玉麒麟]は、それぞれ『慈』と『罡』と記された宝玉に姿を変え、[シン]の中へと入っていった。
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