第227話 悠木を囲んでランチ
交流戦も午前の部が終了し、各自昼食に入る。
で、メイザース学園はうちの学園で用意した食堂で昼ご飯を食べることになるんだけど。
「……ふふ、こんにちは」
「おお! 悠木!」
そんな貴重な時間をぬって、悠木がわざわざ声を掛けてきてくれたのだ。
「はは! 元気そうだな! ……って、この前も電話で話したところなんだけど」
「……ふふ、本当ね」
クスクスと笑う悠木に、俺も思わずほっこりとしてしまう。
本音を言えば、施設を出てメイザース学園に転校して、悠木が苦労してないはずがないんだ。
でも、それでも俺に会いに来てくれて、少しでも俺を安心させようとしてくれてる悠木の気遣いが嬉しかった。
「あ、そうだ! 何なら俺達と一緒に昼メシ……ってえ!?」
昼メシに誘おうとした瞬間、突然背中に痛みが走ったので振り返ると……あ、サンドラがメッチャ怒ってる。
まあ、“グラハム塔”
その時。
「望月くん、一緒にお昼を……む、悠木くん」
「…………………………(ペコリ)」
昼メシを誘いに来てくれた先輩が悠木に気づくと、悠木は気まずそうな表情で、無言でお辞儀をした。
「ふふ……望月くんから話は聞いていたものの、元気そうで何よりだ」
「! ……あ、ありがとうございます!」
ニコリ、と微笑みながら先輩がそう告げると、悠木はその一言で緊張がほぐれたのか、笑顔になった。
はは……先輩のこういう優しいところ、ずるいくらい最高だよなあ……。
「うむ。そうだ、せっかくだから君も一緒にランチをしないか? といっても、メイザース学園の他の生徒達と同様、食堂になってしまうが」
「……は、はい! ぜひ!」
先輩にも誘われたことで、サンドラは気に入らないものの何も言えなくなってしまったみたいだ。
「サンドラ……お前の気持ちも分かるけど、
そう……あの件は、
でも、サンドラからしたらそんなことは関係ないわけで、だったら、なんとか飲み込んでもらうしかないんだ。
……まあ、それも言ってしまえば俺の
「……モウ。ヨーヘイがそんな顔をするのは、反則ですわヨ?」
そう言うと、サンドラは苦笑した。
「はは……悪い。今度また、ルフランでスイーツ奢る」
「フフ……ヨーヘイったら、ワタクシに貸しを作ってばかりですわネ」
「「コホン」」
「「あ……」」
先輩と悠木に、揃って咳払いされてしまった……。
◇
「はは! 悠木、久しぶりじゃねーか!」
「……加隈、相変わらずうるさい」
「ヒデエ!? 会った瞬間その
食堂で合流した加隈が悠木に冷たくあしらわれ、ガックリとうなだれる。
でも、そんなやり取りも懐かしいみたいで、加隈を眺めながら口元を緩めている悠木がいた。
「とりあえず加隈の奴は放っておいて、メイザース学園での悠木のこと、色々と教えてくれよ!」
「……もう、いつもメッセージで近況報告してるでしょ?」
「いや、まあそうだけどさ。やっぱり、悠木の口から直接聞きたいじゃん?」
肩を竦めながらクスクスと笑う悠木に、俺はさらにねだる。
すると悠木は観念したのか、色々とメイザース学園で過ごす日々を語ってくれた。
メイザース学園のこと、新しく友達ができたこと、日々
「……だけど、早い段階でクラスチェンジをしちゃったから、思うようにレベルが上がらなくて大変だったわ……」
「あー……だよなー……」
悠木の奴は、レベル四十を超えてすぐにクラスチェンジをしたから、それこそレベル上げは大変だよなあ……。
といっても、[クヴァシル]は基本スペックが高い
この辺り、メインヒロインの優遇っぷりが半端ない。
「「「…………………………」」」
で、先輩とサンドラ、オマケに氷室先輩まで、なんでそんなに俺をジト目で睨むんですかね?
「それでよー……木崎さんとは、向こうでも仲良かったりするのか……?」
加隈の奴が、心配そうな表情でおずおずと尋ねる。
だた、この場合は悠木を、というよりも、元仲間であるクソ女を心配してるって感じだなあ。
「……ううん、あれからほとんど会話してないわ。今回クラス代表に選ばれた時に、二言、三言交わしたくらいよ……」
「そっかー……一応、俺達だってチーム組んだのに、寂しいなあ……」
珍しく、加隈の奴がしんみりとする。まあ、コイツだって一緒に
「そういや、木崎の名前で思い出したけど、アイツはどうしたんだ? 一度も姿を見かけてないんだけど?」
「……彼女をはじめ、生徒会の面々は
「へ? 明日から?」
悠木の意外な答えに、俺は思わず聞き返した。
イヤイヤ、だって交流戦はお互いの学園の親睦を深めるって目的だろ? 表向きは。
だったら、せめて仮面を被ってでも、生徒会として社交辞令的なことくらいしろよ。
「……でも、学園代表が決まってから、生徒会は授業にも出なくなって、ひたすら
「そっか……」
でも、生徒会がそこまでして明日の団体戦にこだわるのは、学園長である先輩のお父さんや“
たとえそれが、土御門さんを犠牲にして
「……ははっ」
「? ……望月くん?」
先輩に声を掛けられ、俺が無意識のうちに薄ら笑いを浮かべていることに気づく。
だけど、それも仕方ないってモンだ。
だって。
――この俺が、連中の企みを全部ブチ壊すんだから。
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