第131話 先代の生徒会長
「フン! この僕はそんなもの、出すつもりはないからな!」
三―三に来るなり、開口一番そんなことを宣言されてしまった。
で、俺にその
「ですが、このままですと三―三だけ学園祭に参加できなくなってしまいますが」
俺はさっきの二―一と同じ作戦を取り、クラス内にいる他の生徒達に聞こえるように、わざと大きめの声でそう告げた。
「ハッ!
「……どういうことですか?」
さすがに先輩のことを馬鹿にされてカチンときた俺は、少し低い声で問い質す。
「決まっている! どうせその『参加できない』というのも、そもそもこの僕を気に入らないアイツが、
「はあ!?」
いや、何言ってんのコイツ。
申請書類が出てないから、コッチは出してくれって頼んでるだけだろうが。
はあ……もういいや。
「つまり、出し物の申請はしないってことでいいんですね?」
「くどい! どうしてもというなら、あの女が直接僕のところに来させるんだな!」
「分かりました。では、牧村先輩の一存で、三―三は学園祭で出し物をしないということですね!」
俺は教室中に響き渡るほどの声でそう叫ぶと、
「何ですか?」
「待て! まだ話は終わってないだろう!」
何故かこの牧村クニオは、グイ、と俺の肩をつかんで引き留めた。
「いや、俺のほうはこれ以上話をすることはないんですけど」
「君、本当はあの女の下について、不満があるんじゃないのか?」
「はあ!?」
コイツ、何て言いやがった?
この俺が、先輩に不満がある、だって?
「フザケルのもいい加減にしてくださいよ?」
「フ……なにも隠す必要はないじゃないか。君だって、単にあの女の見た目と地位だけで付き従ってるんだろう? だったら僕と協力して、あの女を生徒会長の座から引きずり降ろしてやらないか?」
……コイツ、
「ハイハイ、これ以上クソくだらない話に付き合ってられませんよ。とにかく」
俺はこの男を見据える。
「……これ以上、先輩を馬鹿にしてみろ。ただで済まさないからな」
「っ!?」
その一言だけ告げると、唖然とする牧村クニオを捨て置いて教室を後にした。
◇
「チクショウ! なんだよあのクソ野郎!」
頭にきた俺は、校舎裏で思い切り壁を蹴った。痛い。
『まあまあマスター、落ち着くのです』
「これが落ち着いてられるか! 何があったか知らないけどあの野郎、先輩のこと馬鹿にしたんだぞ!」
[シン]がたしなめるが、怒りの収まらない俺はもう一度壁に八つ当たりする。メッチャ痛い。
クソッ! どうせ生徒会を追い出されたのだって自業自得のくせに、それを逆恨みして先輩のこと悪しざまに言いやがって!
「というか、
先輩は、悪事に関しては厳しいけど、それ以外は面倒見が良くて最高に優しい人だ。
そんな先輩に生徒会を追い出される羽目になったんだ。余程のことに違いない。
「……ちょっと調べてみるかあ」
そう呟くと、俺はスマホを取り出して『まとめサイト』のページを開く。
「ええと……生徒会コミュは、と……お、あったあった」
ふむ……一応ゲームでの生徒会コミュにおいては、揉め事らしいイベントはなかったのかなあ。特に何も書いてない。
でも、生徒会コミュの登場人物は、確かに桐崎先輩と氷室先輩の二人だけだ。つまり、旧メンバーが追放されてること自体は間違いないんだろう。
「あーもう! このゲーム、裏設定とかあんまり考えてないのかよ! そういうの、ゲームシナリオ考える時に必要なんじゃないのかよ!」
などと、俺は『ガイスト×レブナント』の制作者に対する不満をぶちまけた。
というか主人公も主人公で、その辺り疑問に思わないの? ちゃんとツッコめよ。
「ハア……こうなったら、先輩二人から直接教えてもらうしかないかあ……」
そう呟くが、あの二人が素直に教えてくれるとも限らない。
特に桐崎先輩は、俺に余計な心配を掛けまいとして、絶対言わないに決まってる。
とはいえ、先輩がこんな理不尽な目に遭ってることだけは、到底我慢ならない。
なので。
「氷室先輩……ちょっといいですか……?」
「? どうしたんですか?」
俺は急いで生徒会室に戻るなり、扉の隙間から氷室先輩を手招きすると、首を傾げながらも氷室先輩は傍に寄って来てくれた。
「実は……」
俺は二—一と三―三での出来事を氷室先輩に説明する。
もちろん頭にきていた俺は、それはもう当事者が聞いたらキレること間違いなしというほど盛大にディスりながら。
「……それで、あの牧村クニオって奴は、なんで桐崎先輩に追い出されたんですか? というか、生徒会の旧メンバーが全員出て行った理由を教えて欲しいんですけど……」
「……望月さん、場所を移しましょう」
そう言うと、氷室先輩はスタスタとどこかへと向かい始めたので、俺はその後をついて行った。
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