最終章 《黒蟷螂》

「うおらぁっ!!」



テンは食料が積まれた木箱を黒蟷螂に投げつけると、自分に迫る木箱に対して黒蟷螂は刃物のように鋭い漆黒の鎌を振り払う。



「キィイッ!!」

「うおっ!?」

「な、なんて切れ味だ!?」



黒蟷螂はテンが投げつけた木箱を空中にて真っ二つに切り裂くと、それを見たテン達は動揺を隠せない。黒蟷螂の鎌の切れ味は金属製の刃に匹敵し、空中にて真っ二つにされた木箱から食料が飛び出す。


空中に散らばった食料を見て黒蟷螂は両手の鎌を動かすと、今度は切り裂くのではなく、刃に突き刺して自分の口元に運び込む。空中に浮かんだ食料を器用に鎌に差して自分の餌とする黒蟷螂を見てテンは戦慄する。



(あの鎌の切れ味、それに空中であれだけ器用に動かせるなんて……こいつ、普通じゃない)



昆虫種と戦うのはテンも初めてではないが、彼女がこれまで遭遇してきた昆虫種とは雰囲気が違う。恐らくは昆虫種の亜種だと思われるが、それにしても妙な雰囲気を纏っていた。



「ギチギチギチッ……!!」

「き、気味が悪いぞこいつ!!」

「油断するんじゃないよ!!あの鎌には気を付けな!!」

「何事っすか!?」

「敵襲か!!」



甲板にテン以外の騎士達も集まり、彼女達は空中に浮かぶ黒蟷螂を見て驚愕した。黒蟷螂は甲板に聖女騎士団の団員が集まるのを見届けると、自ら甲板へ降りる。


敵地に敢えて降りてきた黒蟷螂の行動にテン達は冷や汗を流し、この時に全員が武器を構えて黒蟷螂を取り囲む。黒蟷螂は鎌に刺さった食料を全て喰らいつくすと、驚くべき行動を取る。



「キィイイイッ!!」

「なっ!?」

「うわぁっ!?」

「こ、これは……!?」



奇声を上げた途端に黒蟷螂の身体に新しい腕が出現し、合計で4つの鎌(腕)が出現した。通常種の蟷螂型の昆虫種は普通の蟷螂と同じ様に二つの鎌(腕)しか持ち合わせていないが、黒蟷螂は4つの鎌(腕)を生やしていた。



「何だいこいつは!?」

「気を付けてください!!ただの昆虫種ではありません……もしかしたら例の魔物使いが使役しているのかも!!」

「魔物使い!?レイラを殺した奴の手下か!!」

「ルナ、無暗に突っ込むな!!」



アリシアの言葉を聞いてルナは怒りを露わにして戦斧を振りかざし、黒蟷螂に対して攻撃を仕掛けようとした。しかし、黒蟷螂はルナの攻撃に対して二つの鎌を重ね合わせて刃を防ぐ。



「キィイッ!!」

「くぅっ!?こ、こいつ……!!」

「ルナの馬鹿力でも切れない!?」

「なんて硬さだ……!!」



聖女騎士団一の腕力を誇るルナの攻撃さえも黒蟷螂は防ぎ切り、鎌の方も刃毀れ一つ起こさない。それどころか黒蟷螂は防御に使用していない鎌(腕)を伸ばして反撃を繰り出す。



「キィイッ!!」

「うわぁっ!?」

「馬鹿、何してんだい!!」

「くぅっ!?」



ルナに向かってきた2つの鎌に対して咄嗟にテンとアリシアが動き、彼女達が鎌を防ぐ事に成功した。しかし、テンの退魔刀は鎌を弾く事はできたがアリシアが所有するミスリル製のレイピアは攻撃を受けた途端に罅割れが発生して砕けてしまう。



「そんなっ!?私の剣が……」

「アリシア、危ない!!」

「えっ……あぐぅっ!?」

「アリシア!?」



自分の武器を破壊されて取り乱したアリシアに対し、再び黒蟷螂は鎌を放つ。今度は受ける事ができずにアリシアは右腕を斬りつけられ、彼女の腕が飛ぶ。


アリシアの右腕が切り裂かれた事に他の者たちは呆気に取られ、アリシアが甲板に倒れ込むと彼女は斬りつけられた腕を抑えて悲鳴を上げる。



「あぁああああっ!?」

「アリシア!!落ち着け、アリシア!!」

「すぐに腕を繋げて回復薬を注ぎな!!まだ間に合うかもしれない!!」

「え、あっ……は、はい!!」



負傷したアリシアの元にランファンが駆けつけ、テンが彼女の斬られた腕を指差して指示を出す。慌ててエリナが斬られた腕を回収し、震えながらも切られた箇所に押し込んで回復薬を注ぐ。



「ギチギチギチッ……!!」

「こ、こいつ……よくもアリシアを!!」

「ぶっ殺してやる!!」

「待て、落ち着け!!冷静になるんだ!!」



ルナとテンはアリシアを傷つけられて怒りを抱き、彼女達は黒蟷螂に対して攻撃を仕掛ける。アリシアを抱えていたランファンは2人に落ち着くように告げるが、そんな 2人の攻撃に対して黒蟷螂は4つの鎌を利用して2人の攻撃を受ける。



「キィイイイッ!!」

「うわっ!?」

「こいつっ!?」

「そ、そんな……ルナさんとテンさんの攻撃まで防いだ!?」

「なんて力だ……奴の力は巨人族並か!?」



黒蟷螂は左右から攻撃を仕掛けてきた2人に対して鎌を器用に重ね合わせて攻撃を防ぎ、逆に弾き返す。鎌の切れ味に注目しがちだが、テンとルナの攻撃を同時に受けて弾き返せる程の力を持つ黒蟷螂に周囲は驚く。


攻撃を弾かれた2人は慌てて体勢を立て直し、再度攻撃を仕掛けようとした。しかし、その前に黒蟷螂は身体を回転させるように動かすと、そのまま4つの鎌を振り回しながら移動を行う。





※今回の投稿の5秒前


プルリン「ぷるんっ」(・ω・)ノパソコン ← 出番がなくて拗ねて投稿した

カタナヅキ「あ、こらー!!」(;´・ω・)

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