最終章 《クラーケン亜種》
「あ、あのタコ……いや、クラーケンかい?なんかこっちを見てないかい?」
「……まずいな」
「モモ、船の中に避難するわよ!!」
「う、うん!!」
『ふははっ!!イカかと思ったらタコか!!なら今夜はたこ焼きが食べれるな!!』
ヒナはモモを連れて船内に避難しようとすると、ゴウカはタコ型のクラーケンを見て嬉しそうに背中に手を伸ばす。だが、この時に彼は背中にいつも背負っているドラゴンスレイヤーがない事に気付く。
『むむっ!?しまった、部屋の中に大剣を忘れてきてしまった!!』
「はっ!?」
『仕方ない、取りに行ってくるからその間は任せたぞ!!』
「ちょっ……任せるって、どうすればいいんだい!?」
ゴウカは慌てて船内に戻って自分の部屋へ向かい、残された者達はクラーケンを見て焦っていると、クラーケンは飛行船に向けて移動を開始した。
『ジュルルルッ!!』
「うひぃっ!?こ、こっちに来るな!!あたしはぬめぬめした奴は嫌いなんだよ!?」
「そうなの!?」
「そういえば女将さん、タコやイカを料理した事がないような……」
テンの意外な弱点が判明し、彼女はぬめぬめした触手を持つ生き物は大の苦手だった。近付くだけで鳥肌が立ち、彼女は怯えてまともに動けない。
ロランは迫りくるクラーケンに対して舌打ちし、彼は背負っていた双紅刃を引き抜く。ヒナとモモはテンを連れて船内に避難しようとする。
「ほら、テンさん!!急いでこっちに!!」
「早く早く!!」
「ううっ……あ、後の事は頼むよ大将軍」
「ああ、任せろ……早く行け!!」
『ジュルルルッ!!』
クラーケンは飛行船に近付くだけで激しい波が発生し、飛行船が揺れてしまう。そのせいで甲板にいる者達はまともに立っていられず、船から落ちないように身体を伏せる。
「わああっ!?」
「きゃああっ!?」
「うひぃっ!?」
「くっ……舐めるな!!」
振動のせいで甲板に居る者達はまともに立っていられず、テン達も船から落ちないようにしがみつくのが精いっぱいだった。しかし、ロランは足場が不安定な中でも彼は双紅刃を振りかざし、刃に紅色の魔力を宿す。
(船体が攻撃を受ければ沈没してしまうかもしれん。ならば一撃で仕留めるしかあるまい!!)
ロランは双紅刃を振りかざすと、水面から身体を出しているクラーケンに目掛けて投げ放とうとした。だが、その前にクラーケンが触手を伸ばして水面に叩き付ける。
『ジュラァッ!!』
「何だと!?」
「うわっぷっ!?」
「わああっ!?」
「モモ!?」
水弓に派手な水しぶきが舞い上がり、触手が叩き付けられた拍子で飛び散った水が飛行船の甲板に降り注ぎ、この時にモモが甲板から流されてしまう。
彼女は船に落ちそうになったが咄嗟にテンが腕を伸ばして捕まえる。彼女の力ならモモを持ち上げる事は容易いはずだが、クラーケンの鳴き声を聞いただけでテンは震え上がって力が上手く出ない。
『ジュルルルッ!!』
「うひぃっ!?」
「わわわっ!?」
「テンさん、しっかりして!!モモが落ちるわよ!?」
「くうっ……調子に乗りおって!!」
テンは危うくモモを落としそうになって慌ててヒナが駆けつけ、彼女も腕を掴む。ロランは全身が水浸しにされて怒りを抱き、彼は今度こそクラーケンに目掛けて双紅刃を放つ。
「くたばれ!!」
『ジュラァッ!?』
投げ放たれた双紅刃はまるでブーメランのように高速回転しながらクラーケンに迫り、この時にクラーケンの触手の何本かが切り裂かれる。
『ジュラアアアッ!?』
「思い知ったか、タコめ!!」
傷ついたクラーケンを見てロランは彼にしては珍しく大声を張り上げるが、攻撃を受けたクラーケンは怒りを露わにして水面の中に隠していた他の触手を浮上させる。
『ジュルルルルッ!!』
「なっ……」
「嘘っ!?まだあんなに隠していたの!?」
「ひいいっ!?は、早く上がりな!!」
「よいしょっと……わあっ!?タコさんの足がいっぱい!?」
水面に隠されいていた触手は数十本は存在し、それを見たテンは悲鳴を上げながらもモモを引っ張り出す。流石のロランも触手の数を見て唖然とするが、すぐに彼は双紅刃を回収するために手を伸ばす。
ブーメランの如く回転しながら双紅刃はロランの手元に戻ると、この時にクラーケンは彼を見て警戒心を抱き、数十本の蠢かせながら様子を伺う。ロランは触手をいくら切り落としても意味はないと悟り、触手を動かす本体を狙おうと双紅刃を構える。
(あの触手をいくら切り裂こうと無駄だ。ならば本体を倒せば……)
標的を触手からクラーケン本体に切り替えたロランは双紅刃に先ほどよりも魔力を込めようとすると、ここで意外な事にクラーケンが水中に沈み込む。
『ジュルルルッ……!!』
「何!?」
「あれ、沈んでいくよ……諦めて帰っちゃったのかな?」
「な、ならいいんだけど……」
「……ち、違う!!逃げたんじゃない、あいつ水中からこっちに近付くつもりだよ!?」
水中に潜り込んだクラーケンは水上で戦うのは不利だと判断したのか、そのまま水中を移動して船の下に向けて移動を開始する。それに気づいたテンはいち早く飛行船を飛ばすように促す。
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