第745話 ヒナの閃き

「つまり……そのリノ王女とやらを守っているのはあのゴウカなのか?」

「そういえばガロ、お前は冒険者だったな。なら、ゴウカという男の強さは知っているか?」

「……あの人は規格外だ。正直、俺なんか足元にも及ばねえっ」

「ほう、お主にそこまで言わせるか……」



自尊心が高いガロですらもゴウカに対しては一目置いており、仮に自分が戦ったとしてもゴウカに勝てる気は全くしなかった。それほどまでにゴウカという存在は強大であり、そもそも彼に勝てる人間がいるのかとさえガロは思ってしまう。



「あの人は本当にやべえんだよ……前に冒険者ギルドで黄金級冒険者や金級冒険者が集められて訓練を行ったんだが、あの人には誰にも勝てなかった。ハマーンも、リーナも、ガオウさんも……あの人は黄金級冒険者の中でも別格だ」

「あの3人が……」



ガロの言葉を聞いてゴンザレスは驚き、彼はリーナ達の実力はイチノに向かった時に知っており、そんな3人でさえもゴウカには遠く及ばないと聞かされて驚く。ゴンザレスだけはゴウカが戦っている姿を直接的には見ておらず、白猫亭にてゴウカが赴いた時はゴンザレスとガロはランファンと共に行動していた。



「そういえば……ランファンの奴はどうしたんだい?あんた達と一緒に行動してたんじゃないのかい?」

「途中までは一緒だったんだが、白猫亭に向かう途中で白面に襲われて散り散りになった。無事だとは思うが……」

「まあ、ランファンなら大丈夫だろうね」



ゴンザレスの母親にして現役の聖女騎士団の王国騎士であるランファンはゴンザレスとガロを白猫亭に運ぶ途中、白面の襲撃を受けて二人を逃がすために残った。彼女の実力ならば白面程度に遅れは取らないと思うが、未だに戻ってくる様子はない。


ランファンも心配ではあるが、まずはゴウカからどのようにしてリノ王女を取り返すかであり、そのためにはこの白猫亭の包囲網を破る必要があった。



「屋根の上から見た限りだと警備兵の人たちは完全に建物のを包囲してるっす。隣の建物からこっちの様子を伺う人も居ましたよ」

「そうかい……こっちが万全な体調ならあんな奴等、蹴散らす事なんてわけないのにね」

「せめて外にいるはずのランファンと連絡が取れればどうにかなるかもしれませんが……」



たった一人だけ聖女騎士団と離れているランファンが居れば状況は一変し、彼女の力ならば警備兵を蹴散らして白猫亭の者達と合流し、包囲網を突破するのはわけない。だが、その連絡手段を取ろうにも彼女が何処に居るのかも分からない状況だった。



「マホ魔導士、具合はどうだい?」

「うむ、今の所は落ち着いているが……もうそろそろ薬を摂取しなければならん」

「例の魔力回復薬改とかいう奴かい?」

「その通りじゃ。今の儂はあの薬で命を繋ぎとめておる……今日の所は大丈夫じゃろうが、明日はどうなるか分からん」

「え、縁起でもない事を言うなよ!!」



マホの言葉にガロは言い返すが、彼女もここから出られない状況だった。マホも宰相から警戒されているはずであり、ここから出ようとすれば警備兵に止められるだろう。


しかし、マホの話を聞いていたヒナは外に居るはずのランファンの事を思い出し、ここでクロネの事を思い出す。現在の彼女は他の騎士達の治療を行っており、この場から離れている。



(……そういえばクロネさん、あの人と身長が同じぐらいだったわよね)



ヒナは酒場にいるある人物に視線を向け、クロネとその人物が同じぐらいの身長と体格である事を思い出し、ここで彼女に電撃が走った。



「もしかしたらだけど……ここから抜け出せる方法があるかもしれない」

「何だって!?」

「ヒナ、本当か!?」

「どんな方法を思いついたんですか!?」



ヒナの呟きに他の者達は衝撃の表情を浮かべ、ヒナ自身も我ながらとんでもない事を思いついたと考えるが、この作戦が上手くいけば自分とこの会議室にいるは上手くいけば外へ抜け出せるかもしれないと思ったヒナは作戦の内容を伝えた。




「私が思いついたのは――」






――ヒナの作戦内容を聞かされた者達は驚愕の表情を浮かべ、それほどまでに突拍子もない作戦だったが、現時点ではヒナが考えた方法以外に警備兵の包囲を抜け出す手段はない。


この作戦を行う前に重要なのがクロネの存在であり、この作戦を成功させるためには彼女の協力が必要不可欠であった。ヒナはクロネに作戦の内容を伝えると彼女は驚かれるが、快く了承してくれた。


作戦の決行はすぐに行われ、準備を整えるためにヒナは化粧の準備を行う。深夜、外が暗闇に覆われて他の人間の姿を良く見えない時間帯を選んで彼女達は作戦を決行した。





※明日からはいつも通りの投稿話数に戻します。

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