第742話 裏切り者の正体

「オロカ、白面を動かしていたのは貴様か!?イリア、イシ!!お前達はこいつと組んでいたのか!!」

「ふんっ……笑わせるな、こんな爺に俺達を従える器はない」

「そうですね、私達の関係は仲間というよりは同志といった方がでいいですかね」

「何だと……!?」

「やかましいぞっ!!」



オロカは鞭を振りかざし、怒鳴り散らすアッシュに叩きつける。アッシュは表情を歪め、いくら彼の身体が頑丈だとしても鞭で叩かれば無事では済まない。


高レベルの人間ならば身体能力だけではなく、肉体の方も防御力は上がり、場合によっては刃物による攻撃であろうと通じない。しかし、鞭などの武器はいくら身体を鍛えようと痛みを抑える事は出来ず、しかもオロカが用意したのは只の鞭ではない。



「どうじゃ、儂が現役の頃によく使用していたは……こいつは植物型の魔物の素材を利用して作られた茨の鞭、いくらお主でも耐え切れまい」

「う、ぐぅっ……!?」

「止めろっ!!アッシュ公爵に手を出すな!!」

「やかましいわっ!!」



魔鞭と呼ばれる武器を使用したオロカはアッシュに向けて鞭を叩きつけ、それを止めよるように訴えたリンに対して彼は鞭を振りかざす。鞭の腕前は本物であり、檻の隙間を潜り抜けて鞭の先端が彼女の顔面に迫る。



「リンさん、危ない!!」

「ドリス!?」

「ちぃっ!!」



咄嗟にリンを庇うためにドリスが彼女の前に出ると、ドリスの背中に鞭が叩きつけられ、服が破れて彼女の背中が露わになる。鞭に叩きつけられた際に皮膚の一部が抉れ、彼女はリンに覆いかぶさる形で倒れ込む。



「あうっ!?」

「ドリス!!何てことをっ……貴様っ!!」

「止めろ、逆らうなでない!!」

「ふんっ……どうやら貴様等は立場を分かっていないようだな、お前等を助けに来る味方はもうおらん!!即ち、お前等の命はこの儂等が握っておるのだ!!」

「…………」



自分を庇って怪我をしたドリスを見てリンは怒りを抱き、檻越しにオロカを睨みつけるが、この状況では仕返しも何も出来ない。オロカは今まで自分を散々追い詰めた王国騎士や冒険者達を一方的に蹂躙できる事に興奮し、狂ったように笑い声を上げる。



「ふははははっ!!最高の気分じゃ、あの忌々しい女が死んだときと同じぐらいに気持ちがいい!!」

「女、だと……まさか、王妃様の事を言っているのか!?答えろ、オロカ!!」

「やかましい!!」



オロカの発言を聞いてアッシュはジャンヌの死に彼が何か関係があるのかと問い質すが、その質問に答えずにオロカは魔鞭を振りかざし、今度はアッシュの顔面に放つ。


アッシュの左の頬の肉が抉られ、血が飛び散る。普通の人間ならばあまりの痛みで気絶、下手をしたら即死していてもおかしくはない。だが、アッシュは憤怒の表情を浮かべてオロカを睨みつけ、その気迫にオロカは圧倒された。



「答えろ、オロカ!!」

「ひっ……こ、このっ!!」

「いい加減にしやがれ」

「ぐはぁっ!?」



鞭を振りかざそうとしたオロカに対してイシが背後から近づき、彼の首筋に向けて注射器を打ち込む。その行動にオロカ以外の者達も驚愕し、オロカ自身も信じられない表情を浮かべる。



「イ、イシ……貴様ぁっ……!!」

「調子に乗り過ぎた……殺すなと言われただろうが」

「お、おのれ……」

「はいはい、うるさいので大人しくしてくださいね」



注射器の中身は眠り薬の類なのか、オロカは白目を剥いてその場で倒れ込み、そんな彼をイシは面倒そうに持ち上げると、イリアは改めて周囲を振り返る。この時に彼女と視線が合ったハマーンはイリアに語り掛けた。



「やはり、お主が裏切り者だったか」

「ほほう?その口ぶりだと私が前から裏切り者だと怪しんでいたんですか?」

「飛行船で死んだ4人組……あの者達を殺せたのは王国騎士か、魔導士でありながら薬師として同行していたお主だけだからな」

「まさか……あの時の犯人!?」



ハマーンはイリアが正体を現す前から彼女の存在を疑っていたらしく、飛行船にはイリアも乗り込んでおり、例の4人組が捕まっている部屋にも彼女は出入り出来た。


イリアは魔導士であり、王国騎士よりも立場は上でしかも彼女は薬師としても優秀だった。だからこそイチノの飛行船の時も同行し、例の4人組の部屋にも簡単に出入りできた。



「お主が犯人ならば色々と合点がいく……あの4人組が死んだ時、検死を行ったのもお主だったな。という事は自分が殺した痕跡もお主ならば後から消す事も出来るはず……違うか?」

「そうですね、あの4人を直接的に殺したのは私ではありませんけど……まあ、証拠隠滅を行ったのは私です」

「何!?では、まだお主以外に裏切り者が……!?」

「ええ、あの時に私以外にも宰相に通じる人間はいました。、ね」

「な、何だと……!?」



イリアは頃合いだとばかりに彼女は階段に視線を向け、指を鳴らす。すると、現れたのは黒狼騎士団、銀狼騎士団の騎士達が数名ずつ現れ、その顔を見たリンとアッシュは目を見開く。




※今日は調子がいいのでバンバン投稿しますよ!!(*´ω`*)フンスッ!!

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