第716話 リンVSリザードマン
「はああっ!!」
「アガァアアアアッ!!」
『ひいいいっ!?』
リンが鞘から刃を引き抜いた瞬間、風の斬撃が放たれた。それに対してリザードマンは口を開くと、口元から火炎を放つ。
火竜と同様にリザードマンは火炎の
「お前達は住民を避難させろ!!私はこいつを仕留める!!」
「し、しかし……!!」
「いいから早くしろ!!お前達は足手まといだ!!」
「は、はい!!お前達、私達に付いてこい!!」
リザードマンと向かい合ったリンは騎士達に命令し、街道に集まった住民の避難を命じた。その一方でリザードマンは口元から火炎を迸らせ、リンを睨みつける。
火竜の場合は獲物を前にしたら躊躇なく襲い掛かってきたが、リザードマンは魔人族であるため、知能も高い。無暗に獲物を前にしても襲い掛かる事はなく、様子を伺うようにリザードマンはリンと向かい合う。
「化物めっ……お前の相手は私だ!!」
「シャアアアッ!!」
改めてリンはリザードマンに向けて風の斬撃を放ち、今度は複数の斬撃を同時に放つ。その攻撃に対してリザードマンは防御を固めるように腕を交差すると、リザードマンの全身を覆い込む鱗によって風の斬撃は弾かれてしまう。
リンが所有する暴風が生み出す風の斬撃は彼女が本気ならば鋼鉄程度の高度を誇る物体でも切り裂く事が出来る。しかし、リザードマンを覆い込む鱗は鋼鉄の日ではなく、まるで本物の火竜にも匹敵する硬度を誇る。この鱗は「
竜種の鱗は非常に硬く、魔法金属にも匹敵すると言われており、リザードマンの場合はミスリル以上の硬度を誇る。そのため、リンの暴風であろうと簡単には切り裂けず、リザードマンを切り伏せるには相当に魔力を溜めて至近距離から仕掛けなければならない。
(こいつを斬るには相当に集中しなければならないな……問題はこいつが私を見逃すかどうか、か)
リザードマンは攻撃を受けた直後、自分の肉体に受けた衝撃と身体を確認し、傷一つ付いてない事に気付く。改めてリザードマンはリンに視線を向けると、今度は自ら動いてリンに攻撃を仕掛ける。
「シャアッ!!」
「ちっ!?」
リザードマンの爪は鱗と同様に非常に硬く、リンが避けた後に彼女が立っていた場所に爪痕が走る。あまりの鋭さに地面は抉れ、その切れ味を確認したリンは一撃でも受ければ致命傷は避けられないと判断した。
俊敏な動作でリザードマンはリンに攻撃を仕掛け、爪を放つ。その度に地面や近くの建物の壁に爪痕が走り、リンは暴風に魔力を集中させる暇もなかった。
(こいつっ……!!)
一向に離れずに自分についてくるリザードマンに対し、このままでは分が悪いと判断したリンは地面に視線を向け、この時に彼女は暴風を引き抜いて風の斬撃を至近距離から放つ。
「喰らえっ!!」
「ガアッ……!?」
リザードマンに切り付けるのと同時にリンは風圧を利用して砂を巻き上げ、リザードマンの視界を奪う。リザードマンは至近距離から風の斬撃を受けて後退し、更に目元を両手で覆う。
相手が自分を見失っている隙にリンは距離を取り、居合の体勢を取った。後は限界まで魔力を高め、リザードマンを仕留めようとした時、背後から嫌な気配を感じ取って振り返ると、そこには屋根の上に立つ白面が存在した。
「シャアッ!!」
「ちぃっ!?」
白面の暗殺者はリンに向けて短剣を投げ放ち、その攻撃に対してリンは舌打ちして鞘を納めた状態の刀で弾き落す。邪魔が入ったせいで魔力を集中する暇もなく、彼女は白面に刃を振り払う。
「邪魔をするなっ!!」
「っ……!?」
風の斬撃を放ったが、咄嗟の行動だったので狙いが反れてしまい、暗殺者の仮面に少し掠った程度で躱されてしまう。その間に目元の砂を振り払ったリザードマンがリンに視線を向け、怒りの表情を浮かべる。
「グゥウッ……アガァアアアッ!!」
「しまっ……!?」
リンに向けてリザードマンは火炎放射を放ち、その攻撃に対してリンは暴風で防ごうとしたが、攻撃したばかりなので魔力を上手く刃に送り込めない。
火炎が目の前まで迫り、リンはもう駄目かと思った瞬間、何処からか人影が現れてリンの前に立つと、風魔を構えたシノビが刃を突き刺す。
「かあっ!!」
「アガァッ!?」
「シノビ!?」
火炎に向けて風魔が繰り出された瞬間、刃の部分から竜巻が発生して火炎放射を撒き散らす。その光景を見て驚愕したのはリザードマンだけではなく、リンも同様だった。王女誘拐の疑惑を持たれたシノビがどうしてここに居るのかと戸惑うが、既にリンの前に現れたシノビは傷だらけの状態だった。
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