過去編 《テンとジャンヌ》

――まだテンが聖女騎士団に入団したばかりの頃、当時の彼女はジャンヌに対して敵対心を抱いていた。聖女騎士団に入ったのも彼女に半ば無理やり連れ出されただけであり、ジャンヌの事をテンは完全には認めていなかった。


他の人間がジャンヌの武勇を称える度にテンは嫉妬し、毎日のように彼女に試合を申し込む。しかし、テンはどれだけ挑もうとジャンヌには勝てなかった。そこで彼女はジャンヌの強さの秘密を探るため、彼女の魔剣を勝手にする。



『この魔剣さえ使いこなせれば、あたしだってあの女のように……』

『待ちなさい、何をしているの!?その魔剣に触れては駄目よ!!』

『うわっ!?』



夜中にテンはジャンヌの部屋に忍び込み、彼女は炎華と氷華を持ち上げて訓練場まで移動すると、彼女は力を使おうとした。だが、その結果は最悪の事態を引き起こす。



『な、何だこれ……手が離れない!!』

『テン!!駄目よ、精神を集中して制御して!!』

『そ、そんな事を言われても……うわぁあああっ!?』

『テン!?』



必死にジャンヌはテンから魔剣を引き剥がそうとしたが、暴走する魔剣を食い止める事は出来ず、彼女は仕方なく訓練場に存在した本物の剣を利用してテンの腕を切り裂く。



『ごめんなさい!!』

『がああっ!?』



ジャンヌの手によって魔剣を手にした腕を切り裂かれたテンは悲鳴を上げるが、腕が切り離された事によって魔剣の暴走は抑えられ、すぐに彼女は救助された――






――その後、テンは切り裂かれた腕は回復薬で繋げる事は出来たが、しばらくの間はミイラのようにしなびれた状態の腕で過ごす。彼女の腕が元に戻るまでに数日ほど経過し、更に感覚を完全に取り戻すまではもっと時間が掛かった。


テンは勝手に魔剣を持ち出した事に関してはジャンヌは攻めはせず、それどころか彼女の看病を行ったのもジャンヌだった。テンはジャンヌがどうして自分を怒らないのか、何故ここまで面倒を見てくれるのかと戸惑う。



『あんた……なんであたしにそんなに優しくしてくれるんだい?』

『当然じゃない、私達は家族よ?なら、助け合うのは当たり前よ』

『か、家族?』

『ええ、そうよ。私にとって聖女騎士団の皆は家族同然……私にとって貴女は娘も同然よ』

『……家族か』



この日からテンはジャンヌの器の大きさと優しさに惚れ込み、彼女を慕う。それと同時に氷華と炎華の恐ろしさを思い知らされ、もう二度とジャンヌの魔剣に触れる事はなかった――

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