閑話 〈妖精伝説〉
「――やあ、イリア。研究の方はどうだい?」
「さっぱりですね、相変わらず進展は無しです」
ある日にイリアの研究所にアルトは訪れ、彼女の研究の様子を伺う。イリアの目的は伝説の秘薬「
回復薬よりも効果が高い上級回復薬の製作には成功したが、それ以上の発展はなく、現在は研究に行き詰っていた。彼女は精霊薬に記されている古文書を読み取り、頭を悩ませる。
「これによると精霊薬の製作には精霊の鱗粉が必要なようです」
「精霊か……そんな存在が本当にいるのかな?」
「それは分かりません。でも、森人族の方は信じているようですけどね」
この世界には精霊と呼ばれる存在が実在すると考えているのは森人族だけであり、彼等は大精霊という存在を信仰している。人間が陽光教会の信仰対象である陽光神のように森人族の場合は大精霊と呼ばれる存在を崇めていた。
精霊薬の製作には森人族が崇める大精霊や精霊の存在が必要だと古文書に記されているが、そもそも大精霊や精霊の存在など明確には確認されていない。森人族でさえも大精霊や精霊を見たという人間はおらず、実在するのかも怪しまれている。
「はあっ……流石に疲れましたね」
「大丈夫かい?最近は研究室に引きこもってばかりじゃないか?」
「例の任務のせいで何日も離れてましたしね……でも、その代わりに良い実験材料は手に入りましたよ」
「実験材料……?」
「待っててください、近いうちに面白い薬を作り上げますよ」
イリアはアルトに笑みを浮かべ、その笑顔を見てこういう時に彼女が笑うと碌な事が起きない事を知っているアルトは冷や汗を流す。イリアの手元には煌魔石の破片が入った小瓶が握り締められていた――
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