第518話 部隊分け
――予定よりも少々遅れたが、ナイ達は無事にイチノへ帰還した。その後、しばらくの休息を挟むと、改めてナイはシノビとクノを呼び出して今回の報酬の件に関して話し合う。
「今回の報酬に関してだが……金銭の類は要求しない。その代わりに貸しにしておいてくれ」
「貸し、ですか?」
「要するに今度、もしも拙者達が困った事態に陥ったらナイ殿に力を貸してほしいという事でござる」
「え、でもそれでいいんですか?」
「ああ、構わない。そちらの方が俺達にとっては都合がいい」
ナイはシノビとクノの言葉を聞いて驚き、金銭を要求されなかったのは良かったが、二人が困っている時に力を貸せと言われても少々問題が残る。
今回の任務が終わればナイは王都へ引き返すつもりであり、そうなるとニーノを拠点にしているシノビとクノと顔を合わせる機会がない。そうなると二人が困った時に手を貸せないのではないかと困るが、その点は二人も考えているらしく、先に告げた。
「俺達は今後は王都で働く事になる。リノ王女が俺達の事を雇いたいと言ってくれたからな」
「え、そうだったんですか!?」
「その通りでござる。だからもしかしたら今後もナイ殿とは会う機会があるかもしれないでござるな」
二人ともリノから配下に誘われている事を明かし、これから二人はリノ王女の側近として仕えるかもしれない。確定しているのは二人とも王都へ向かう事であり、ナイはそういう事ならば二人の力になれるかもしれないと思った。
「分かりました。じゃあ、今回の一件は貸しという事で……もしも困った事があったら力になります」
「ああっ……期待しているぞ」
「もしも困った事があったら拙者達に相談してほしいでござる。まあ、今度からはしっかりと報酬を貰う事になるかもしれないでござるが……」
「は、はい……今回は色々とありがとうございました」
「クゥ〜ンッ……(元気でな)」
「「クゥンッ(またね)」」
ナイが頭を下げるとシノビとクノは頷き、二人はリノ王女の護衛という事で街へ残るという。この際にビャクはクロとコクと別れる事を寂しがったが、今後は王都にシノビとクノも同行するのであればいつでも王都で会う機会はあるだろう――
――それから更に時間が経過すると、ナイを含めた討伐隊は飛行船に集められ、山に存在するゴブリンの要塞を攻め込むために全員が集まる。この時には既にマホも立ち上がれる程に回復しており、弟子たちの力を借りながらも彼女は参加した。
「では予定通り、飛行船の警護と街の守備はマホ魔導士とハマーン殿に任せる!!よろしいか?」
「うむ……任せてくれ」
「安心せい、街の平和と船は儂等が守ってやる!!」
マホは碌に動けないので彼女の弟子であるゴンザレスとエルマが守備に加わり、それでも戦力的には不安があるため、アッシュはヒイロとミイナに振り返った。
「白狼騎士団!!お前達にも飛行船の警護を頼みたいが、大丈夫か?」
「は、はい!!お任せください!!」
「……頑張る」
「よし、では任せたぞ!!」
一応は街には他の街から派遣された援軍も到着しており、大丈夫だとは思われるが、用心越した事はない。アッシュはヒイロとミイナも念のために飛行船の警護を任せ、残された者達はゴブリンの要塞へ向かう事が決定した。
リノ王女は衰弱状態のために参加は出来ず、彼女の護衛を務めるシノビとクノも動けない。その代わりにリノと共に山に突入した王国騎士が案内役として同行する。
「では、部隊を3つに分けるぞ!!この俺、ドリス、リンの3人で隊を分ける!!また、黄金級冒険者のリーナとガオウ、それとナイは別々の部隊に入ってもらう!!」
「そういう事ならナイさんは私の部隊が……」
「待て、勝手に決めるな!!アッシュ公爵、ナイは私の部隊が預かる!!」
「ええい、こんな時まで喧嘩するな!!くじ引きで決めろ!!」
戦力となる黄金級冒険者のリーナ、ガオウ、それと冒険者ではないがナイの3名はそれぞれの部隊に分かれる事が決まる。くじ引きの結果、リーナはアッシュの部隊、ガオウはリンの部隊に決まり、最後にナイはドリスの部隊に配属する事が決定した。
「よし、私の勝ちですわ!!」
「ぐぬぬっ……」
「え〜……お父さんの部隊か」
「リーナ、何故そんな不服な顔をする!?」
「まあ……お互いに頑張ろうや」
「あ、はい……」
ドリスはナイを得た事に勝ち誇り、リンは悔し気な表情を浮かべ、リーナは父親の部隊である事に不満を漏らす。ガオウはナイの肩を軽く叩き、ナイはあまり接点がないドリスの部隊に入る事に若干緊張する。
出発までまだ少しだけ猶予があり、その間にナイは他の皆と別れの挨拶をしようとした時、飛行船の方からヒナとモモが駆けつけてくれた。
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