閑話 〈意外な関係〉
――魔導士であるイリアはドルトンの屋敷に訪れ、居候しているイーシャンの元に赴く。イーシャンはイリアの顔を見ると心底驚いた表情を浮かべた。
「お、お、お前!?どうしてここに!?」
「お久しぶりですね、イーシャンおじさん」
「叔父さん?お主、姪がおったのか?」
イーシャンはイリアの顔を見た瞬間に度肝を抜かし、そんな彼にイリアは笑顔を浮かべて話しかける。ドルトンはイリアとは初対面であり、彼女はイーシャンの姪かと思ったが、イーシャンは否定した。
「いや、こいつは俺の姪じゃねえ……俺の兄弟子の所で世話になっているはずの薬師だ」
「ほう、薬師か……というより、お主に兄弟子がおったのか?」
「ああ、王都で医者をやっているらしいんだがな……それにしてもよく俺がここにいると分かったな」
「前に手紙で前にこの街に暮らしているとは聞いてましたから。街の人たちに医者の場所を尋ねたら教えてくれたんですよ」
実はイーシャンは王都の王城で勤務する専属医師の「イシ」とは兄弟弟子のなかであり、若い頃の二人はとある医者の元で勉強していた。実はイーシャンも王都の生まれだが、現在はイチノへ引っ越して暮らしている。
若い頃のイーシャンはイシと共にある医者の元で医学を学んでいたが、その師が死亡すると彼は王都を離れ、辺境の地に訪れて医者になった。ちなみにイリアは事情があってイシの元で薬学を学んでいた時にイーシャンとも知り合ったという。
「イーシャンさんが急にいなくなったので寂しかったですよ。どうして王都を離れてこんな辺境の地に来たんですか」
「……辺境の地で悪かったな、ここは俺にとっては第二の故郷だ」
「あ、そうだったんですか。そういえば前に小さい頃は王都とは別の場所で暮らしていたと言ってましたね。という事はここで育ったんですか?」
「まあな、ガキの頃にここへ連れて来られて成人するまでは育ったんだ。正直、王都よりもこの街の方が俺にとっては馴染み深いんだよ」
イーシャンは王都の出身だが、子供の時に家の事情でイチノへ引っ越し、ここで育った。後に彼は王都で戻ってイシと共に医学を学び、結局はイチノへ戻って正式に医者になった事になる。
久しぶりに出会ったイリアをイーシャンは感激し、とりあえずは彼女がこれまでどうしていたのか、イシが元気なのかを尋ねた。
「お前も久しぶりだな。今は何をしてるんだ?あの怠け癖の兄弟子は元気にしているか?」
「まあ、そうですね。師匠は元気ですよ、私の方は……まあ、今は王城で働いています」
「へえ、そいつは凄いな!!よくやったじゃねえか!!」
「凄い事、ですかね……」
イリアが王城で働いていると知ってイーシャンは素直に喜ぶが、イリアとしてはそんな彼に曖昧な笑みを浮かべる。その態度にドルトンは不思議に思うが、この時にイリアはここへ訪れた理由を答える。
「――それでなんですけど、今日御二人に聞きたい事があるんです。ナイさんはご存じですよね?あの人の事を教えてくれませんか?」
「ナイ……?」
「それは……どういう意味だ?」
ナイの事を尋ねたがるイリアにドルトンとイーシャンは戸惑うが、イリアは普段は滅多に見せない真剣な表情で告げた。
「ちょっと興味が湧いただけですよ……ナイさんの昔話、色々と聞かせて貰えませんかね?」
その後、イリアは二人から聞き出せるだけのナイの過去を知り、満足したのか立ち去ったという――
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