第490話 勝利の決め手は……

「えっ……う、嘘っ……」

「そんな……ナイ、さん……?」

「早く、助けてっ!!」



ナイが踏み潰される光景を見てリーナとヒイロは唖然とするが、ミイナだけは巨人の元に駆けつけてナイを救い出そうとする。しかし、彼女が何かする前に巨人の身体が崩れ始め、灰と化す。


既に巨人は事切れており、肉体が崩壊して崩れ去っていく。その光景を見ていた者達は巨人が死んだ事を確信するが、その代償はあまりにも大きすぎた。



「ナイ君を救い出せ!!」

「早く掘り起こしなさい!!」

「誰か、回復魔法は使えないのか!?」



ミイナ以外の者も踏み潰されたナイの元へ向かい、彼等は巨人が踏み潰した箇所に視線を向けた。そこには岩砕剣が地面に突き刺さった状態で残っており、肝心のナイの姿が見当たらない。



「ナイが……いない?」

「きっと地面に埋まってんだ!!さっさと掘り起こすぞ!!」

「おお〜いっ!!どうなっとるんだ!?」

「皆、無事!?」

「何があったんですか!?」



ここで遅れてハマーンとヒナとモモが駆けつけ、この3人は飛行船の内部に居たはずだが、異変に気付いて駆けつけてきたらしい。そしてマホを抱えたエルマの姿も存在し、後ろにはイリアも続く。



「あの巨人は……はどうなったんですか!?」

「倒した、というよりも灰になった。だが……」

「ナイ君がここに埋まっちゃったんだよ!!早く助けないと!!」

「ええっ!?ナ、ナイく〜んっ!!」

「モモ、それはしゃもじよ!?何をする気なの!?」



リーナの言葉を聞いてモモはどこから取り出したのかしゃもじを握りしめ、巨人が踏み潰した地面へ向かう。だが、この時に地面が盛り上がり、その内部からナイが姿を現した。



「ぶはぁっ!!死ぬかと思った!!」

「わああっ!?」

「い、生きてる!?」

「ど、どうして……!?」



地面の中から現れたナイを見て全員が驚愕の表情を浮かべるが、ナイ自身も自分が生き延びた事に戸惑い、ここである事に気付く。それは右腕に装着した反魔の盾であり、どうやらこの反魔の盾がナイの命を救ってくれたらしい。





――巨人が最後の攻撃を仕掛けた際、ナイは岩砕剣を突き刺して食い止めようとした。事前にヨウから自分が踏み潰される運命を聞いていたため、あの状況でもすぐに対応できた。


だが、それだけでは巨人の攻撃を防ぐ事は出来ず、押し潰される所をナイは無意識に反魔の盾で身を守った。反魔の盾は衝撃を受けると跳ね返す能力を持つが、その場合は衝撃を受けた際に肉体で支えないといけない。


反魔の盾で巨人の攻撃を受けた際、ナイは仰向けに倒れていた。そのせいで衝撃を支えきれずに自分が押し込まれ、地面にの中に潜り込む形となる。よくよくナイが自分が倒れている場所を確認したら、そこは最初に巨人が地中から現れた場所で元々土砂が掘り起こされた場所だった。


土砂が事前に掘り起こされていたので他の場所よりも地面は柔らかく、反魔の盾のお陰でナイは地中に押し込まれて最悪の事態を避けられた。だが、これらは全てただの奇跡などではなく、事前にヨウから自分が踏み潰される運命を聞いていた事、そして亡き親友の盾が彼を守ったのだ。




(ありがとう、ヨウ先生……それにゴマンも)




二人のお陰でナイは生き延びる事に成功した事を知り、改めて巨人を倒した事を他の人間と喜び合う。生きていた彼の元に大勢の人間が笑顔を浮かべて駆けつけ、共に勝利を喜んだ――





※切りがいいのでここまでにしておきます。

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