第488話 連携攻撃

「奴はまともに動けない、連携攻撃で仕留めるぞ!!」

「聞きましたかリンさん?私に合わせてください!!」

「お前が私に合わせろ!!」



アッシュの言葉を聞いてドリスはリンに笑みを浮かべ、そんな彼女にリンは言い返しながらも暴風をドリスの真紅に伸ばす。二人はお互いの魔剣と魔槍を重ね焦ると、巨人へ向けて同時に刃を突き出す。



「螺旋斬!!」

「爆槍!!」

『グオオッ!?』



二人が刃を突き出した瞬間、暴風から螺旋状の風の斬撃が放たれ、真紅の放出する爆炎がその斬撃に吸収される。巨人の肉体に目掛けて火炎の螺旋が放たれ、右腕に的中した。


王国騎士の中でも5本指に入る二人の合体技は巨人の左腕を抉り、火傷を起こす。普段はいがみ合っている二人だが、戦闘になると息は会い、力を合わせる事で一人の時よりも何倍の力を引き出す。



「はっ、流石は王国騎士様だ!!なら、こっちも行くぞ嬢ちゃん!!」

「は、はい!!」



飛行船に乗っていた時は満足に戦えなかったガオウだったが、援軍が駆けつけて巨人が損傷を受けた事で好機と判断し、リーナと共に向かう。リーナは蒼月を振りかざすと、氷の刃を生み出して巨人の背中に目掛けて突き刺す。



「やああっ!!」

「おらぁっ!!」

『オアッ……!?』



背中に氷の刃が的中した瞬間、切り裂かれるだけではなく、皮膚が凍り付く。凍り付いた事で硬度が下がったのか、それを狙ってガオウは鉤爪を構え、この時に彼は腕を回転させながら放つ。



「螺旋爪!!」

『オオオッ……!?』



凍り付いた皮膚をミスリルの爪が抉り込み、血飛沫が舞い上がる。蒼月で事前に皮膚を凍らせていなければ通じなかっただろうが、威力は抜群でガオウは内部を切り刻む。



「くたばりやがれぇっ!!」

『ウオオオッ!!』

「危ない、離れてっ!!」



ガオウは背中に突き刺した右腕で脊椎を狙おうとしたが、流石の巨人も怒りのあまりに腕を伸ばす。それを見たナイは咄嗟に左腕のフックショットを放ち、ガオウに声を掛けた。



「ガオウさん、掴んで!!」

「うおっ……!?」



放たれたミスリルの刃にガオウは驚きながらも左腕を伸ばし、フックショットの鋼線に自分の腕を撒きつける。そして巨人の腕がガオウを掴む前にナイは剛力を発動して引き寄せる。


捕まる寸前にガオウは救出され、ビャクの背中に乗っているナイの後ろに引き寄せられる。彼は危うく握り潰される所を救ってくれたナイに感謝した。



「た、助かったぜ……」

「いや、まだ助かったとは限らないかも……」

『ウオオッ!!』



巨人は怒りのあまりに痛みを忘れたのか、右腕を振りかざす。その攻撃に対してビャクは回避行動に移ろうとしたが、この時にアッシュが薙刀を振りかざす。



「はぁあああっ!!」

「お父さん!?」

『ウオッ……!?』



薙刀を手にしたアッシュは凄まじい気迫を放ち、そのあまりの殺気に巨人は背後を振り返ると、そこには薙刀を巨人の左腕に向けて振り翳すアッシュの姿が存在した。



「があああっ!!」

『ウガァアアアッ!?』



アッシュが振り下ろした刃は先にドリスとリンの攻撃によって負傷した左腕に食い込み、鮮血が舞う。ナイの岩砕剣の一撃を受けても悲鳴を上げなかった巨人だったが、アッシュの攻撃を受けてあまりの痛みに悲鳴を漏らす。


この時にナイはアッシュがリーナの父親であり、若い頃は優れた武人であるという話を思い出す。アッシュの攻撃によって巨人は左腕に深手を負い、その隙を逃さずに他の者達も攻撃を仕掛けた。



「今だ、仕留めろっ!!」

『うおおおっ!!』



他の騎士達も武器を掲げて巨人に突っ込み、攻撃を仕掛ける。ここまでの戦闘で巨人も体のあちこちに傷を負っており、傷口を狙って騎士達は刃を突き刺す。



「いくら硬くても……ここを攻撃されたら痛いでしょ」

「やあああっ!!」

『グアアッ!?』



ミイナとヒイロも騎士達に続き、傷口に自分の武器を差し込む。この時にヒイロは刃を体内に突き刺した状態で魔法剣を発動させ、内側から攻撃を行う。



「火炎剣!!」

『アアアアッ!?』

「私達も続きますわ!!」

「行くぞ!!」



ドリスとリンも駆け出すと二人は先にナイが攻撃を仕掛けた右膝を狙い、今度は同時に攻撃を行う。ドリスは真紅を突き出し、リンは居合の状態から攻撃を行う。



「せいやぁっ!!」

「はああっ!!」

『ウガァアアアアッ!?』



先にナイによって負傷していた右膝にリンの居合から放たれた風の斬撃と、ドリスの爆発する槍の一撃を受けた瞬間、巨人の右膝が抉れる。それを確認したミイナは如意斧を振りかざし、この時に近くに立っていたリーナに声を掛けた。



「リーナ、これに乗って!!」

「えっ!?」

「いいから、早く!!」



ミイナの言葉にリーナは驚くが、彼女の珍しく真面目な表情と声を聞いて頷き、如意斧の刃の乗り込む。そしてミイナは力のままにリーナを投げつけた。



「ふんっ!!」

「うわぁっ!?」

「リーナ!?」



ミイナの怪力によって吹っ飛んだリーナを見てアッシュは驚くが、リーナは巨人の右膝に目掛けて振り翳し、蒼月を構えると、残りの魔力全て注いで巨大な氷の刃を生み出す。

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