閑話 〈王国最強の剣士は誰?〉
――王国で一番強い剣士は誰か、この疑問は度々一般人の間でも良く話題にされる。剣士といっても王国内だけでも何万人もいるだろうが、その中でも一番名前が上がるとしたら国王直属の騎士団であり、現在は国境の守備を任されている「猛虎騎士団」の団長である「ロラン」という男だった。
まだ国王が王子だった時からロランは彼の騎士団の副団長を務め、国王が即位後は大将軍と団長の地位も兼任している。ロランの名前は他国にも知れ渡り、王妃ジャンヌが健在だった時代は猛虎騎士団と聖女騎士団は王国の双璧として他国にもその存在を知らしめていた。
聖女騎士団は当時は最強の騎士団である事は間違いないが、彼女達の場合は見目麗しく、しかも王妃であるジャンヌが団長として率いていた事もあり、民衆からの人気は高い。だが、猛虎騎士団も決して聖女騎士団に劣らぬ武功を立てており、実際に聖女騎士団が解散後も彼等は今日に至るまで数々の功績を残している。
重要な国境の警備を任されているのは彼等が信頼されている証であり、宰相であるシンを差し置いて彼こそが国王の右腕として認識されている。彼自身の実力も高く、バッシュやドリスなどは彼から直々に指導を受けていた。
だが、ロラン以外にもこの国には優秀な剣士が多く、現在は銀狼騎士団の副団長を務めるリンや、黒狼騎士団の副団長であるドリスは団長であるバッシュやリノよりも実力は上だと言われている。二人が団長になれないのは実力の問題ではなく、この国では王国騎士は国王の率いる騎士団を除いて王族が務まる慣習のせいに過ぎない。
現役を引退したとはいえ、指導官である立場のテンも聖女騎士団では副団長を務め、全盛期の彼女はジャンヌにも匹敵する実力を持っていたと噂されている。彼女以外にも聖女騎士団に所属していた人間の中で優れた剣士は多く、軍人に拘らなければ冒険者や傭兵の中にも優秀な剣士は数多くいた。
――しかし、最近の王都では最も有名な剣士といえば「ミノタウロス殺し」の異名を持つ少年の剣士が話題であり、最近では一般人でありながら火竜の討伐の遠征任務にも参加し、火竜だけではなくゴーレムキングなる存在を倒したと噂になっていた。
この少年剣士の噂は王都では話題になっており、彼の正体を探ろうとする者も多い。そして噂は王都だけには留まらず、王国の領地内にも知れ渡っていき、各地で名を上げている剣士達の間でも話題になっていた。
「14才の小僧がミノタウロスや火竜を殺しただと?」
「嘘くさいな……」
「だが、本当ならば大した小僧だ」
続々と噂を耳にした剣士達は王都へ集まり、その中には二つ名持ちの剣士も混じっていた。彼等の目的は少年剣士の噂を確かめるため、王都へと向かう――
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