閑話 〈ゴブリンの王〉
――和国が滅びる前、ムサシノと呼ばれる地にて歴史上で初めてのゴブリンの「王」が誕生した。この地がムサシノと名付けられた理由は不明だが、一説によればこの世界に召喚された人間の名前が「ムサシ」であり、彼の名前は地球の故郷の名前と同じであった。
ムサシは和国を作り上げた人物であり、この地をムサシノと名付けたのは彼がこの場所に最初に召喚されたからだと伝わっている。しかし、このムサシノと呼ばれる地にて恐るべき存在が誕生する。
和国を滅ぼす切っ掛けとなったのは領内にゴブリンが多数出現し、その中でも恐るべき力を持つゴブリンの王が誕生した。通常種のゴブリンは力は弱く、小国とはいえ和国には優れた剣士が多数存在し、本来ならば敵ではなかった。
しかし、ある時にムサシノの地方で得体の知れないゴブリンが発見された。そのゴブリンは体長はゴブリンどころか上位種のホブゴブリンの何倍もの体躯を誇り、その腕力はトロールの比ではなく、赤毛熊さえも殴り殺す恐るべき力を持っていた。
和国は領内に出現した異形のゴブリンを倒すために全力を尽くした。しかし、結果としては異形のゴブリンは数百匹のゴブリンを従え、和国を壊滅させる。
それでも当時の和国の剣士達は死力を尽くし、国は滅びたがゴブリンの殆どを殺す事に成功した。やがて異形のゴブリンは仲間を失い、他国の軍隊が訪れた時には姿を消していたという。
ムサシノの地から現れた異形のゴブリンの事を生き残った和国の人間は地球の妖怪である「ダイダラボッチ」と称した。尤もこちらの世界では地球の神話で語られる異形の存在が実在しているため、異形のゴブリンの事をダイダラボッチと勘違いするのも無理はない。
ダイダラボッチと恐れられた異形のゴブリンはどのようにして倒されたのか、あるいは何処かに逃げ出したのか、それは未だに不明のままである。歴史家によれば現在もダイダラボッチは生き延びており、復活の時を待っていると言い張る人物もいた。
しかし、ゴブリンやホブゴブリンの寿命は人間よりも短く、せいぜい10〜20年程度しか存在しない。仮にダイダラボッチが逃げ延びていたとしても数百年の時が経過した今の時代にダイダラボッチが生き延びているなど有り得ない。
だが、歴史上で出現した全てのゴブリンキングはムサシノと呼ばれる地からそれほど遠くない場所に誕生しており、ムサシノには驚異的な力を持つゴブリンを生み出す仕組みがあるのではないかと疑われている――
※もうすぐ章の中盤に入ります。これからどうなる事やら……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます