第436話 船の爆破計画
「ちょっと、何よこれ……」
「ヒナちゃん、こっちにもあったよ!?」
二人が隠れていた木箱と同じ柄の木箱は倉庫内に複数存在し、しかも中身は先ほどの二人組が持ちだした小包と同じ物が隠されていた。ヒナは恐る恐る中身を確認すると、それを見た途端に彼女は顔色を変える。
「こ、これは……火属性の魔石の粉末、しかもこんなに大量に!?」
「えっ……それって、危険な物だよね?」
「危険なんてものじゃないわよ……!!」
袋の中身は火属性の魔石の粉末だと判明し、ヒナは慌てて蓋を閉じる。こんな物を誤ってばら撒いたら大変な事態を引き起こす。
基本的に魔石は頑丈だが、もしも強い力を加えられて壊れた場合は中身の魔力が暴発してしまう。しかし、時間をかけてゆっくりと粉状に磨り潰せば暴発する事はない。
火属性の魔石の粉末は火薬とは比べ物にならない燃焼性を誇り、しかも魔法ではない普通の火にも反応する。こんな物に火を点けた場合、とんでもない爆発を引き起こす。
「あいつら、何てものを船に乗せてるのよ……まさか、私達が隠れた木箱もあいつらが用意した物じゃないの!?」
「ええっ!?」
ヒナとモモが隠れたのは実は先ほどの二人組が用意した空の木箱である可能性があり、どうやら兵士に変装して荷物を運び込む際、木箱をすり替えて荷物に紛れ込ませて船内に運んでいた事が発覚する。
二人が隠れた木箱はどうやら火属性んの粉末が入った小包を入れるために用意された代物だったらしいが、それを知らずに二人は木箱に隠れてしまい、船の中に乗り込んでしまったのだ。幸いと言うべきか中身の入れ替えには気づかれておらず、ヒナとモモの存在も先ほどの二人組には気づかれていない。
「ま、まずい、これはまずいわ……すぐに他の人に危険を知らせないと!!」
「う、うん!!でも、これどうするの?」
「た、確かにそれも放っておけないわ……隠しましょう!!」
倉庫内に隠されていた小包に関しても放置は出来ず、ヒナとモモは慌てて自分達が隠れていた木箱に纏め、目立たない場所に隠そうとした。だが、この途中で足音が近付いてくる音が聞こえ、扉が開かれる。
「ん……お、おい!!誰だお前等!?」
「何処から入ってきた!?」
「やばい!?」
「わわっ!?悪者さん達!?」
倉庫に入ってきたのは先ほど外に出て行ったはずの二人組の兵士であり、ヒナとモモが小包を木箱に隠している場面を見て二人組は自分達の正体と計画を知られた事に気付く。
「その箱は……てめえら!!何者だ!?」
「くそっ、そいつを返せ!!」
「わあっ!?」
「モモ、しっかりしなさい!!」
兵士の片方が木箱に小包を入れようとしていたモモに近付こうとするが、この時にヒナは咄嗟に小包の中に手を伸ばし、粉末を握りしめて兵士に放つ。
「このっ!!」
「ぎゃああっ!?」
「なっ!?」
粉末を顔面に浴びた男は悲鳴を上げ、視界を封じられてしまう。敵が持ち込んだ粉末を逆に利用してヒナは目潰しを行うと、残った男に振り返る。
男の方は腰に差している剣を伸ばそうとしたが、それを見たヒナはすぐに小包に視線を向け、男に向けて中身をばら撒く。男は避け切れず、身体に浴びてしまう。
「ぶわっ!?」
「よし、これであんたはその剣は使えないわね!!もしも間違って火花でも起こしたら死ぬのはあんたよ!!」
「こ、このアマ……!!」
ヒナが男に火属性の粉末を浴びせた事により、下手な金属製の武器を使う事は出来ない。もしも剣が硬い物に衝突して火花でも生み出した瞬間、火属性の粉末が反応して爆発を引き起こし、更に倉庫内に送り込まれていた全ての小包が反応し、連鎖して大爆発を引き起こす。
この二人組の目的は船の爆破なのだろうが、まさか爆発を引き起こす本人たちも死ぬつもりでここへやってきたわけではない。彼等は船が降りた瞬間を狙って爆発させ、自分達は逃げるつもりだった。
「さあ、覚悟しなさい!!」
「この……図に乗るなよ!!」
「ヒナちゃん、危ない!!」
粉末を浴びた男に対してヒナは身構えると、それを見た男は剣が抜けなくても力ずくで彼女を抑え込もうとする。だが、この時にモモは咄嗟に自分達の入っていた木箱の隣の木箱を持ち上げ、放り込む。
「てりゃあっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「あ、相棒!?何が起きたんだ……!?」
「あんたも眠ってなさい!!」
「はぐぅっ!?」
モモが投げたのは男達が先ほど小包を回収したの方の空の木箱であり、男は顔面に木箱がぶつかって倒れ込む。その一方で視界を封じられていた男の方はヒナが股間を蹴り上げ、苦痛の表情を浮かべて倒れ込む。
ヒナが倒した男は股間を抑えながら痙攣し、もう片方の空の木箱を投げつけられた兵士は顔面を抑え、慌てて扉の方向へ駆け出す。
「く、くそぉっ!!」
「あ、待ちなさい!!ヒナ、追いかけるわよ!!」
「う、うん!!」
逃げ出した男を捕まえるためにヒナとモモは駆け出し、通路に出た。男は二人から逃れるために駆け抜けようとしたが、ここで前方の通路から思いもよらぬ人物が出現した。
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