第418話 強さの測定
「アルトさん、本当にこの人が火竜やゴーレムキングを倒した人なんですか?とても強そうには見えませんけど……」
「事実だよ。彼が居なければ火竜もゴーレムキングも倒す事は出来なかった」
「そうですか……まあ、私としては実験に付き合ってくれるのならどうでもいんですけど」
「じ、実験?」
イリアの言葉を聞いてナイはこんな時に何をするつもりなのかと思ったが、イリアは訓練場の中央に存在する石畳の闘技台を指差す。そこには既に彼女が用意しておいたミスリル製の鎧を身に付けた人形が設置されていた。
「とりあえず、その力を見せてください。あの人形に全力で攻撃して貰えますか?」
「ええっ!?どうしてそんな事を……」
「頼むよ、ナイ君。どうしても必要な事なんだ」
「何だい?今度は何の実験をするつもりだい?」
いきなり呼び出して鎧人形を攻撃する様に促したイリアに対してナイ達は戸惑うが、アルトによるとどうしても必要な事らしく、彼は実験の内容を先に伝える。
「今回の実験はナイ君の強さを測定したいんだ」
「え?測定?」
「皆も知っての通り、ナイ君は貧弱の技能の効果で日付が変更される事にレベルが1に戻されてしまう。しかし、その代わりにナイ君は大量の技能を覚える事で普通のに人間とは異なる強さを手にしているのは知っているだろう」
「ああ、それは前に聞いたね」
「剛力とか頑丈とか受身とかの技能も覚えているんでしょう?」
「冷静に考えれば凄い事ですよね……数十もの技能を身に付けた人なんて聞いた事がありません」
「よく分からないけど、ナイ君は凄くて強くて格好いいという事だよね?」
「だいたい合ってる」
アルトはナイの強さの秘密は彼が覚えた技能が関係しており、ナイがレベル1の状態でありながら高レベルの人間を圧倒する戦闘力を有しているのは彼が戦闘に役立つ技能を多数覚えている事が理由だと考えていた。
実際にナイは肉体を強化する技能を多数覚えており、しかもこれらの技能はレベルが上がらずとも経験値を入手する際に強化されていく。これまでにナイは様々な敵と戦い、大量の経験値を入手した事で技能も磨かれている。
「今回の実験は具体的にナイ君がどれだけの強さを持っているのかを計るための実験なんだ。そこでテン指導官にも協力して欲しい」
「あたしが?」
「まずは最初にテン指導官があの鎧人形に向けて攻撃して下さい。特注の鎧人形なので簡単には壊れませんから、全力でやって下さいね」
「こいつを攻撃すればいいのかい?まあ、別にいいけどね……」
テンは自分も実験に付き合わされる事になるとは思わなかったが、言われた通りに鎧人形の前に立つ。彼女は退魔刀を構えると、指示通りに全力の一撃を叩き込む。
「それじゃあ、行くよ!!うおりゃああっ!!」
「わあっ!?」
「危ない!?」
全身の筋力を利用してテンは鎧人形に退魔刀を叩き込むと、派手に鎧人形は吹き飛び、闘技台から落ちてしまう。その際に闘技台の下に居た者は巻き込まれそうになったが、どうにか被害は免れた。
闘技台から落ちた鎧人形の元にイリアとアルトは駆けつけ、様子を伺う。テンの怪力によって派手に吹き飛ばされたように見えたが、胴体の部分が少し凹んでいるだけで崩壊は免れていた。
「大した腕力ですね、特別に頑丈に作って貰った鎧なのに……」
「そうかい?あたしとしては昔よりも大分筋力が落ちてるね……もっと若い頃だったらそんな人形なんて鎧ごとぶった切ってやったのにね」
「こ、これでも衰えてるんですか……」
テンは人形を破壊できなかった事に悔しがり、彼女が全盛期ならば鎧人形を真っ二つに切り裂ける自信はあったという。その一方でイリアとアルトは他の者の力を借りて再び鎧人形を闘技台の上へと運び込む。
「ふうっ……じゃあ、次はナイ君が頼むよ」
「え?僕も叩くの?」
「思い切りやって下さい、手加減は無用ですよ」
「ああ……でも、悪いけど技能を使わないでくれるかい?」
ナイはテンと同じように鎧人形に攻撃を加えるように頼まれるが、この際にアルトは技能の使用を封じる。剛力などの腕力を強化させる技能を使用せずにナイに鎧人形を攻撃するように指示を出す。
基本的にナイの戦法は剛力を主軸としており、戦闘の際は剛力で筋力を強化して戦う事が多い。大剣などの武器を使用する際はテンを見習って全身の筋力を利用して攻撃する術も覚えたが、やはり魔物との戦闘になると剛力に頼る場面が多い。
(剛力を使わずに攻撃か……)
ナイは旋斧の試し切りも兼ねて今回は岩砕剣を使用せず、武器を構えた。この時、テンはナイの雰囲気が以前と変化している事に気付き、ヒイロとミイナも彼の変化に気付いた。
(何だい、これは……)
(ナイさんが……大きく見えます)
(ナイ……?)
鎧人形を前に旋斧を手にしたナイを見た瞬間、何故か3人はナイの身体が巨人族のように大きく見えた。そして次の瞬間、驚くべき出来事が発生した。
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