第417話 三人目の魔導士との邂逅

――ハマーンの依頼を無事に果たし、約束通りにナイは彼から新しい装備を受け取る。それと同時にハマーンは一晩で彼の装備を強化を行い、改めてナイは新しい装備と強化された装備を身に着ける。


防具に関してはミスリル製の鎖帷子、綺麗に磨き上げられた反魔の盾、そして改造を加えられた腕鉄鋼を受け取り、更に刺剣の方もミスリル製の刃に作り替えてもらう。魔法金属製の武器ならば簡単に壊れる事もなく、場合によっては魔法にも対抗できる。


最後に魔法腕輪は全ての魔石を取り換えて貰い、これでナイは全ての準備を整えた。後はイチノへ向かうだけだが、出発まではまだ時間がある事をアルトに伝えられた。



「父上の話によると船の整備を行うにはあと2日はかかる。だが、船が完成すれば数日中にイチノへ辿り着けるはずだ」

「船……アルト、前から思っていたけど船で移動するというのはどういう意味?川を渡って移動するという事?」

「場合によっては川や湖を移動する事もあるだろうね。正直、口で説明するよりも実物を見た方が早い。僕に教えてもらうよりも明日まで待ってくれ」

「分かった……」



アルトの言葉にナイは疑問を抱きながらも彼に従い、ともかく二日後には出発する事を知り、それまでの間に出来る限りの準備を行う。回復薬や魔力回復薬などの薬を購入し、更に万が一の場合に備えて予備の魔石の購入を行っておく。


ナイはこれまでに入手したお金を利用してイチノに向かうまでに万全の準備を整えた。そして全ての準備を整えた時には1日が経過し、明日の朝に出発する事をアルトに伝えられる。



「明日の早朝、出発する。僕が迎えに来るからその時までこの屋敷に待っていてくれ」

「明日か」

「ううっ……ナイ君とお別れなんて寂しいよ。一緒に付いてきたら駄目なの?」

「駄目に決まってるでしょ……私達が何の役に立つのよ」

「敵の戦力が未知数なのが不気味だね……そんな危険な場所にあんた等は付いていかせられないよ」



モモはナイと別れる事を寂しく思い、涙目を浮かべる彼女をヒナが慰める。ナイも王都を離れる事に色々と思う所はあるが、ドルトンやイーシャン、それにヨウが危険な目に遭っているのならば助けに向かわないわけにはいかない。



「ビャクも連れて行けるんだよね?」

「ああ、問題ない。火竜やゴーレムキングを相手にあそこまで戦えるんだ。戦力的にも申し分ないしね」

「ウォンッ!!」



船にはビャクも同行が許可され、彼も一緒に戦える事に嬉しそうな声を上げる。その一方でヒイロとミイナも緊張した表情を浮かべ、二人も同行する事は決まっていた。



「そういえば指揮を執るのは誰なんだい?バッシュ王子かい?」

「いや、兄上はここに残るよ。アッシュ公爵が指揮を執る事になっているし、それにマホ魔導士も同行する事が決まっている」

「マホ魔導士も……」

「マジク魔導士がいない今となっては彼女が一番の頼りだ。それと……僕の友達もね」

「友達?」



アルトの言葉にナイは不思議に思い、友達とは誰の事なのかと尋ねようとする前に先に彼が口を開く。



「ナイ君、出発前に実は確かめたいことがあるんだ。よかったら、付き合ってくれるかい?」

「え?何処に?」

「王城さ……ちょっと、出発前に会わせたい人がいるんだ」

「会わせたい人?」

「まあ、とにかく来てくれ。悪いようにはしないからさ」



ナイはアルトが会わせたい人物が何者なのか気になったが、とりあえずは王城へ向かう事にする。他の者達も同行し、王城へナイを待ち構える人物の元へ向かう――






――ナイ達が案内されたのは訓練場であり、何度も足を運んでいる場所だったが、今回は人の姿は見えなかった。普段は兵士か王国騎士が訓練に励んでいるが、状況が状況だけに訓練を行う暇も時間もないのだろう。


但し、たった一人だけ訓練場に待ち構える人物が存在した。その人物は兵士でもなければ騎士でもなく、全身に灰色のローブを纏った少女だた。



「あ、やっと来ましたね!!ちょっと遅刻ですよ、時間は守って下さい!!」

「やあ、すまないね」

「え、この子は?」

「あ、イリアちゃんだ!!久しぶり〜!!」

「何だい、王子が会わせたいと言っていたのはイリアの事だったのかい?」



ナイ以外はどうやら少女と顔見知りらしく、イリアと呼ばれた少女は外見の年齢は11才〜12才ぐらいだと思われるが、アルトによると彼女はナイよりも年上だという。



「ナイ君、紹介するよ。彼女はこの国の最後の魔導士だ。こう見えても僕達よりも年齢は上なんだよ」

「えっ!?」

「どうも、初めまして……イリアといいます。貴方が噂の剛腕の剣士ですね」



アルトの説明を聞いてナイは驚くが、イリアの方は自己紹介を行うと改めてナイの様子を伺い、とても強そうには見えない事に疑問を抱く。

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