第189話 マウト女史の相談

「そしてだな、普通の冒険者はどうやって収納かばんを手に入れるのか。ダンジョンだ。ダンジョンによっては宝箱が用意されている場所がある。残念ながらこの街近くにあるダンジョンでは発見されてはいない。そういうタイプのダンジョン ・・・・・・・・・・・・・ではないからな。」


 僕はこのダンジョンしか知らないので、他にあるダンジョンは分かりません。

 そういえば、デルタさんは他のダンジョンにも行けるような事を言っていた気がします。

 いずれは違うダンジョンに行ってみるのもいいのかな?


「ダンジョンって色々あるんですか?」


「ある。魔物が一切出ないようなダンジョンもあれば、全ての階層に魔物が居るダンジョンもある。この街付近にもダンジョンはあるから知っていると思うが、5層ごとにボス部屋があるというタイプだな。まあ私もそんなには知らないが、この国だけでもさっき述べたようなダンジョンが存在している。そしてどのダンジョンなのかは知らないが、宝箱が出るダンジョンがあり、ごくまれにマジックアイテムが入っているそうだ。そして収納かばんも出るらしくてな、普通の冒険者はこのまま所持をするか、若しくは売りさばくかだな。」


「売っちゃうんですか?」

「当り前だ。よほど高レベルの冒険者でもなければそんなに稼げないからな。だが収納かばんを売れば一生とは言わぬが、10年は贅沢したまま遊んで暮らせるだろう。」


 うわ、僕はそんな貴重品を多数作っちゃったんだ。

 ヴィーベさんとリニさんにあげちゃったよ。それにセシルにもだけど、レイナウトにもロースにも渡しているし。


「ところで相談なんだが。」

 あ、これ分かる。


「断れデルク。」

 あ、レイナウトが断れって言った。それも素早く。

「せめて相談内容を聞いてからでも・・・・」


「いや、この流れだと絶対収納かばん関連だ。いいかデルク、身内や仲間内に渡すのはまだいい。だが赤の他人、仲間でもないやつに渡すな。必ずトラブルになる。あいつに渡したんだから俺にも渡せ、と必ずなる。」


「言いたい事は分かるけれど、一応話を聞いておかない?」

「絶対僕の指摘した事が起こるからな。」

「まあそういう訳なので、一応話を聞きますが、期待はしないで下さい。」

 マウト女史は一瞬残念そうな顔をしましたが、どうやら上手く心を切り替えられたようで、


「確かにレイナウト殿が言った指摘通り、収納かばんの事だ。売ってほしいのだが、どうやらそれは無理な様子。売ってはくれないよな?」


「仲間の理解を得られそうにないので、無理ですね。」


「まあそうだろうとは思った。だが相談というのは少し違うのだ。いや違わなくはないか。その、収納かばんなのだが、ギルドに貸してはくれないだろうか?依頼によっては、依頼を遂行するのに時間がかかる事はよくあるのだ。そこでこの収納かばんがあれば旅がグッと楽になる。勿論ギルドで厳しい管理をする。どうだろう?」


 レンタルですか・・・・

【ねえ、精霊が宿る収納かばんを作って貸したら?精霊が監視してくれるから持ち逃げはできないわよ?】

 あ、フォスさんだ。

【そうなんですか?というかそんなカバンに精霊って宿る事ってできるの?】

【問題ないわ。あんたが作った収納かばんなら、精霊は喜んで宿るわよ。】


 そんな解決方法があるんだ。

 あ、先のアイテム回収も精霊の監視があったんだよね。

「レイナウト、精霊が協力してくれるらしい。」


「精霊の監視があるのか?それなら持ち逃げはないだろうが、僕の指摘はそうじゃない。ギルドに収納かばんを提供すればいずれもっと提供してくれ、他のギルドにも提供してくれとなる。それにいずれ収納かばん目的で襲われるぞ。」

 レイナウトの指摘は尤もなんだけど、多分僕を襲ってもあっさり返り討ちだよ。


 しかし只という訳にはいかないし、レンタル代を徴収すれば問題ない?

 だけどそうすれば折角収納かばんを借りられても、赤字にならないかな?


「マウトさん、貸してもいいですが、只という訳にはいきません。そうは言っても僕はもう一生使いきれないほどの大金を所持しているので、これ以上金儲けをする必要は無いのですが、只で提供してしまえば今後色々問題が発生します。」


「ああ、それはそうだ。この辺りの事は悪いようにはしないので、条件を含め検討してほしい。だがあまりにも高額な値段だと、そもそも借りる事が出来る冒険者はいなくなる。」


 難しい問題です。

「今日はこれからダンジョンに向かいますので、僕達が戻ってくるまでに条件等を考えておいて下さい。」


「すまない!感謝する!」

 ああ、僕は甘いなあ。


 しかし後にこれが国にとって大きな転換点になっていくのだが・・・・それはもう少し後の話。

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