第150話 ギルマスの逃走

「お名前はマウトさんでいいのかな?」


 僕が目の前に居る副ギルマスさん、マウト女史にダンジョン攻略の事を伝えようとしたのですが、何やらすごい音がして建物が揺れ・・・・僕達が呆然としている所に誰かが部屋の戸を開けて入ってきました。


「大変です!」

「今重大な話をしているのだ!後では駄目なのか?」


 副ギルマスさんが半ば怒ったように部屋へ入ってきた人に怒鳴りますが・・・・さっきの揺れと音に関係が?

「それどころではありません!あの豚、何やら隠し持っていた魔道具を発動させ、逃げました!」


「何だと!先程の揺れと音か?」

「申し訳ございません!只今ギルド内は負傷者多数で大変な事になっています!」

 マウト女史は慌てて部屋を出て・・・・僕とセシルも続きます。


 この部屋は建物の中心に近い場所だったのですが、どうやら奥の方が激しく破壊されているようで、あたり一面人が倒れていて呻いています。


「セシル、治療を!」

「わかった。」

「僕はその豚・・・・ギルマスを探します。」


 僕はセシルに治療を任せ、この騒動の中心者であるギルマスを探すべく、外に出ようとしますが、

「待て、私も行く!」


 マウト女史も同行しようとしていますが、彼女は冒険者としてはどれほどの実力者なのでしょう?


 僕は振り返る事なくギルドの外に出ます。


 するとどうやらまだギルマスは遠くには移動していないようで、何やら叫びながら門に向かって一応走っているようです。


 そして何か【ピ―――――――――!!!!】

 と音がしたと思ったら、何やら騒がしくなります。

 街の至る所で警鐘が打ち鳴らされ、街を囲っている壁の近くから何やら叫び声が聞こえます。


 そして更に恐ろしい事が・・・・どうやら壁に何か体当たりをしているような、そんな音がしています。


 僕は急いでギルマスを止めるべく追いかけますが、あと少しで追いつく、と言う段になり僕は何かの気配を感じ・・・・頭上に影が差したのですけれど、急いでその場を離れます。


 うわ!何かが降りてきた!

 どうやら魔物が街に侵入したようで、目の前には飛行型の魔物が姿を現しています。姿が。


「うはははは!今こそ教会の教えを生かす時が来た!遊び人は死ね!」

 そう言った本人が僕に襲ってくる事はなく、何と目前に出現した魔物の背に乗り何処かへ飛んでいきました・・・・


 何だったんだろう?


 マウト女史はギルマスに何か叫んでいますが、女性にあるまじき罵声を浴びかせているようです。


「一体何がしたいんだああ!!!!!」


 僕はまだ街へ戻って2日目なので分かりませんが、教会の勢力を追い出したのではなかったのでしょうか?


 ギルマスみたいに密かに教会の手勢となっていた人がまだこの街にいるのでしょうか?

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