第141話 白いワンピースの少女

 宿で部屋を確保、食事をした後、僕はつい安心したのかどうやら寝てしまったようです。

 気が付けば・・・・驚きの朝!


 僕は急いで部屋を出て、洗面所で顔を洗い桶に水を貰い部屋へ戻ります。


 そして火魔法で少し桶の中に入っている水を温め、綺麗な布で体を拭いていきます。

 浄化と言う魔法があるのですが、何時もセシルに任せていたので、自分では殆ど使った事がないんです。


 えっとなんのジョブで出現するのだったかな?


 生活魔法に分類されるのですが、治療にも使い、そして浄化と言うのは・・・・そうだ、アンデットにも効果があるので、あれ?回復職・・・・僕はヒーラーを選択していますが、そうだヒーラーなら持っていたっけ。


 ああ、なんだか頭がボケボケ。

 何でこんな事を思い出せないんだろう。


 そうそう、体を拭いたのは、浄化では確かに綺麗になりますが、寝ている身体を目覚めさせる意味があるので、洗顔もそうですが魔法だけに頼らずに行うんです。


 そして僕は食事を貰おうと宿に常設している食堂に入り、食事をお願いします。

 勿論1週間分の代金は払っているので、朝夕は食べないと損をしますが、これに関しては出掛けている場合にわざわざその為だけに急いで戻る必要もないので、それに今更お金に関してそこまで考える必要も無いので本当はどうでもいいのですが、中々そこまでの切り替えができません。


 僕は急いで食事を頂き・・・・流石は本職、美味しい・・・・ダンジョンだと食材に偏りがあったうえに、調味料も限られていて、数日もすれば同じメニューの繰り返しになってしまうので、宿での食事は久しぶりに違うメニューでちょっとうれしかったりします。

「そんなに急いで食べなくてもまだたっぷりあるんだから!」

 と宿の奥さんが声をかけてくれますが、

「いやあ、美味しくってつい。それにダンジョンでは食材と調味料の種類に限りがあったので、こうしてダンジョンで食べられなかった食べ物が目の前にあると、なんだか嬉しくってつい。」


「そうかい!まあデルクにそう言ってもらえるとこっちも嬉しいよ!」

 宿の奥さんと会話をしつつ、食事を終え部屋に戻ります。


 そして僕はセシルと待ち合わせをしている場所であるギルド・・・・冒険者ギルドに向かうべく、部屋で身支度を整え出発します。

 そうそう、今日は私服です。ダンジョンでは軽装の鎧を常に着込んでいましたが、街中で鎧は必要ないので収納かばんに仕舞っています。

 勿論武器も必要ないはずですけれど、何かあるといけないので、基本前衛の冒険者は武器を携行している事が多く、ショートソード等を腰に装着してたりする事が多いです。

 そして魔法を扱う後衛等は杖を所持しています。


 遅れた!と思いつつ、急ぎ冒険者ギルドへ向かいますが、どうやらまだギルドの建物の近くにはセシルと思われる人の姿は見かけません。


 ギルドは大通りに面していて近くは広間になっていて、ベンチなんかも用意してあります。


 僕はギルドの入り口が見える場所に腰掛け、落ち着きます。


 ふと周りを見渡すと、用意しているベンチには数人が腰かけてそれぞれ待ち合わせなのか、休憩しているのか座っています。


 そしてその中で僕は1人の少女に目が釘付けになってしまいました。

 1人ベンチに座っているのですが、背筋をピンと張った、なんというのかな?凄く姿勢がいいんです。

 そして身動き1つせずに前を見つめているその顔。


 因みにその少女は座っているのでわかりにくいですが、白いワンピースを着ているようで、見事なロングの金髪が背中からベンチのシートへ届くほどの長さでとても綺麗なんです。

 そして・・・・驚く事はその顔です。

 失礼と思いつつ、思わず見惚れてしまいました。

 完璧と言っていいほど整った顔立ち。

 座っている姿勢があまりにも見事なので、それと同じく凛とした表情が何やら神々しささえ感じてしまいます。

 それに僕より年下かな?体つきは小柄なように感じます。

 ひょっとしたら有り得ないほど脚が長くて僕より背が高い可能性もありますが、スカートから覗くその脚は、流石に人外とまでは言わない・・・・ように見えます。


 は!僕は何を考えているのだろう。

 セシルと待ち合わせなのに他の女性に目移りしてしまうとは、僕は最低です。


 僕はもう少しその少女を見ていたいとも思ったのですが、流石にこれ以上は失礼と思い、正面を見据えセシルを待ちます。

 しかし来ないなあ。

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る