第95話 精霊

 僕が一人で94層に向かい、そこでの戦闘で無双してしまった・・・・

 そのせいで僕は平常心のはずだったのですが、相当興奮していたみたいで、


「デルク、1人で危険。今度から全員で。」

 セシルに早速泣きつかれてしまいました。

「そうだよデルク。万が一君に何かあったら僕達は全滅だから、その辺りをもっと考えてほしいな。」


 すいません。レイナウトの仰る通りです。

 しかしロースの反応は2人とは違い、

「デルク、精霊と何かあった?」

 え?何かって?


「特に火の精霊が興奮しているの。あと土の精霊もよ。」

 火の精霊が興奮している?何かしたかな?

 暫く考え込むと・・・・


 あ、もしかしてこの剣?これを打った時に何だか周囲の様子が変だったんだよ。


 妙だったのはそう、剣を打とうそしたら素材の声が聞こえた気がした・・・・

 え?生き物じゃないんだから声なんか発するはずないじゃないか?


 そうなんだけど、確かに素材の声が聞こえたんです。

 そして声の通りに剣を打った結果、あの素晴らしい剣が出来上がった・・・・


 もしかして精霊の声だった?

「あーもしかしてだけど、精霊の声みたいのが聞こえたかも。」


 隠すような事でもないしロースは精霊使いだし、確認の意味でもきちんと答えた方が良いはず。

 それに今後何かの役に立つ情報がある・・・・かな?

 例えば本人にとって当たり前の事が、他人には必ずしもそうではないとか。


「うわ、見えないけれど聞こえちゃったのね。」

 精霊使いだと、精霊が見えたり声が聞こえるの?

 意味深な事を言ってくるロース。


 しかし、声だけとはいえ鍛冶の時に精霊が助けて、若しくは協力をしてくれたんだ。

 それはいいけど、そんな事をして精霊は何か得をするのでしょうか?

『気に入ったから手伝ったのよ?』


 え?

 今何か聞こえた気がしました。

『気にしたら負けよ?』


 何に負けるのでしょうか?


「その様子だとデルクは精霊に好かれたみたいね。羨ましいわ!」


 ロースがそんな事を言っていますが、別に精霊に好かれるような事はしてないんですけど。

 何となくですが、精霊って好き嫌いで相手に力を貸したりしている?

 もし僕が精霊だったら、嫌な事をしてくる人には力を貸そうと思えないよね、多分。


 その後僕が94層で色々していたのを感づかれ、セシルには更に泣かれてしまいました・・・・

 ごめんなさい。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 翌日、4人で94層へ向かう事になりました。

 今のセシルとレイナウトの実力があれば、十分に魚エリアを突破できるはず。

 それにロースも精霊に守られながらなら問題なさそう。

「デルク、1人で行っちゃダメ!」


 セシルに念押しされました。

 どうやら精霊には好かれたようですが、セシルの信用を失ってしまったようです。

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