第68話 2代目囲い

 現在91層。


 25層ごとのエリアから考えると、瓜エリア。

 瓜ではなくても色々なお野菜が手に入るのでは、と少し期待してます。

 しかしながら、ここで採れるのはどうやら【メロン】のようです。

 うう、確かに瓜ですが、お野菜じゃなく果物扱いされている作物です。

 残念、そう思っていましたが、セシルが喜んでいるのでよしとしましょう。

 僕は他の品種もないか探していましたけど、よく見るとツルが伸びていない作物もあるのに気が付きます。


 胡瓜みたいな作物ですが何でしょう。


【ペポカボチャ】


 ここにきてカボチャです。

 あれ?カボチャってメロン同様ツルが伸びていく作物ですよね。

 これは違うので何でしょう。


 折角ですので収穫します。

 後でわかった事ですが油を用いて炒めると、絶品でした。

 変に素材の味がしないので、調理次第で相当美味しく頂けるのです。


 僕はこのペポカボチャと表示されているカボチャを収穫していると、セシルは僕に背を向け一生懸命メロンを食していました。


 まあその小さな姿は小動物っぽくて可愛らしくて、つい微笑んでしまいます。

 で、何度か鑑定を駆使しペポカボチャを探していると、突然表示が変わりました。


【ズッキーニ】


 どうやら鑑定のレベルが上がったようです。

 なるほどズッキーニと言うのですね。


 ある程度収穫を終えたので、90層の【家】に向かう事にします。


「セシル、そろそろ家に行こうよ。」


「ん、わかった。」


 トテトテと駆けてきます。

 うーん、やはりセシルの動きは可愛らしいです。

 戦闘の時は無駄がない鋭い動きなのに、どうしてこう普段と差があるのでしょうね?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 90層の家にやってきました。


 今まで他の階層で使っていた家へは、荷物を置きっぱなしにはしないようにしていたんです。

 いつ何時離れる事になるかわからないので、面倒でも毎回収納かばんに仕舞っていました。

 それが功を成したのか、今も快適な生活が送れています。


 今はセシルが入浴中。

 流石に女の子と一緒に入るわけにはいかないので、外で囲いの作成に取り掛かります。

 セシルも鎧との付き合いが長く慣れたのか、鎧のまま入浴する術を得たようです。

 まあもしかしたら本当は鎧を脱着できるのかもしれなませんが、その場合セシルが何も言わないので、敢えて聞きません。

 もしそうなら何かしら事情があるはずですから。

 もしかして顔にひどい傷があって見られたくないとか、鎧を身に纏う事で精神を落ち着かせている可能性もあるので、敢えてその事に関しては触れないようにしています。

 もしかして本当に鎧を外す事が出来ないのかもしれません。僕には無理でしたし。

 もしかしてではなく間違いなくですね。家の中でも、寝る時も鎧姿では何かと大変ですし。

 セシルを疑うなんて最低ですね、僕は。


 それに疑問に思うのはお花を摘みに行く、と言ってセシルが用を足している時。

 鎧が外せないならどうしているのか?

 恐らくそのまま用を済ませ、浄化で綺麗にしているのでしょう。

 しかしもしおしっこなら鎧の隙間から流れてしまいますから、そんな姿は見られたくないでしょう。

 僕はセシルに確認しません。

 若し其れ所ではなくなってしまえばその限りではありませんが、今はそこまで差し迫った訳ではないので。


 また脱線しました。さて新たな囲いですが、以前と同じようにミスリルと鉄を用いる事にします。


 前回真っ先に壊れた個所を補強する形で作成していきますが、素材自体は前回大量に加工しているので、今回は組み立てるだけです。

 素材というよりは部品ですね。


 まずは前回と同様に囲いを作成、そして壊れやすかった箇所には更なる補強を行います。

 そうは言ってもあまりゴテゴテとしてしまうと、その場所に魚が突っ込んでくるかもしれません。


 魚自体は刃に突っ込んでもらいたいので、少し工夫が必要です。


 こうして出来上がった囲い。

 前回の囲いで分かっていた不便な所も改善しました。

 そうは言っても十分使い勝手は良かったので、あまり変更はしていません。

 大きな構造を変更してしまうと、そのせいで変に脆くなったり、囲いのダメージが予期せぬ部分に集中し、以前の囲いより早く壊れてしまう恐れがあるからです。

 もし大幅な変更をするなら、囲いをもう1つ用意しておく必要があります。


 で・・・・このダンジョンを脱出するまでに5代目まで作成する事になろうとは、この時は思ってもみませんでした。

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