第47話 それぞれの自己紹介

 僕が自己紹介をすると、目の前で女性はじっと僕を見ているようです。


「セシル・ヴァウテルス。」


 名前だけ・・・・?

「今の現状ってわかるかな?」

「・・・・私は、同行していたパーティーメンバーに突き落とされたようだ。」

 なんだかぶっきらぼうな言い方ですが、仕方ないでしょう。

「それは本当?確かに君が落ちてきた時、近くに冒険者の姿を見たけれど、どうして突き落とされたのか、わかる?」

「・・・・私は嫌だったんだが、パーティーは遊び人狩りを行っていたようだ。そして貴方を、貴方とその連れを追っていたみたいで、私は恐らくだが、貴方を監視するように言いつけられた。そして大穴の淵に連れられた・・・・その時、背後から誰かに突き落とされた、という訳だ。たぶん私を貴方にぶつけようと思ったのだろう。そしてそれは見事命中。」


 淡々と喋っているようで、声が震えています。

「じゃあ僕の職業が遊び人って知っていた?」

「ええ・・・・あの時、3つのジョブ全て遊び人を引き当てた人でしょう?私はその後に呼ばれ、選定を受け神聖騎士になった。」

 あの時に凄いのを引き当てた人がいたはずだけど、彼女がそうだったんだ。


「その、神聖騎士って確か今回一番凄いと言われている職業だよね?」

「確かに滅多に出ない、とんでもない職業と聞いていた。それが駄目だった。」

 え?駄目って何かな?

「どうして駄目なのかな?」

「レベルが上がらない、成長が遅すぎると皆に散々指摘された。しかしどうしろというのだ?こう言っては何だが、パーティーメンバーの誰よりも魔物を仕留めた。3倍は仕留めた。だがそれでもレベルは上がらない。皆早く中層に行きたいと言っていた。私のレベルが低すぎて中層に行けない。そして最後は見捨てられ、こうして突き落とされたという訳だ。」


 ・・・・淡々と言っているけれど、声も震えているし、今では肩も震えているし。


「ああうん、そして僕を仕留めるのに利用されちゃったんだね。」

「すまない。結果的に私も遊び人狩りに加担した訳だ。何故遊び人がいけないのか、追わねばならないのか、最後まで理解できなかった・・・・どうしてなのだ?」

 セシルという女の子はそう聞いてくる。僕のほうが聞きたい。


「その前になんだけど、セシルって呼んでいい?僕はデルクと呼び捨てでいいよ。」

「じゃあデルク、デルクは私を恨むのだろう?」


「え?何で恨まないといけないの?」

「私のせいでこうなった。」

「うーん・・・・そんな事はないよ。あ、それとさっきから気になっていたんだけど、その装備、外せなかったんだ。どうやったら外す事ができるの?」

「これ?後ろにボタンがあって、押せば外れる・・・・え?外れない?ヘルメット・・・・どうしよう、ヘルメットも外れない。今思えば私は自分で装備を外した事が無い。」

 え?これは問題じゃない?

 鎧はまあいいとして、ヘルメットが外せないと、食事はどうしたら?

「あ・・・・水分補給や、食事ってどうするの?」

「それは問題ない。ヘルメットは、顔の部分が少し動く。」


 そう言って口元を上にあげるセシル。小さな口が見えるけど、それ以上は見えない。

 そしてこのヘルメット、顔全体は開いたりできないようで、口だけみたい。

「司祭様が言うには、神聖騎士専用の装備らしい。神聖騎士になれば皆、この装備を使用するようで、大きさは自動で調節してくれるようだ。だが、重くて・・・・私は体が小さいから、あまり素早く動けない。」


 うん、何となく察してた。

 さて・・・・この後どうしたらいいのか。

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