演劇部のスタッフチームに所属することになったんだけど、「大学祭公演で"全裸でXXXしちゃう"ヒロイン役を大学内でオファー」とかいう無理ゲーに、学内イチの美女学生をツモってしまったんだが

じっくり

第一章 俺と演劇部と沢北澪と

第1話 俺がここにいる理由:演劇部スタッフ部門

 演劇部の練習室に、俺はやって来ていた。


 「おぉ!大地が俺を……!」

 「……ねえ、てかそれ、なんの役なの?」


 右側の壁が鏡張りになっていて、台本を持って、自分の顔や姿勢を確認しながら、セリフの練習をしている男子メンバーに、女子メンバーが話しかけている。


 ――キュッキュッッ……。


 その隣では、スポーツウェア姿でイヤホンで音楽を聞きながら、ダンスの練習をしている女子メンバーが、数人。


 「ねぇ、今日だよね?脚本チームから台本があがってくるの」

 「だな。ただ、今回は執行陣はほとんど絡んでないって……」


 ストレッチをしながら、会話しているメンバーも。


 「……」


 だが俺は、そんなメンバー達の輪には入らず、練習室を入ってすぐ横にある、もうひとつの扉に手をかけた。


 ――カチャッ。


 「お疲れさまで~す」


 開けると同時に、俺は言う。


 「お疲れさま~!」

 「おう、来たか」

 「やっほ~」


 俺を見た、その部屋にいた数人のメンバーから、声をかけられた。


 「お疲れ~」


 再び言いつつ、空いているイスに腰かける。


 「ふぅ~」


 ここは、準備室。


 練習室ほどの広さはなく、部屋の中心部にある折り畳み式の長テーブルが置かれている。


 そのテーブルを取り囲むように、パイプイスやソファなどがある。


 ソファには、お茶かコーヒーの、ちょっと染みの付いたものもあるが、みんな、気にすることなく座っていた。


 そして、そんなスペースをさらに取り囲むように、たくさんの小道具や衣装、パーテーションなどが、雑多に置かれていた。


 いわゆる、演劇部の倉庫だ。


 そして、ここを拠点に活動しているのが、俺が所属する、演劇部スタッフ部門だった。


 「よ~し、それじゃ、スタッフ部門、活動始めますか!」

 「いえ~い!」


 先輩の掛け声に、ノリのいい部員が反応する。


 「よ〜し、それじゃあ……!」


 ――ガサガサ……。


 地べたに置いてあった、自分のリュックの中を先輩は物色した。


 「……よし!そんじゃ、今日は、演出の勉強だぁ!」


 その手には、映画のDVD。


 最近レンタルを開始したという、人気俳優と人気女優が出演している、とあるアニメを実写化した映画だ。


 「おう!それはこの前までやってたヤ~ツ!」

 「まだ見てなかった!」

 「私も。レンタル始まったら、見ようって思ってたんですよ〜」


 皆が、口々に言う。


 「ふふん、慌てるでないぞ、諸君!」


 先輩の声が、声優のようなイケメン声に変わった。


 「まずは、学ステだ!学ステへ行くぞ!お菓子とジュースを買いに行き、鋭気を養うのだ!」


 学ステとは、売店の入っている建物だ。大学内の学生達が『学生ステーション』、通称『学ステ』と呼んでいた。


 「さんせ~い!」

 「いえ~い!」

 「学ステ学ステ~!」


 先輩の号令で、スタッフ部門のメンバー全員で、準備室を出る。


 桜の木は、ピンクから、緑へと変わっていた。


 5月下旬。


 現在、大学一年生。ようやく大学に、新しい生活に、少し慣れてきたところ。


 ちなみに俺は、演劇への興味が、まっっったくない。


 訳あって、演劇部に入ることになってしまった。


 そして今では、ここスタッフ部門の居心地のよさに、完全に馴染んでしまっている。


 今日も先輩いわく、演出の勉強……といえば聞こえはいいが、言ってしまえばただの映画鑑賞。


 この他にも、先輩が持ち込んできたゲーム機をみんなでプレイしたり、漫画読んだり、お昼寝したり、ただただおしゃべりしたり。


 これが、演劇部スタッフ部門の主たる活動だった。


 ……このフリーダムさよ……このフリーダムさに、俺はやられた。


 もちろん、演劇部のサポートメンバーとして、雑務をこなしたりする時もあるが……。


 基本、遊んでいる。


 ……ぜったい、この部門がなかったら、やめてたな。


 みんなと歩きながら、俺はしみじみ思った。


 やがて、学生ステーションへ。


 規模の大きなコンビニ2つ分ほどの大きさの売店が、1階にある。


 そこには、パンやお惣菜、菓子などの食品・飲み物や、ペンやノートのなどの文房具も置いてある。


 また、洗剤やタオル、食器などの生活用品も売られていて、日常の生活に必要なものは大体揃っていて、多くの学生達が店内にいて、にぎわいがあった。


 「どれにしようかな~」

 「おい、おい……!」


 俺の肩を、トントンと叩く者がいる。


 「んっ?」


 振り向くと、同期の、ヤスというメンバーだった。


 「どうした?」

 「あれ、見てみろよ」


 ヤスが指差すほうを、俺も見る。


 「!」


 自分たちだけでなく、その売店にいた他のメンバーの視線も、その方向に向いていた。


 「みお!いこう!」


 友達であろう女子らに声をかけられ、その人がこちらへ振り向いた。

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