群馬の日

バブみ道日丿宮組

お題:群馬のネット 制限時間:15分

群馬の日

 日本国内であってもパスポートが要求される都道府県があることを普通の人は知らない。

 その名も群馬県。

 噂程度は耳にするだろうが、あそこは城壁に囲まれてて普通に入ることはできない。

 そのため、中に入る人はとても少ない。貿易ビジネスはなりたたないし、現地名産物もない。つまりは行くメリットが存在しない。

 が、逆に出る人はたくさんいる。

 どうやら子作り教育に力を入れてるらしく、産んだ生徒はお役御免ということで自由になれるらしい。子は親の顔を知らず、また親は子の成長を知らずに過ごすのだという。赤ちゃんから基礎教育をはじめて、幼稚園で既に中学生レベルの問題を解くという。

 愛とは、友情とは、遊びとは、家族とは一体なんなのか、と人権団体がよくデモ行進を行ってる。

 だが、群馬からきた人材は国のどの都道府県よりも優れた者ばかりだ。国大の上位は群馬県民が占めており、政治家の殆ども群馬からきた人間だ。

 そのため国は大きな声でパッシングすることはできない。そりゃ自分たちが育った県を否定することはできないだろう。

 そんな群馬県はさぞ教育が徹底されてるのだろうと、誰しもが思うだろう。

 城壁がいかに厳しかろうと、ネットには壁がなく、一部の子ども夜な夜なチャットを繰り広げてる。

『……新作のゲームか』

『ソシャゲらしい』

『ソシャゲはできないからなぁ』

 若者は外の情報を求める。

 もちろん、インターネットがないわけでも、情報誌が売ってないわけでもない。精神教育された子どもが手に持たないだけなのだ。

 僕はチャット友達として今日も群馬県民と交流してる。

 ゲームだったり、アニメの話だったり、学校の話だったり、話題が尽きることはない。

『君ももう子作りしてるのかい?』

『5人ほどとそういうことはしたけど、まだできないみたいだね』

『大変だな』

『仕事みたいなものだから仕方ないよ』

 仕事か。

 そんなふうに子作りを思われると、なんだか愛の結晶というのはおかしく感じてしまう。

『外に出れたら、君に会いたい』

『会えるといいね』

 彼女なのか、彼なのかは知らないが、友だちにあえるというのは楽しみの一つとしてありだ。

『じゃぁそろそろ勉強するから』

『ノシ』

 子作りをはじめたのならば、近い内に出てこれるかもしれない。

 その時は何を話そうかと、僕はベッドへ潜り込んだ。

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群馬の日 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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