第265話 仲間?との合流
昼食を終えるとテンゴの案内でとある家まで訪れる。そして中に入るのだが
「また、大量に用意したな」
「まぁな、これは魔力さえあれば
案内された家にあったのは皮袋に詰められた大量の飛翔石だった。
(重さ………は変わるからそれで量るのは難しいな。体積で言うと大型バン一台分ほどあるな)
「これはどうしたんだ?」
「ヨク氏族のやつらが、お前にって渡してきた。頼んでいたんじゃないのか?」
「いや、頼んだ覚えはないが……受け取っておこう」
これが予想通りの効力を生むなら、使い時はそう遠くない。
「バアル様、これは?」
「まぁ、貴重な物に成る物だな」
今ついて来ているのはリンとノエル、そしてレオネの三人だ。
「それとこれについては当分の間は言及することを禁じる。いいな?」
「「わかりました」」
リンとノエルに口止めを忘れない。
その後、すべての飛翔石を『亜空庫』に仕舞う。
「それで、本当に捕まった奴らは戻ってくるのか?」
「……ああ、絶対ではないがな」
「そうか、期待しているぞ」
テンゴのその言葉に肩をすくめる。
「バアル様」
飛翔石を受け取り、家の外に出ると一人の人族の騎士が話しかけてくる。そしてその甲冑は選び抜かれた騎士しか着ることができない物のため、どこの所属かすぐに分かった。
「近衛騎士か、どうした?」
「ルドル様がお呼びです」
「わかった」
テンゴの要件は終わったので、ルドルのもとへ向かう。
「ご健勝で何よりです、バアル殿」
近衛騎士が自ら張ったであろう、テントに入るとルドルが出迎えてくれた。
「ルドル殿も、こんな遠い地へよくぞ」
差し出された手を握り握手を交わす。
「それでご所望の例の魔具をお持ちしましたが」
ルドルは要望の品を取り出してくれる。
「感謝する。だが、使うのはもう少し先になる」
「……そうですか、ではそれまではこちらで管理しておりますがよろしいですね?」
確かに疑わしきを確かめるために用意してもらったが、今使うわけではない。
「それよりも、この後の動きは確認したか?」
「一応はエウル殿から連絡が来ております。数日後に駐屯地に赴くそうですね」
俺が飛翔石を受け取っている合間に既に連絡が来ているのだろう。
「協力してもらえるか?」
「その問いは意味がありません。こちらはグラス様からバアル様をお守りし、無事にグロウス王国に届けるようにと
本当は国宝の魔具を運ぶために近衛騎士団が来ていることにはなっていない。そしてそれをカモフラージュするための命令が俺の保護だった。
「なら問題ない」
近衛の協力も無事に取り付けることが出来た。
「しかし、聞いていた以上にこの地方は侵略しにくいですね」
ルドルもこの地形の強固さというのを肌身で感じたのだろう。
「山脈間では一定数をそろえれば十分ですし、砂漠は軍の歩みが遅くなり防衛には最適、絶壁は常に強い風が吹いておりただ歩いているだけでも命の危険がある、ですか」
「ああ、だから」
「あの数のゼブルス軍とノストニアの兵でも防衛可能と」
どうやら数についてやや不安があったようだが、実際に感じて十分だと判断したらしい。
「とはいえ少数だけが山を登り、伝ってくることは十分に考えられるがな」
「しっかりと監視網を張れば問題ないでしょう。数人が超えてきてもほとんど意味はないですから」
共に防衛の認識をすり合わせる。
「それで、ルドル、一人そちらで保護してほしい人物がいる」
そして俺は一番重要な部分を口にする。
「例の
「その通り、万が一に備えて一人だけを連れていく。それで証明は十分だろう?」
「そうですね、すでに確認が取れましたのであとはしかるべき場にて証言してもらうだけでしょう」
ルドルも彼女、レティアの重要性はよく理解しているようだった。
「(それがわかっているなら問題ないな)しばらくしてこちらにレティアの身柄が渡されるだろう」
「丁重に扱うのでご安心ください」
その後、細かい打ち合わせをしてルドルとの面会は終了した。
ゼブルス軍が合流してから二日後、山脈間のルートを進む集団があった。
その集団はおよそ150に満たない集団だった。そして真ん中に位置する馬車の中では一人の男が何とももの不思議そうに周りを見渡していた。
「へぇ~これが馬車か。自分の足で歩かないのは何とも変な感じだな」
「長距離を徒歩で移動できるお前たちの方がよほどおかしいぞ」
「それにこの服、妙に着心地が悪いな」
「仕方ない、あの半裸のような恰好をさせるわけにはいかない。何より
馬車の中にはバアルとその護衛であるリン、そして人族の正装を着ているレオンの姿があった。
「何とも落ち着かんな、こんなに動きにくいとは思わなかったぞ」
無理にストレッチをしようとし、服が伸びそうになる。
「交渉の場ではもっと堅苦しい服を着るからそれに慣れておけ」
レオンに着せている服は、人族で使っている一般的な服だった。
今は普通の服を着せているが、交渉の場となればあらかじめ作った服を着ていくことになる。なので今普通の服を着ているのはそのための慣れだ。
そしてその堅苦しい服はそのままでは個性がないため、もともとお前たちが着ていた毛皮の服の一部を違和感のないように貼り付けている代物だった。
「それを作った奴も言っていたが、綺麗にするためにやや強引に処置をした部分が大きい。だから過度な運動はするなよ」
ゼブルス軍の女性兵とエルフの女性に頼んで何とか見栄えよくできるように仕立ててもらっている。だがその反面耐久度は通常の服と同程度で獣人の力ではすぐに破けてしまうため、現在慣れてもらうように普通の服を着せている。
「それに俺に着せるんだったらほかの奴らにも着せてやれよ」
レオンは親指で馬車の外を指さす。
そこにはいつもの格好で、歩いているエナ、ティタ、アシラ、ヒュールそして馬車に乗せてもらっているグレア婆の姿があった。
「あいつらは護衛だからあれでいい。グレア婆に関しては交渉の場に出るから正装してもおかしくないが、言ってはなんだが老婆であるから地味目の服なら何でもいいだろう」
「ずりぃ~~」
レオンはめんどくさそうな目であいつらを羨ましそうに見る。
「いいか、レオン交渉の場に出たらお前は何もせずに堂々としていろ」
「そこはわかってる。お前こそ、ゼンケンイニンジョウってやつを忘れてきたりしていないだろうな?」
レオンを特使にするために既に全権委任状を作っていた。そこには獣王バロン・テスとレオンの名前が刻まれている
(まぁ、見せかけもいい所なんだがな)
獣王と言っても現時点で何の権力もないため、本当にただの張りぼてだ。だがそれでもクメニギスに獣人の支配者たる王がいると誤解させるためには必要なことだった。
「いいか、レオン、駐屯地に入ってから先、俺かエルフ、もしくは近衛騎士団から絶対に離れるな。そして交渉が締結するまで一切、どんなことでも手を振るうな」
「おいおい、それじゃあ、襲われときはどうするんだ?」
「その時のために離れるなと言ったんだ。これから先、お前たちが手を挙げればあの協定によりアルバングルの方が先に手を出したと言われかねない。そうなれば俺は協定通りにクメニギス側に付かなければいけなくなる」
どんな理由であれ手を挙げてしまえば即座に向こうは難癖付けてきて協定によりゼブルス軍を味方につけようとするだろう。
(向こうもバカじゃない、おそらく好戦的な連中はこの策を取ることになるだろう)
なにせゼブルス軍はすでに山脈間を抜け終わっている。もしゼブルス軍がクメニギス側に付いたらすでに山脈間のルートは攻略済みと言っても過言ではない。
「つまりは危険だと?」
「とびっきりな」
「なるほど、だから今回はレオネを縛っておいてきたのか」
レオンの言う通り今回テトに何度も説明して、レオネを向こうに繋ぎとめておいてもらっている。これには危険だからというのもあるが、何よりレオネがいたら何かをやらかしそうで怖かったからだ。
「もちろんあいつらにも言い聞かせておくが、いいか、何があってもお前の力を振るうな」
「わかった、約束しよう」
レオンはしっかりと言葉に出す。その声は自身の信念を乗せているようだった。
その後、俺は馬車を降り、レオンの護衛一人一人に先ほどの話をする。もし手を挙げてしまえば再び戦争は始まってしまうと脅しをかけてだ。
そして一日後、山脈間のルートを抜けてあと少しで駐屯地に到着するというところで俺はとある人物と再会していた。
「待っていたよ、バアル」
「なぜここまで来た?」
事の発端はこうだ。山脈間を抜けてルンベルト駐屯地に、あと少しで着こうというところで一つの馬車がやってきていた。こちらは何かしらの伝令だと思い、警戒しつつ、歩みを止める。向こうもそれに倣ってすぐそばで馬車を停止すると馬車から
そして俺もエレイーラと会話をするためにリンとノエルを連れて馬車を降りていた。
「何、総司令官も今の君が難しい立ち位置にいるのは理解できている。だから戦争に直接のかかわりがない私が君を迎えに来たというわけだ」
どうやら駐屯地にいる上層部にはこちらを気を使える連中がいるらしい。
「それで要件はそれだけか?」
「いや、君には駐屯地に入らず、そのままクメルスにまで向かってもらう」
「それは意外だな」
駐屯地の連中からしたら、俺を引き入れたいと考えると思っていたのだが。
「私の交渉のおかげというやつだ」
どうやらエレイーラが手を回していたらしい。駐屯地からしたら確保したいが、エレイーラに横やりを入れられたのだろう。
「何、正論で殴っただけだ。君は国賓と呼べる立ち位置のはずなのに軍人は戦争のための歯車の一つにしようとしている」
軍人が勝利するため俺を利用とするのはある意味では当たり前だ。
「ただ不運なのが、私がいたことだな」
「王族に面と向かって国賓を無下に扱うなど言えない、か」
エレイーラはその通りと笑顔になる。
「それで、これからどう動くつもりだ?まさかこれで、ただクメルスに戻るわけではないだろう?」
再びエレイーラは笑顔になるのだが、今度の笑顔はいたずら好きの子供のような笑顔だった。
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