第105話
「菜々、おはよ」
私を揺り起こす心。目がなかなか開かなくて、その理由が涙でまつ毛がガチガチにくっ付いてしまっていたからだと、すぐに理解した。
「面白かったよ、菜々の寝顔」
「え?」
心が朝食の準備をしながらくすくす笑った。
「苦しそうに魘されて泣き出したから、起こそうと思ったら……なんか泣きながら笑ってたの。すごい幸せそうに」
「はず……」
夢の内容はあまり鮮明ではないけど。思い当たる節がありすぎて、私も思わず笑ってしまった。
その時、玄関のベルの音が鳴って二人できょとんとする。
「弟くん?」
「違うと思うけど……」
不思議そうにしながら玄関へ向かう心。用意してくれた温かいミルクティーを飲んで身も心も温めていたら
「菜々!」
心が少し焦ったように私を呼ぶから、目を瞬かせながらこの部屋の主の後を追った。
「心?」
顔を覗かせると、そこには息を切らして髪もセットされていない、まさに起き抜けの
「ななちゃんっ!!」
晴が、笑顔で立っていた。
「……迎えに、来たで」
いつもと変わらない、優しい声で。
「……え」
手を差し出してくれるから、戸惑っていると、
「はやく行って」
と心が背中を押してくれるから、おずおずと彼の手のひらに自分のものを乗せる。
「帰ろ?」
何だか、晴の目も腫れているようだ。
彼の言葉に頷いて、心にお礼を言うと部屋を出た。
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