第52話
「ゲッ……」
講義終わりに友達とメシでも行くかと話しながら步いとったら、大学の門の前で佇むシルエット。エゲツないくらいのスタイルにはさすがの俺も完敗や。オーラがありすぎて、学生達も気軽に近づけんと遠巻きに見とる。……鬱陶しくキャーキャー言われるんが嫌やったら、俺もあそこまで到達せなアカンわけか。
そんなことを考えながら、ボーッとソイツを見ていると、振り返った──橘と目があって、顎で合図された。何様やねん。……あ、俺がだいぶ年下か。
仕方なしに傍まで行くと、
「ちょっと来い」
とか行って俺を連れ出した。返事の代わりに
「メシ奢れよ」
と告げたら、ちょっと強めに頭をしばかれた。
そのまま連れて行かれたのは小洒落たBARみたいなとこ。薄暗い室内に慣れてない俺は、緊張しているのを悟られないようにするので精一杯で、無意識に口数も減っとった。
「……何飲む?」
そんな俺のことも分かっとってか、リードする橘。ななちゃんもいつもこんな風にされとんかって考えたら……やっぱり、コイツは好きになれん。
テキトーに飲み物を頼んで、改めて目の前のイケメンに向き直ると、単刀直入に切り出した。
「で、なんか俺に用やってんやろ?」
「……いや、アイツと付き合ったって聞いたから」
俺の顔をじっと見つめる。男前からこんなに見つめられることなんかないし、ちょっと緊張するわ。キャーキャー言っとる女の気持ちが分からんでもない。
「見定めに来たっちゅーんか。オヤジみたいやの」
いつもみたいに軽ーく、皮肉っただけやった。でも……
「……父親みたいなら、よかったんだけどな」
コイツは今まで見たことないような、切ない顔をするから──俺は何も言えんくなった。
ああ、やっぱり。分かっとったことやけど。少し前の俺とおんなじ顔するんやなあって、罪悪感が湧いた。
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