第42話 魔王とバトル!(1)
無数に打ち付けられる触手が、次々と地面に刺さり行く。
まるで天から槍が降りそそぐかのように、強く地面をえぐった。
激しく舞い上がる土煙が、まるで雨の水滴のようにゆっくりと落ちていく。
落ちゆく粒の中を駆け抜けるアリエーヌの体が残像を残す。
打ち付けらる触手を紙一重でかわし疾走する動きは、まるで舞姫。
腕を回すとともにしなやかに回る体。
反り返る体が宙を舞う。
後を追う銀髪が大きく弧を描くと、月光を散らしていった。
細く伸びた足が地面を捕らえると、彼女のミニスカートがまるで花のようにゆっくりと咲き広がった。
だが、その刹那、スカートはしぼむ。
まるで、閉じた傘のようにアリエーヌの後方へと流された。
駆け抜けるアリエーヌの体が風となる。
だが、そんなアリエーヌをあざ笑うかのように、無数の触手が彼女を狙う。
一斉に撃ち落とされるその
びっしりと敷き詰められた触手の先端が、空を瞬く間に覆いつくした。
その数は数千。
走るアリエーヌに身をかわす隙間は残されていなかった。
銀髪の間から白き歯が輝くと、無数の剣撃が白き残影を残し彼女を包む。
勢いをそのままに銀髪が前へと流れていった。
踏み込まれた足が地面をえぐり溝を掘っている。
そんなアリエーヌの上から、切り刻まれた触手が紫の体液をまき散らしながら落ちた。
ミスリルのレイピアについた残り血を、さっと払うアリエーヌ。
鋭い目つきで前方をにらむ。
マジで強いぞ!
騎士養成学校で、同級生にわざと倒れてもらっていた忖度剣技とは思えない強さだ。
いまやアリエーヌの足本だけが、丸くくりぬかれたように地面の土をのぞかせていた。
竹藪のように打ち付けられた触手が、まるで城壁の壁のように彼女を取り囲んでいる。
アリ一匹も通れない。
まさに独房。
だが、にやりと笑うアリエーヌは左手を前にかざした。
そして、目をつぶり大きく息を吸い込んだ。
「炎よ出でよ!」
手のひらから炎が吹き出した。
火柱のごとく炎が渦巻き、アリエーヌを赤く照らし出す。
まるで水流の如くぶつかる炎は、触手の肉を焼け溶かす。
肉を焼く匂いすら燃やす、その業火。
その熱を避けるかのように触手の壁に道ができていた。
姫様! 魔法使えるじゃん!
もうね、小さい炎じゃないよ!
騎士養成学校の昇級試験の時のような、小指の先ほどの小さい炎じゃないよ。これ。
あの時のアリエーヌは、ただのアリエーヌだったけど、今のアリエーヌは朱雀のコスチュームをまとうアリエーヌだからね。
一緒にしてもらっては困るというもの。
でも、魔法の詠唱は幼稚園児用のままですけどね……
……だって、マジュインジャーによって得られた力の中に、知能のアップの効果は無かったもんね。残念。
地中より無数の触手が生え伸びる。
「ここは俺に任せろ!」
グラマディが躍り出る。
パイズリア―が力任せに振りぬかれると、目の前の触手が消し飛んだ。
だが、休むことなく次の触手が伸びてくる。
まさに、息をつく間も与えない。
グラマディの剣撃は、威力こそ大きいのであるが、その大振りゆえに、次の攻撃までに時間が空いた。
しかも、馬鹿みたいに力いっぱい振りぬくものだから、パイズリア―の勢いに体を持っていかれる始末。
勢いを失ったパイズリア―をやっとのことで正面に持ち直し、再度構える。
一体どれだけの時間がかかことやら。
「俺の邪魔をするなぁぁぁぁ!」
上段に構えられたパイズリア―が、グラマディのバカ力によって打ち下ろされた。
空を切り裂くパイズリア―の刃がその軌跡に真空をつくる。
それは、グラマディに襲い掛かっていた触手を巻き込み切り刻む。
パイズリアーの剣先が、地面にめり込むとともに大地を震わした。
轟音とともにパイズリア―の剣圧が地面の上を一直線に駆け抜ける。
あと追うかのように地面が黒く裂けずれる。
だが、その裂け目の向かう先には、魔王【ドゥームズデイエヴァ 】の姿。
パイズリア―の斬撃は魔王にぶつかるとともに、その足の一部を削ぎ落とした。
紫の血を噴き出しながら悲鳴を上げる魔王。
おいおい……一撃で魔王にダメージを与えるとは!
グラマデイ! 強い! 強すぎるぞ!
これなら行けるぞ!
魔王をうちたせるぞ!
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