彼女と僕
バブみ道日丿宮組
お題:不思議な夕飯 制限時間:15分
彼女と僕
自然とぱくぱく口に運べる料理は僕には数少ない。
少食ということもあって、ピザやら、マクドナルドやら、ケンタッキーのようなジャンクフードはとてもじゃないが夕食なんかには食べれない。食べれば、間違いなく次の日に影響がでる。お腹がぐるぐると午前は痛みに襲われるだろう。
ジャンクフードは決して食べれないってことはないが……。
そういうこともあって彼女が作ってきた夕飯をぱくぱくできるのはいつも不思議に思う。
「……ん」
「味噌汁?」
「……ん」
手渡された茶碗に入ってるのは小学校の頃よく見た茶色いお汁。
「……ん」
飲めという催促が出たので口に運ぶ。
身体の奥底からほんわかするような味わいが広がってく。
こうして味噌汁を飲むのは何年ぶりだろうか。
大学の定食についてきたりはするが、あいにくそのメニューを選んだことがない。
それは彼女と大学に入ってから同棲を始めたことが背景としてある。昼は彼女が作るお弁当がほとんどで購入したりすることがない。学食に入ったことはあるが、どれも彼女の料理には勝てないと思う。
「……ん」
彼女は満足そうに微笑んだ。
もう4年もの付き合いだ。会話ができない彼女との意思疎通ははじめは大変だった。彼女も頑張って言葉を作ってみたりしてくれたりはしたが、無理がきて高校時代に倒れてしまった。
それからは『……ん』という意思表示から察することに全力をかけた。
おかげで今では長年付き添った夫婦のように過ごすことができる。
とはいえ、外で喋らないわけにはいかないので、たまに彼女は喋る。
それが僕のためにじゃないのはかなり納得ができないことだが、一緒にいてくれるのだからこれ以上望んじゃいけない。
もう少しで夫婦になるのだから、より一層僕は近づく。誰よりも側に行く。
「……ん」
「おかわりはいらないよ」
宙を舞ってた彼女の手が箸へと戻る。
「……ん」
お互いが笑い、食事に戻る。
これが僕たちの日常だ。
彼女と僕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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