第4部 エピローグ

 賢者を探索していた部隊がオソレ山に到着した時、そこには地面に転がっている聖剣があるだけだった。


【えっと・・・私のせいじゃないわよ!?】


 聖女や魔王によって、聖剣から聞き出した内容によると次元の裂け目が閉じる寸前に賢者が吸い込まれてしまったとのこと。


 慌てる聖女と魔王。

 聖女の力によっても、賢者の行方が分からなくなっていた。


 特に、将軍の取り乱し方は尋常でなかった。

 聖剣エクスカリバーで地面を掘り返そうとする。

 だが、勇者ではない将軍では次元の扉を開けることができない。


 取り乱した将軍は、剣を取り再び虚空斬で次元を切り裂こうとした。


「待て!!待つのじゃ将軍!!落ち着け!!」

「だめ~~また世界が破滅しちゃう!!」


 魔王と聖女が必死で止めようとする。 


「賢者は帰ってくる。あやつなら、何とかするのじゃ。落ち着くのじゃ!!」


 その言葉に、力が抜け座り込む将軍。


「そう・・賢者は・・・帰ってくると言っていた・・」

 頬を涙が伝う。


「そうじゃ、だから早まるでない!」

 魔王が将軍をなだめる。


すると、聖剣が話してきた。


【あの・・・多分あの勇者は生きてると思うわよ? だって、勇者の称号が他に継承された感じは無いから・・・】


 将軍は、空を見上げて涙を流す。


「そうか・・・賢者は無事なんだ・・・よかった・・・」







 賢者は、目を覚ました。

 目に入ったのは、広々とした青空。


 起き上がると、見覚えがあった。

 ここはオソレ山。


 ただ・・・・向こうの方に見えるのはアスファルトの道路。自動車が走って行くのが見える。



「ここは・・・まさか・・・」


 賢者は、立ち上がった。

 向こうの山の上に、鉄塔が見える。

 青空に、飛行機雲が伸びていくのが見える。



 間違いない。

 ここは日本の恐山。


 かつて、転生する前に賢者が生きていた世界。


「困ったな・・・」


 賢者の年齢は15歳。もうすぐ16歳になる。

 向こうの世界では成人だか、日本ではまだ子供。

 しかも、無一文。日本の通貨は全く持ち合わせていない。


「これからどうしよう・・・」

 途方に暮れる賢者であった。







『マイマスター・・・残念な知らせですが・・・』


 ん?なに?


『こちらの世界では、マスターの能力がかなり制限されるようです』


 え・・・マジですか?

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