トヤーマ
険しい山であった。
険しさだけなら、富士山以上であろう。
ここは、トヤーマの立山。
あちこちに氷河が見える。
・・・聖剣・・・ないよね?
『向こうに剣岳と言う頂があるようです』
そちらに行って見ようか?
剣岳は、さらに険しかった。
想像を絶する山。まさに霊峰と言っていいだろう。
『剛脚スキルがレベルMAXになりました』
聖剣・・・ここにも無いよね・・・?
あれ?三大霊山って、ここで最後だったのでは?
『一度下山して、情報を集めることを提案します』
うん、その前にお弁当を食べようか。
山頂で、鱒寿司を食べる。あ・・・おいしい。
押し寿司なんだね。
今度、作ってみよう。
もきゅもきゅ・・・
食べながら考える。
聖剣・・・どこにあるんだろう?
さて・・・どうしようかな。
この先、どこに向かえばいいのだろう?
『他の聖域と呼ばれるところを検索するのはいかがでしょうか?』
仕方がないので、ナガーノ方面に下山することにした。
この展開は、予想してなかったなぁ・・・
――――
「聖女様、おまたせ~!」
トヤーマのウナヅキ温泉で、魔法使いと合流した。
聖女は、これを待っていたのだ。
聖女は国王に対して不信感を感じていた。そのため、魔法使いには王都に残ってもらって、密かに調査をお願いしていた。
調査結果が出るまで、聖女は意図的に時間稼ぎをしていたのであった。
そして、魔法使いから調査が完了したとの連絡を受けた。
その結果を。このウナヅキ温泉で合流して報告してもらうことにしたのだ。
「聖女様・・・調べ終わったんだけど・・・大変なことが分かったんだよ。読んでも、ショック受けないように、気を付けてね?」
「そ・・そんなにひどい結果だったの?」
「うん・・・、ちょっと予想以上にひどい状況だよ」
魔法使いが、聖女に分厚い報告書を手渡す。
聖女は温泉の和室のちゃぶ台の前に座って、お茶を飲みながら報告書を読み始めた。
その報告書を読み始めてすぐに、聖女の表情が青くなりガタガタと震え始めた。
その瞳から、涙が零れ落ちた。
――――
「将軍、こっちです」
「ええい! 私は早く賢者を探しに行きたいんだ。こんなところでぐずぐずしてる暇はない!!」
「聖女様と一緒に探したほうが早いですって」
船でトヤーマにやって来た将軍。あらかじめ魔王から連絡を受けていた魔王の配下に待ち構えられていて、このウナヅキ温泉に無理やり連れてこられたのだ。
将軍は、ものすごく不機嫌である。
早く、賢者を見つけたい一心で焦っている。
「聖女様は、賢者様の行く方角がわかるらしいんですって。一緒に探しましょうよ」
配下が客室の扉を開けると、そこには聖女と魔法使いがいた。
だが・・・
「これはいったいどういう事だ?」
将軍は、部屋の中に入り訝し気に問いただした。
聖女は、畳みの上でうずくまり嗚咽を上げて泣いている。
そこにいた、ロリッ娘魔法使いが挨拶してきた。
「初めましてです。私は王国で魔法使いをやってるものです」
「私は、魔王軍の将軍だ。お初にお目にかかる」
「私・・聖女様に依頼されて、王都で国王の不正について調査していたんですけど・・・」
将軍は、ちゃぶ台に置いてある分厚い書類を手に取って、目を通す。
将軍は、すぐに険しい顔になり・・・・つぶやいた。
「こ・・・これは、あまりにひどいな・・・。いくら国王と言っても、こんなことが許されていいわけがないだろう」
「そうなんですよね・・」
聖女がうずくまって泣きながら、呟く。
「わ・・・私・・・もう、王都に帰らない・・・。も・・もう・・こんなの嫌ぁ・・・」
その報告書に記載されていた内容は・・・聖女に対する、非情な内容。
前勇者に聖女を提供するという約定を皮切りに、想像を絶する国王の悪行の数々が記載されていた。
泣き続ける聖女を、魔法使いと将軍は見つめ続けることしかできなかった。
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