イシーカワ

 カン・・・カン・・・カン・・・


 小気味よい音がする。


 ここはイシーカワのノト。

 野鍛冶の職人さんのところで教えてもらっている。


「昔はなぁ、村に一人ずつ野鍛冶がいたんだ。そして村で使う道具全部を、野鍛冶が作ってたんだ」


 今作っているのは、マキリという包丁。包丁と言うより小刀だ。


「野鍛冶の仕事は、全部オーダーメードだかんな。使う人の手の大きさや、使う場所まで考えて作るんだ」

「それは、すごいです」

「鍬や鋤なら、その畑の土質を考えて作り分けんだ。先を丸くしたり、四角にしたり。厚さを変えたりすんだ」


『野鍛冶スキルがレベルアップしました』『野鍛冶スキルがレベルアップしました』


 野鍛冶と言うものは、奥深い。

 使い人に話を聞いて、その人の体格や使う場所まで見に行って。


 エチゼンで聞いていた通り、とても高度なことをしている。


 カン・・・カン・・・カン・・・


「焼き入れの温度や時間。そのあとの焼き戻しの温度や時間も使う目的によって変えるんだ」

「なるほど・・勉強になります」


 こうして作られた刃物。永切れが良く、丈夫だそうだ。


「あとは、メンテナンスだなぁ。定期的に買った人のところに行って研ぎとかのメンテナンスをするんだ」

「へえ・・・すごいですね」


 次に作るのは、鍬。

 分厚い地金に鋼を合わせ、叩いていく。


「ここの畑は土が硬いから、上部にせにゃあかんからなぁ」

 やはり畑で厚さが違うらしい。


『野鍛冶スキルがレベルアップしました』『野鍛冶スキルがレベルアップしました』


 この職人さんの鍛冶仕事を手伝って、一週間。

 農機具や漁業につかう道具などを作っている。


 鍬や鋤など一通りの農機具の作成を教えてもらった。


『野鍛冶スキルがレベルアップしました』『野鍛冶スキルがレベルMAXになりました』


 

 夕食をいただきながら、職人さんと話した。

「この汁椀って、とても立派ですね」

「この辺りは、漆器が有名だからな。うちも漆器を作る道具なんかも作ることがある」

「へえ。いいですね」


 漆器をじっくり見てみる。赤く輝きを放つ器。

 いつかこういうものを作ってみてもいいかな。


「ところで・・・いままでお世話になりました。そろそろ、行こうかと思います」

「そうかい、この後はどこに行くんだい?」

「聖剣があると言われている、三大霊山の一つの立山に向かいます」


 三大霊山で昇っていないのはあと一つ。きっとそこに聖剣はあるに違いない。


「そうか・・立山は隣のトヤーマだけど、険しい山と聞いているから気を付けるんだよ」

「はい、ありがとうございます」



 次の日の朝。僕は職人さんに見送られて、トヤーマに向かった。

 そこにある聖剣。

 鍛冶スキルだけでなく、野鍛冶スキルも獲得したんだ。

 きっと破壊することができるに違いない。



――――


 そのころの聖女一行。


 イシーカワで有名な・・・全国にも知れ渡っている旅館に泊まっている。


「ここ、本当に料理がおいしいんですね。特に、海の幸。アワビに蟹にノドグロ。

 どれも素敵だわぁ」

「聖女様ぁ・・こんなに豪華な旅館に泊まっていいんですか?」

「大丈夫、大丈夫! お金が足りなくなったら国王に請求すればいいのよ」


 超豪華な旅館。

 聖女は、何泊かして満喫したのであった。

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