バブみ道日丿宮組

お題:昨日の音 制限時間:15分


 ぽとん、ぽとんと、水が落ちる音が聞こえる。

 室内の中でそれがいったいどこにあるのかはわからない。

 正確には位置がわかるが、それを見ることはできないということだ。

「……」

 目隠しに、猿ぐつわをされて、両手両足を縛られ、僕は監禁されてた。うまく身体を動かせないのはおそらく注射された薬品の影響だろう。

 思考に影響がないことを考えると、身体だけを痺れさせる毒……なのだろうか。そこを考えると、医療に関係してる人だろうか。そんな人材がクラスメイトにいただろうか?

 どうして僕なのだろうか。

 平凡で、モブと違いがないーーむしろチビで幼児体型の僕がなぜこんな扱いを受けるのか。

 当然生まれる疑問。

 だが、それは監禁生活が始まると、すぐに犯人によって暴露された。


『かわいい君を独り占めしたいから』


 だそうだ。

 歪んだ愛だ。

 もっと紳士的に恋を進めるという気はないのだろうか。

「……」

 僕も未だに恋らしい恋をしたことはないが、可能性の一つとしてないわけじゃないだろう。話しかけるということも、誘うということも、手紙を書くなどもできたはずだ。

 最終的にたどり着いた答えがこれなのか、もう誘拐することが目的だったのか。

 誘拐犯の思考は読めない。


『こんにちわ。かわいいお姫様』


 吃った声が聞こえると、僕の身体が反応した。

「……っ」

 調教された身体は条件反射で誘拐犯の行為を許してしまう。

 嫌だ、やめてくれという声は出せずに、僕の身体は欲望だけを受け入れる肉の塊となった。

 いっそのこと殺して欲しい。

 身体に入ってくる異物に苦悩しながら、僕は果てた。


『たくさん飲み込んでね』


 そうして僕は理解した。

 水は僕から漏れ出したものなんだとーー。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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