第十七話 魔術と生活魔法と僕
少し騒然となった教会内を静かにさせるために神父様がパンパンと手を叩いた。
「はい、続きを話しますね。レナエルさんが答えてくれた通り、力の神様の力の魔法。これは代表的な自己強化で分かる通り、自分自身の力に作用する魔法ですね。肉体の強化、感覚の強化などですね。自らの感覚のみや自己暗示などで使えるようになる人が多いので、別の国では魔法ではなく気だとか、オーラだとか言うところもあります。魔力を使っていることは間違いないわけですが……」
「その土地の風習というのがありますから仕方ありません」と、神父様は首を振りながら言った。神父様も神様が絡んでるだけあって、あまり認めたくはないみたいだ。
「そして、先程目を輝かせていた方達が一番知りたいことだと思いますが、おとぎ話の魔獣退治や様々な伝承などで必ずと行っていいほどその名前は出てきて、今は貴族様が得意とされている魔術ですね。」
ついにでた魔術! 僕も少しは出来るようになっているはずだと思うけど、今までどうやって使うかわからなかったから、独学でしかない。
たまに父さんが僕がやってることに魔術ってすげーなとか言ってるから、素人目から見たらすごい! 位はあるはずだ。──父さん、というかこの村の人は使えないらしい。
「基本四種の属性に加え光や闇など、その他にも特殊な属性が個人に宿る場合もあると聞きます。各個人が得意な属性を主軸に、力ある言葉で紡ぐ呪文、魔術言語と呼ばれる特殊な文字、それで描かれる魔法陣など、その他色々、様々な方法で様々な現象を起こします、人によって千差万別であり、万能の魔法とも言われます」
なるほど、やっぱり呪文とか魔法陣とかもあるんだ。それに属性か、僕は何が得意な属性かな?って考えてたらアダンくんも気になったのか、神父様に質問した。
「神父様!俺って何が得意なんですか?」
「えっと? アダンくん? 魔術の得意属性がどれかと聴いてるのですか?」
「あったりまえじゃん、馬鹿だなぁ神父様は──」
いきなりそんな聞かれ方して、すぐに分かるなんて当たり前じゃないし、神父様はすぐに分かったから馬鹿じゃないぞアダンくん。って思ってたら隣のアダン父から、本日二発目のげんこつを食らっていた。
アダン父は「すまねぇ、神父様。こいつが馬鹿なんで、許してやってくれ」とムキムキのでかい体を小さくして謝っていた。
「良いのですよ。そこまで怒らないでください。まだ子供なんですから──ね?アダンくん」
やっぱり神父様の細目でちらりと見られると怖いって、今までの経験から神父様は全く怒ってないってことは分かるけどさ──ほら、アダンくん怯えちゃって「ごめんなさい」とか言って、ちょっと泣きそうになってる。
あ、奥から覗いていたシスターが見かねてアダンくんを慰めに出てきた。──アダンくんの機嫌はすぐに治っていた。やっぱり美人さんに慰めてもらうと違うのかな?ちょっと顔赤くしてるし。
神父様はアダンくんの機嫌が直る間とても気まずそうな顔をして黙っていた、自分が慰めてもまた逆効果になると思ったのだろう。
◇◇◇◇
「えー、アダンくんが言っていた得意な属性の調べ方ですが、私にもわかりません。今はその手段は失われたと言われています」
他の子がなぜかと聴いたら、「平和になったからだと言われていますね」と返ってきた。
神父様が言うには大昔、魔王という存在がいて世界は滅亡の危機を何度も迎え、倒しても倒しても復活するという時代が長く続いていたそうだ。
その時代には自分の中に宿る、まだ目覚めていない才能を何らかの方法を使い、見ることが出来て、人々はその力を鍛えることで魔王という、強大な力に対抗することが出来たと伝承が残っているそうだ。
平和になったら人の可能性を狭めないため、新しい可能性を見つけるために神様が消し去ったらしい。
魔術の才能そのものは「魔力を鍛えていって、今日みたいに私の話をよく聴いて、神様のことや魔法のこと色々なことを勉強したら、覚える方もいらっしゃいますよ」とのことだ。このときみんなレナエルちゃんの顔を見たけど、レナエルちゃんは必死に首を振って否定していた。
「大分話がずれましたが、神様は、魔術の神様ではなく、術の神様です。正式には術魔法と言いますが、ほとんどの方は魔術と、それを専門に扱う方を魔術師と言いますね」
だいぶ話がそれて時間がたったので神父様は、今度は質問するのはやめて自分で答えることにしたみたいだ。
「魔術の特徴といえばなんと言っても、その自由さ、使える方は分かると思いますが──」
あれ?神父様が僕をちらっと見たな。そうか、神父様も僕が魔術使ってるって知ってるのか、そりゃそうだ大っぴらに見せてはないけど、別に隠してるわけでもないしな。
「呪文を使った強力な攻撃魔法、魔法陣を使った魔力を込め続けることによる長時間効果のある魔法、熟練ともなると呪文をほとんど唱えなくても発動できるらしいですよ。それになんといっても制限はありますが、イメージと制御次第で次第で細かな動作が可能なことですね」
なるほど、確かに制限はあるけど神父様の言う通り、細かな動作は出来てると思う。それに呪文とかもあるんだよね、少しワクワクしてきたな。
「そして、話は戻りますが一番最初に話した、生活魔法これはどの神様の魔法かわかりますか?」
もちろん分かる。基本四種と言ってたし、僕が使っている魔法そのものこと説明していたから術の神様だろう。
ほら、気を取り直した──というか、もうさっきのことを忘れてるっぽいアダンくんを含めて子供達が「術の神様!!」と、みんなで大きな声で答えてる。
隣のレナエルちゃんだけがボソリと「創造の神様よ」と答えていた。
あれ?
「ごめんなさい、意地悪でしたね。術の神様ではありません」
あ、本当に神父様も違うって言ってる。
「レナエルさんは、分かってたみたいですが、生活魔法は創造の神様の創造魔法になります。生活魔法と魔術には決定的に違うところがあります」
何が違うんだろう?僕が使ってるのはさっきまでの説明からは魔術で間違いないよね?
「生活魔法とは創造の神様が人族が、何処でも生きていけるように授けてくださった魔法です。つまり、魔力を糧に完全にこの世界に創り出す魔法ということですね」
うん、そうだね。魔術もそうなんじゃないのかな?
「魔術は基本四属性も同じであり、生活魔法が生み出すものと似てはいますが、存在できるのはその術の効果中の一瞬もしくは、魔力を繋げている間だけです。水魔術で生み出したものを飲んでも喉の乾きは癒えませんし、土魔術で作ったものは時間が立つと世界の魔力に帰ります。火や風は魔術との違いはわかりにくいですが、おきている法則が違うらしいです。すみませんが詳しくは私にもわかりません」
ん?
「生活魔法を作り給うた神様は創造の神様、大きな括りは創造魔法、この世界を作った創造神様が与えてくだされた慈悲、魔力によって生み出される奇跡の力。どんな力からも影響を受けず、何者も変えることが出来ない。完成された奇跡。それが創造魔法、それが生活魔法です」
んん?
あれ?なにかおかしくない?
僕が使ってる魔術、自分で消さない限り消えないけど?僕の魔術が特殊なのかな?そうだよね?──使ってるの生活魔法のほうじゃないよね?多分違うはず、いや絶対。
だって、生活魔法語ってる時の神父様がトリップしてて怖いだもん。
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