境界線

バブみ道日丿宮組

お題:戦争と姉妹 制限時間:15分


境界線

 生きるということは戦うこと。

 それは姉妹であっても、双子であっても、兄弟であっても起こること。

「ここから先はあたしのエリアだから」

 部屋の真ん中に縄跳びでマーキングする妹。

「そっちの本読めないじゃん」

「あたしのだから、読んじゃ駄目」

 はぁという姉の吐息。

「お母さんにいいつけるからね」

「すぐそうやってお母さんにいうのはいけないと思うんだけどな!」

 ぶんぶんと手を振り回す妹に、再度ため息。

「じゃぁもう勉強教えなくていいんだね? お小遣い減らされてもいいんだね?」

 優しい声色。

「や。それはやだから教えてよ。お姉ちゃんなんだから、無償で教えて」

「じゃぁ、この縄跳びの先行くけど、いいの?」

「そ、それは……ちょっと」

 妹はもぞもぞと動き、ベッドへと腰を下ろす。

「またえっちな本もらってきたの?」

「え、えっと……その……クラスの男子にこういうのがいいって」

 顔を赤らめた妹はカバンから、成人向けマークがついたいかがわしい本を取り出すと、縄跳びの上に投げた。

「お母さんに見つかったら怒られるよ? そんなえっちなこに育てたつもりはないって」

「で、でも、友だちは普通に見てるんだよ? あたしが見ないわけにはいかないじゃない?」

 一息。

「それにお姉ちゃんも見たいよね? こないだ、あたしがお風呂入ってる時見てたよね? ね、ね、ね?」

「……知らないよ」

 顔を背ける。

「知ってるよ。ベッドの上に置いてあった位置が違ってたもの。その前にお母さんが入ってきた形跡なしだし、残るはお姉ちゃんしかいない」

「か、勝手に動いたかもしれないじゃない」

「そんなホラーな展開はないから」

 今度は姉がもぞもぞと動いた。そして本に手をつける。

「だいたいあなたがもらってくる本は歪んでるのよ。どうしてこう双子ものばかりもらってくるの? 男子に気があるんじゃないの?」

「それは知らない。くれるっていうからもらっただけ。そういうへんな感情のやりとりはしてないよ」

 うーんと姉は唸り声をあげた。

「こっちがそう思ってなくても相手が思ってるってことはあるんだからね」

 これは没収しますといって、姉は自分のエリアにある本棚へとしまう。

「これで縄跳びがあったら、そっちも見れなくなったね」

「ひ、ひどい! 横暴だ!」

「だったら、こんな境界線いらないよね?」

 縄跳びを手に取り、隅へと投げ捨てる。

「そ、そうかもね。あ、あははは」

 笑いごとじゃないんだよなと姉は思いつつも、双子の妹に生まれてる性の感情に共感したのであった。

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境界線 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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