異世界階段

バブみ道日丿宮組

お題:とてつもない階段 制限時間:15分


異世界階段

「今何時頃だろう?」

「うーん、どうでしょうか。時計もありませんし、窓もありませんし、見える場所には階段しかありません。そんな状況下では正確な時間というのは見えてきませんね」

「あなたはいつでも真面目なんだね。そこがいいところでもあるけれど、悪いところでもあるよ」

「ありがとう?」

「異世界なんて夢のように思ってたけれど、螺旋階段がいつまでも続く場所も異世界と思うと嫌になっちゃう。夢なら覚めて欲しい」

「かれこれ100階以上は登りましたからね」

「うわぁそんなにあった?」

「体感なので的確ではないです。主に住んでるマンションを毎日階段で過ごしてるのでそれに当てはめて見ただけです」

「……毎日5階も登り降りしてるんだ」

「はい、そうです」

「だから、あんなにも体育で目立つんだね。帰宅部なのに、メガネなのに、オタクっぽいのにって言われてるのに」

「誹謗中傷は別にいいですが、現実を見たほうがいいですよ。あなたの体力はもうすでに限界ギリギリです。私一人だけなら、あと3時間は登っていられますがあなたは10分も持たないでしょうね」

「わかってる。それは一番自分がわかってるよ。でもさ、降りるってわけにもいかないじゃん? だったら、登るしかないでしょ?」

「なら、次の休憩ポイントで少し休みましょう。あと30階ほど登ればおそらくあるはずです」

「前のポイントからもうそんなに登ったのかぁ……はぁ」

「この階段を作った人は休憩ポイントを設けてるあたり、死んでは欲しくないのでしょうね。給水ポイントにトイレが5階おきにありますし」

「どうせなら出口も置いて欲しいよ。ってかどんだけここ地下なの?」

「地下でない可能性もありますよ。地上を超えて、宇宙まで連なる塔」

「あんま想像したくない内容だね、それ。上いったら空気なくなるじゃん」

「さっきも言いましたが、死んでほしくないってことを考えるにそういった心配はないと思います」

「そっか……そうかもね。はぁ……普通の生活をただ普通に暮らしたかっただけなのになぁ」

「異世界に行く人はみな同じことを思うでしょうね」

「それにしたって、階段登るだけってのはないでしょ?」

「そうかもしれませんね」

「はぁ……登ろっか。階段で休むのは休みのうちに入らないし」

「はい、行きましょう」

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異世界階段 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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