彼女と僕

バブみ道日丿宮組

お題:あいつと関係 制限時間:15分


彼女と僕

 夢を見るのは誰にでもできることで、いつからか夢はみなくなる。

 それは天上に近づく自分自身の限界値が見えてきたからか、周りの人間が優秀だったからか。

 少なくとも僕は、あいつが側にいたからひねくれてしまった。

「……ご飯できてる?」

「おはよう。できてるよ」

 眠気いっぱいの瞳であくびをしたあいつであるこいつは、彼女だ。高校からの付き合いで大学になって同棲をはじめた。

 ちなみに親同士認めあった。いわばもう結婚相手でもある。

 とはいえど、僕はあまり好きじゃない。

「……パン? ご飯が良かった」

 テーブルにつくと彼女は不満を漏らす。

「朝ごはん代わりに作ってくれるならそうしてほしいな」

「……うん。無理」

 食パンにかじるつく姿は小動物。これで意識がビシッと覚めてもこの低テンションだ。

「ほら、きちんと服着て」

 半脱ぎ状態の服を整えられると、姿だけはりっぱな大学生。自分も同じ大学生なのだが、彼女みたいにパッとした容姿は持たない。

 よくて中学生ぐらいだろうか。

 私服姿の彼女は幼く見えても、きちんと大学生として周りからは見られてる。どうしてそんな状態に陥ってるのか、それはおそらく自分の成長が悪いからだろう。

 小学生と、中学生が年相応の成長具合であれば、中学生の方が大人に見えることだろう。それと同じことが起こってるだけに過ぎない。

 つまりは、僕が小さく見えて、彼女が大きく見られてるということだ。

「……おしっこ」

「漏らさないでね」

 ぽっぽっぽっぽと小走りでトイレへと彼女は向かった。

 残されたのは空っぽになったお皿。

 僕は静かにそれを自動洗浄機の中に入れると、自分のご飯を食べ始める。

 数分後。

「おはよう」

 目をぱっちりと開けた彼女が戻ってきた。

「髪の毛結んで」

 そして要望を口にする。

「そろそろ自分でできるようになってくれないかな」

「ん、そのうち」

 テーブルの隣席に腰を下ろすと、背中をこちらに向ける。

 長い黒髪がさらりとその後に続く。

 高校から伸ばしてる髪はとてもきれいだ。僕とは比べられないほどの、純黒さを秘めてる。

「はやくー」

「今日はツインテールにする?」

「任せる」

 いつものやりとりだ。

 大体僕が好きな髪型を彼女はする。いっそのこと、好きな髪の量にもなってくれないかと思ったりしなかったりはする。だって、短ければ、その分時間を取られないから。

 でも、彼女の髪を触るのは好きだ。

 だからこれでいいのだ。

「今日体育あるから」

「ちゃんと運動着用意してあるよ。一緒にできるのだといいね」

「うん」

 同じ大学なら、同じ講義を持つこともある。

 さすがに学科が違うからいつも同じではないが。

「これでいいかな。ちゃんと鏡で見てね」

「大丈夫。これでいい」

 彼女はそういって鏡を見ない。僕を信じてくれてる。それは大変うれしいことだが、ちゃんと見るべきものは見てほしいと思ったりする。

「行こう?」

「これ片付けたらね」

 そうして今日も動き始める。

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彼女と僕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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