閑話休題3: ほんとにラノベを読んでこなかったのか?

(更新サボっていてすみません。理由は色々あるんです。しかし読んではいます。そのうち再開するので気長にお待ちいただけると幸いです。)




 ラノベなんてあんまり読んだことがない、と言っていたのだが、よくよく思い出すと、大半を手放しただけで、実はちょいちょい読んでいた。


 アニメのノベライズや小説ドラゴンクエストを除くと、初めて手を出したのは榎木洋子先生の『月の人魚姫』という角川ビーンズ創刊当初の作品だった。

 本屋で何気なく手に取ったら、表紙がとにかく美しかったのだ。まだCG塗りが出だしの頃、CGの良さを活かしつつ水彩のふわっとしたところを残したような、落ち着いた暗いブルー。

 性別を選択できるという設定の、SF風の、少しばかりBL風味漂う作品だった。そして、よくよく思い出すと主人公は男になりたいのに見た目が超絶美少女という不幸設定だった。

 そんな設定はすっかり忘れて去っていたが、当時ローティーンだった私は、この作品に性癖を変えられてしまった可能性がある……のかもしれない。個人的に性別の不一致に関心があったのは間違いないが、その話は脇に置いておく。

 二巻も出て、続きをずっと待ち望んでいたけれども、それきりだった。今もこの作品は実家にある。


 榎木洋子先生のほかの作品にも手を出した。コバルトの『緑のアルダ』シリーズは占い師が主人公の、非西洋圏の旅物語だった。

 別シリーズと世界観を共有していて、その元ネタを知らないと楽しめない部分が多く、あまりハマれなかった。だけれども、話せる狼と無口な剣士プラス王女との旅物語という要素には、何がしかの影響を受けていそうだ。

 ほかにビーンズ文庫で出された英国風の作品『ダークローズ・プリンセス』も読んだが、2巻以降が出ず残念だった。


 角川ビーンズはページも含めた全体的なデザインが好みで、その後も西洋ファンタジーものを少しずつ集めていた。

 第一回の受賞作、喜多みどり先生の『天空の剣』。宮城とおこ先生の繊細な淡いアナログ塗りの表紙が美しく、手に取った。

 ギリシアを思わせる作品舞台とシリアスな兄妹関係の物語が非常に好みだった。続編シリーズも悪くはなかったが、それよりも作者の別シリーズの『龍の王女』はシリアスかつ、なかなかにハードな恋愛ファンタジーで、いずれどこかで語りたい、未だに心に残る傑作だ。


 当時は何故か西洋といえばギリシアだと思っていて、もろに古代ギリシアが舞台の『黄金のアイオーニア』と続巻『緑翠のロクサーヌ』も読んだ。

 こちらは恋愛が主軸だが、政治的な部分もあり、みんな死んでしまうという悲劇作品。あのアレクサンドロス大王が、脇役ではあるが、個性的で自由奔放な少年として登場し恋愛するところが最大の魅力だった。


 この作品の表紙が好みだったので、同じ凱王安也子さん挿画のコバルト作品『ガイユの書』シリーズも少し手に取ったが、刊行が遅く二巻ほどでやめてしまった。退廃的な中世西洋世界の謎めいたファンタジーで、心に引っかかっていたので先日某フリマサイトで注文してしまった。


 中学時代、弟が友人からラノベを教わってハマり出し、ハルヒやシャナ、狼と香辛料、そして、あの『トリニティ・ブラッド』を読んでいた。

 この作品は私にとって衝撃で、高校で世界史をやっていると、読んでいて『わかる』話がポンポン出てくるのだ。

 ここでこの作品について語ると文字数過多になるので割愛するが、年が経つにつれ、あれほどの重厚な作品はないと思うようになってきた。もちろん作品には粗もあるのだが、政治、地理、歴史、あらゆる知識を動員して書かれた硬派な世界、そして愛着の湧く血の通ったキャラクター達は、作者の早逝で完結しなかったとはいえ、色褪せることなく輝き続けている。

 高すぎて越えられない憧れだけれども、吉田直から強く影響を受けたのだと、系譜を名乗ってみたいものだと、ほんのり思っていたりする。


 栗原ちひろ先生の『オペラ』シリーズに手を出したのも、絵師さんが同じTHORES柴本先生だったからだ。硬派なファンタジーが好みの私にとって、この独特の雰囲気をもった作品は直球だった。とくに魔法に関する設定のユニークさ、そして謎の人物『詩人』の魅力、主人公との軽妙な掛け合い。自分が掛け合いを書くときに下敷きとしているのは、この作品ではないかと思う。

 しかし高校生にもなると多少目が肥えてきて、どうも編集さんの意向で恋愛要素を入れさせられているのでは? とか、敵キャラがいまいち掴めないと思ったあたりで読むのをやめてしまった。そのことを今、とても後悔していて、電子もいいが、もしも美品で手に入るなら揃えたいとコソコソ探し回っているところだ。


 電撃文庫を自分で買ったのは、アニメ化を機に『バッカーノ!』を買った時だった。某アニメグッズ店に通ってはハガレンやDグレやARIAなどのグッズを漁っていたのだが、店の情報誌の表紙を飾っていたアニメ化告知イラスト……古き良きアメリカの香りが漂う、岸田隆宏さんのシャープな絵柄に強烈に惹かれ、読み始めた。

 中身はまあ軽いのだが、初めて読むバイオレンス溢れる群像劇には衝撃を受けた。特に1-4巻あたりは他のどの作家にも真似できないだろう。しかし何といっても私は、フィーロとエニスの超絶焦ったい関係に悶絶した。あの成田良悟からラブコメ要素の影響を受けたと抜かす人間はあまりいないと思うのだが、私はその数少ない一人である。


 ラノベから足を洗ったのは大学に入った頃だろうか。

 パターンがわかってきてしまったし、森見登美彦という破壊的な才能と衝突してしまったせいで、他のものを読む必要がなくなってしまったのだ。


 とはいえ、就職してラノベの担当もやっていた時は、アニメ化を機に『神様のいない日曜日』を手に取ったり、なろうで『魔法科高校』をつまんだり、先輩のすすめで『氷菓』シリーズにハマったり(ラノベではないか?)していた。新潮NEXが出た時は階段島シリーズに手を伸ばしたりもした。


 ラノベは、キャラが第一、そして『それっぽい』世界観と雰囲気が大事なのであって、ヘビーな児童書や頭の狂った文芸作品を読んでしまうと、やっぱりなんだか物足りなくて、ずっと飽きずに読み続けるのは難しいと常々思っている。


 しかし時折、その雰囲気が強烈に懐かしくなってしまうのであって……だからこそ私は、どう見てもラノベにしか見えない『エスメラルダ』や『白桜』を書いているのだ。ずっとこんな本を読みたかったけど見つからないし、探すのも億劫だから、と。


P.S.

十二国記のことを書き忘れていました。しかしあれは、私の中では全くライトではないのです。と、言い訳しておきます。

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ラノベ語り・電撃受賞作読破への道 陶守 美幸 @miyukisuemori

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