Cut.15 〝吸血鬼たちの夜〈Ⅳ〉〟


最も古き血First-Blood〟、凱旋者ゲオルギウス


熾天博ボナペントゥラ狩猟者プラキドゥス聖骸王イシュトヴァーン告白者マクシモスと合わせて五人、最優の血を継ぐ第一世代。


戦闘を好まない熾天博トゥーラと、結局戦闘には至らなかった狩猟者プラキドゥス、立ち合いに現れた聖骸王イシュトヴァーンやトゥーラが一連の事件の背後にいると想定していた告白者マクシモスと違ってシメオンにはまるで面識も伝聞もない相手、だったはずだったのだが。


まさか図書館で出会い友人になっていた彼女がそうだったとは。



もっともシメオンが気付かないのも当然で、ゲオルギウスの英名はジョージであってヨシュアから転じたジョルジュではなく、よってジョッシュという愛称からゲオルギウスを連想するのは不可能に近い。


吸血鬼たちは永い歴史の中で本名を捨てて通称を得ている。


現代においてこそ英名を用いているが、魔女狩りの時代、古くは宗教組織としての側面を持っていた白杭ホワイトスティクスへの当てつけから彼らが聖人の名を冠していたことなど勿論シメオンが知るはずもなく。


失読症ディスレクシアである凱旋者ゲオルギウスが英名として本来は関連のないジョルジュを的外れにも用いている事など理解する由もなかった。



とはいえ。


戦況は一変した。

もとよりシメオンが最もよく知る最も古き血First-Bloodはトゥーラその人である。

基準が彼女なのだからの強さを低く認識していたことは否めない。



だがそれを差し引いても、凱旋者ゲオルギウスの戦闘力は理解を超えていた。


瞬く間に、それこそ難易度を最低まで落としたアクションゲームのノリで餓鬼たちは駆逐されていく。

危うげなく、ですらなかった。


鎧袖一触、どころか触れる事すらない。

ただ悠然と歩き、時折思い出したように手を振るだけで餓鬼の群れは滅びてゆく。



不可視の壁、業火、溶解する建築物、吹雪。

魔法のように移り変わり異なる顔を見せる、凱旋者ゲオルギウスの血祷。


一体いかなる進化を遂げればこうも多様な現象を引き起こすに至るのか。

シメオンにはまるで想像がつかなかった。


あるいは複数の血祷を有するのかとも疑うが、ケヴィンは彼女シメオンの独白に否定を返した。



「——あれがどういう代物なのか、俺にもわからないが。

 血祷は一人に一つ、それは大原則だ。

 使い分けているという風でもない、というか良くわからないけど」



「……ケヴィン、もしかしてジョッシュの心読んでる?」



「いやだって気になるじゃないか。

 まあ心を読んですらよくわからないというか。

 本人も良くわかってない節があるなあれは、無茶苦茶過ぎる。

 というかきみも気安いな、相手はあの凱旋者ゲオルギウスさまだぞ?」



凱旋者ゲオルギウスの登場直後はそれこそプロ野球選手に遭遇した野球少年のような興奮状態テンションだったケヴィンも今は落ち着いている。

……いやよくよく見ればまだ興奮は抜けきっていないようにも見えるのだが。



「きみだって聖骸王イシュトヴァーンの孫でしょうに……。

 そんなに興奮するってどういうこと、ファンか何か?」



「き、きみな。

 彼女は白杭ホワイトスティクスとの闘いが最も苛烈だった時代、夜族の先陣を切って戦い続けた最強の吸血鬼なんだぞ?!

 いやもちろんお爺様の事は尊敬しているが、こう、種類が違うというか。

竜を討つものゲオルギウス〟の名を聞いて興奮しないきみの方がおかしい!

 ましてその戦いを特等席で見ているんだぞ今!!?」



思ったよりミーハーだなあ、とやや呆れる。

というか最強の吸血鬼って狩猟者プラキドゥスじゃなかったのだろうか。

……いやまあ、あれは憧れより先におそれられる類ではあろうけれど。


まあ、わからないではない。

彼女の強さは圧倒的なのだ。

しかも派手。


威風堂々とした立ち姿にあの派手な血祷。

外見も美人だが美しさよりも凛々しさ雄々しさの方が先に立つ。



「というかぼくは孫だがきみは熾天博ボナペントゥラさまの子だろう。

 血統で言ったらきみの方が上だぞ、なんだ今の皮肉か何かか?」



「違います。

 というかほんとに僕の心読んでないんだね」



「読まないと言ったろう!

 まあ皮肉じゃないならいい。

 にしても凄い」



まあ、言いたいことはわかる。

そしてごめんケヴィン、子どころか同格なんだほんとうは。

と内心で手を合わせて頭を下げる。


読まれていないならこればかりは自分から言うわけにもいかないが。



そんな益体もない雑談を2人がしている間に凱旋者ゲオルギウスはドーム中央の餓鬼の群れを一掃していた。


ちょちょい、と手招きする凱旋者ゲオルギウスを見てケヴィンが例の速度でカッ飛んでいく、飼い主に呼ばれた犬みたいだ、とシメオンは思いながらその後を追う。


やや遅れて追いつくとケヴィンは直立不動で凱旋者ゲオルギウスに頷いて見せていた。

何を話していたんだか。



「——シオン。

 久しぶりだな、息災か?」



「はい。

 ジョッ……、凱旋者ゲオルギウスさまはお元気そうで」



さすがに失礼かと思い言い直すと凱旋者ジョッシュは笑顔で手を振った。



「構わん、堅苦しいのは無しだ。

 私とおまえは友人だと言ったろう?

 だがよもや熾天博ボナペントゥラの子とはな。

 同族ではないかとうっすら感じてはいたが」



「ぼくもびっくりです。

 まさかジョッシュが最も古き血First-Bloodだったなんて」



視線が痛い。

ケヴィンが睨んでいる気がする。

察知・感知の血祷などなくてもわかる。


これはうざい。



「——ともあれまずは残敵の掃討だな。

 そちらの、聖骸王イシュトヴァーンの孫は敵の位置がわかるそうだが」



「はい、ケヴィンの血祷はすごいですよ。

 敵の位置は彼に任せれば正確に把握できると思います」



「そうか。

 では案内を頼む。

 熾天博ボナペントゥラから一匹も残すなと言われているからな」



「はい! こちらです!!」



頼りにされたのがうれしかったのかケヴィンはスキップでもしそうな勢いで頷く。



結論から言えば後はもうあっという間だった。

奇襲や搦め手は相応に苦手だと言う凱旋者ゲオルギウスだったが、張り切るまでもなくケヴィンの血祷はこういう場面では滅法強い。




約20分、それが残敵掃討に要した時間だった。





**************************************





ドームでの戦闘から数時間後。

市内のとある建物の会議室が井縄いづな製薬の名義で貸し切られた。


無論、その背景にはトゥーラ・フェテレイネンの存在がある。

当初もっと広い施設を貸し切るんだとトゥーラは最後まで駄々をこねたのだが。

井縄いづな孝之たかゆきに「無駄だからダメです」とダメ出しされた一幕もあった。


さておき。


会議室の円卓にはそのトゥーラが座っている。

すぐ右横にはシメオン。

左側にやや距離を置いてスティーヴン・K・ロングフェローこと聖骸王イシュトヴァーン


ケヴィンはトゥーラにNGを出されて締め出されている。

シオメンが例の似顔絵、ミルというらしい女の報告をした際にうっかりその血祷について言及したせいである。


何のための集まりかは言うまでもない。


熾天博ボナペントゥラ聖骸王イシュトヴァーン

その直系であるシメオンとケヴィンの決闘に横入りしてきた何者かに対しての対策会議である。


神経質にトゥーラが机の上を指で叩いている。

対して聖骸王イシュトヴァーンはリラックスムードだ。


一通りケヴィンの血祷に関してトゥーラが苦情を申し入れたが既に決着していた。

というかトゥーラが一方的に聞き流されただけともいう。



シメオンにしてみると息が詰まる空気はややあって解決した。

凱旋者ゲオルギウスが供の者を連れて入室してきたからだ。


黒と白で構成された品のいい、赤の刺し色の鮮やかなワンピース姿の少女。

のように見える謎の人物、体つきからは女装した男子にも見える。

年頃はシメオンと大差ないように見え、身長もほとんど変わらない。



凱旋者ゲオルギウスは気さくにシオンに手を振ってからその横に距離を置いて座る。


凱旋者ゲオルギウスに同伴していた最後の人物がトゥーラの対面へ。


ちょうど熾天博ボナペントゥラ聖骸王イシュトヴァーン凱旋者ゲオルギウスと最後の人物で円卓をきれいに4分割する配置。



「じゃあ、はじめるわよ。

 一応聞くけどあんたたちの差し金じゃないのよね?」



トゥーラが険のある声でそう口火を切った。

聖骸王イシュトヴァーンは黙って肩をすくめ、凱旋者ゲオルギウスは苦笑しながら首を横に振る。

最後の人物は椅子に小奇麗に座ったまま微動だにせず表情も変えない。


まるで人形のようだとシメオンは思った。

というかいったい誰なのだろうか。

配置からして〝最も古き血First-Blood〟と同格の扱いを受けているようだが。


と、そこまで考えて思い至る。



「——狩猟者プラキドゥスさんって女の子だったんですか?!」



小声でトゥーラに尋ねたつもりだったが、すぐにシメオンは自分の失策に気づいた。

広くもない室内、ろくな会話もなく場にいるのは全員が吸血鬼である。



囁いたつもりの声は全員に届いていたのだろう。

聖骸王イシュトヴァーンは目を丸くし、トゥーラは渋い顔になる。

凱旋者ゲオルギウスは肩を揺らして笑いをこらえるように口元を抑えた。


最後の一人は相変わらず微動だにしない無表情。



「……吸血鬼われわれ呼吸いきを必要としない。

 だが今もってわれわれには肺があり息をする、なぜだと思うかね?」



そう問うたのは聖骸王イシュトヴァーン

シメオンはその問いかけが自分に向けられたのだと気づいて沈黙。

数秒の間をおいてから自分の考えを述べた。



「声を出すため、会話をするため、ですか?」



「その通り。

 その為だけに我々は肺を持ち、本来必要ないはずの息をしている。

 ——では心から対話を必要としない吸血鬼がいたらどうかね?」



聖骸王イシュトヴァーンの応答にシメオンは思案する。

もしそんな吸血鬼がいれば肺はなくなる、のだろうか?




「会話どころか性差すらそうだな。

 最古の最も古き血First-Bloodすら性別などという、吸血鬼われわれには不要なはずの人間性ぞくせいを失わずにいる。


 声もまたそうだ、だが何事にも例外はあるのさ。

 声も性別も棄ててただ戦い殺すためにその身体構造を特化させるに至ったもの。


 真正の怪物。

 ——それがそこにいる狩猟者プラキドゥス



あっけらかんと答えを示したのは凱旋者ゲオルギウスだった。



「まあ流石に人間のカタチまでは損なっていないけどね。

 ちなみに服と化粧は私が用意したしさせた、さすがに室内にいつもの格好で入って来るのは礼儀も何もなかろうとね。

 ああ、ちなみに風呂にも入らせたよ」



「いつも思うのだが凱旋者きみも趣味人というか畏れ知らずというか。

 狩猟者プラキドゥスと風呂に入ろうなどとはまるで正気の沙汰ではないな」



「ふふ、何を言う聖骸王イシュトヴァーン

 これでいて狩猟者プラキドゥスは風呂を嫌がったりしないのだ。

 私が髪を洗ってやるときなど表情は変わらないが割と気持ちよさそうに、」



「いや、とりあえず本題に戻すから。

 ようはここにいる誰も今回の件の黒幕じゃないってことね?」



「しかし眉がないというのはどうなんだろうな。

 化粧のノリは良いからいいんだけど」



「話戻すって言ってんでしょ?!」



軽く切れ気味にトゥーラが机をたたくとさすがに凱旋者ゲオルギウスも黙った。




「——まあ、我々ではないとなると消去法的に残るは告白者マクシモスになるわけだが」



眉間を指で揉みながら聖骸王イシュトヴァーンが言葉を継ぐ。

だが、熾天博ボナペントゥラ凱旋者ゲオルギウスは、



「違うでしょ」「違うだろうな」



即座に否定した。



「……えっと?」



おずおずとシメオンが声を上げる、その結論に至った過程がまるで見えない。




告白者マクシモス戦闘狂ウォーモンガーだけど馬鹿じゃない」



「というか尊大に見えて割と小心者チキンだな、どっちかって言うと」



聖骸王わたし熾天博ボナペントゥラがいかに戦闘向きではないにせよ、わざわざ同時に喧嘩を売るような真似はするまいよ」



狩猟者プラキドゥスを除く三者が口々にそう言い募った。

シメオンはうむむ、と眉を寄せる。


それこそ付き合いは数百年レベルであろう彼らがそう言うのならそうなのだろうか。

狩猟者プラキドゥスも特に異論はないのか、はたまた実は聞いていないのかはわからないが無表情のまま微動だにしない。

息をしているのかすら怪しい、というか先の話通りなら呼吸いきはしていないのか。

それで人形めいているのか、などとシメオンは納得する。



「じゃあ結局、こいつは何者なの?」



疲れたようにトゥーラはそう言いながら切り取られたページを卓上に放つ。

もちろん例の、ケヴィンが描いた似顔絵だ。

聖骸王イシュトヴァーンはすでに凱旋者ゲオルギウスを待っている間に目を通している。

シメオンは卓の中央に滑って行ったそれをそっと凱旋者ゲオルギウスの方へずらす。


凱旋者ゲオルギウスはふむ?と息を吐きながらしばしそれを眺めていたが、心当たりはなかったのか狩猟者プラキドゥスの方へ。



「というかドームになんか手がかりになりそうなものなかったの?」



「なかったよ。

 コンテナについては調査させているが海外国籍の船舶から半年以上前に盗難にあっているようだし、そこから追うのは難しいだろう。

 あの吸血鬼が生きていれば探る手もあったのだろうが」



「なんで全部始末したわけ……?」



「一匹も残すなと言ったのはきみだろうに」



熾天博トゥーラ聖骸王イシュトヴァーンの会話を聞きながらシメオンは狩猟者プラキドゥスを見守っていた。


何か思うところがあったのかはじめて狩猟者プラキドゥスが反応らしい反応を示す。

凱旋者ゲオルギウスは付き合いが長いせいかすぐにそれに気づき、手帳を取り出し万年筆と一緒に彼女?に渡した。


狩猟者プラキドゥスは案外と器用な手つきで何かをさっと書き記した。

覗き込む凱旋者ゲオルギウス、だがその彼女を見ながらシメオンは首を傾げた。




「——読めんな。

 シオン頼む」



ですよね、と苦笑しながら歩み寄ってのぞき込む。




読めない。

というかそもそも日本語ではなかった。

流暢な筆記体らしき文字は文字であることはわかっても何語かすらわからない。



「——トゥーラ、ちょっと」



「ん?」



狩猟者プラキドゥスに黙礼してから手帳を取り上げてトゥーラに渡す。


一瞥。



「はぁ? ちょっと狩猟者プラキドゥス、どういうこと」



「何と言ってるのかね」



「『こいつなら私がもう殺した』って」




筆談を通して狩猟者プラキドゥスが決闘を陰から見守っていた事、コンテナを投下した飛行船をすぐさま追撃したこと、仕掛け人らしい吸血鬼と交戦しこれを倒したことが判明するや、場には弛緩した空気が満ちシメオンは困惑した。



「なによもー、全部終わってんじゃない」



「まあ解決してよかったではないか」



「久し振りに狩猟者プラキドゥスを着替えさせたからわたしは満足だがな」



熾天博ボナペントゥラ聖骸王イシュトヴァーン凱旋者ゲオルギウス

三者三様の態度ではあったが全員が先までの多かれ少なかれまとっていた緊迫の気配を消して完全にリラックスしていた。


シメオンは再び困惑する。



「終わった、って。

 終わったんですか?」



「ほかならぬ狩猟者プラキドゥスと言うなら、

 それが生き延びている可能性はないよ」



「炎の血祷を使ったって言うなら生還するような裏技もないだろうしね」



「そうだな」



あっさりと三人はそう結論した。

聖骸王イシュトヴァーン凱旋者ゲオルギウスはともかく。

トゥーラが可能性について追及しない事実にシメオンはぞっとする。



トゥーラの性格ならそれでもなお生還・生存の可能性について論じるだろう。

常の状況なら確実にそうしている。

長くはなくとも短くはない付き合いの中で彼女の性格はわかっているつもりだった。



だが。

狩猟者プラキドゥスというその宣言ことばだけでその可能性を捨てた。


あのトゥーラ・フェテレイネンがである。



その事実に今頃になって狩猟者プラキドゥスが真正の怪物だという凱旋者ゲオルギウスの言葉が腑に落ちた。


改めて考えてみればあの戦いぶりをみせた凱旋者ゲオルギウスをしてと言わしめ、トゥーラに敵対者の生存がと断定させる吸血鬼とはいかほどのものなのか。



それがどれほどの重みを持つのか。

今更ながらシメオン・フェテレイネンは実感としてそれを理解する。



まるで正気の沙汰ではない。


あの夜、唐突に詰め寄られて冷静に害意はなかったからと、話し合いで対応した自分がいかに危険な橋を渡っていたのか思い知らされた。


と、気づけば目前にその怪物プラキドゥスがいた。

しなくてもいい呼吸が止まり、背筋が凍って手足が硬直する。


手が伸ばされる。

青白い手がシメオンの上着の内に侵入してきて別の意味で悲鳴を上げそうになった。



「ちょ、プラキドゥスさん?!」



なんだなんだと暢気な態度でもつれ合う2人を覗き込む熾天博ボナペントゥラ聖骸王イシュトヴァーン凱旋者ゲオルギウス



生きた心地がしないとはこのことだ。

拒むのも恐ろしく直立不動でされるままに停止。

しばらくして狩猟者プラキドゥスの手が止まる。


恐る恐る薄目を開けると、彼女かいぶつは見覚えのある硬貨コインを眺めていた。


ややあって、それがトゥーラに加工してもらいペンダントとして自分が下げていたものだと気づいた。


それからすぐ、狩猟者プラキドゥスは何かに満足した気配で硬貨コインをシメオンの懐に戻し、上着のボタンを締めなおしてくれた。


ただの確認だったらしいと安堵すると同時、なぜ身に着けているのがわかったのか疑問に思う。

狩猟者プラキドゥスの血祷もよくわからないし、ケヴィンのようななんらかの感知が働いたのかもしれない。



それで、今度こそ最も古き血First-Bloodたちとシメオンの会合は終わった。





**************************************





各々が夜の街に散るなか、シメオンはコンビニに寄って久々に冷凍たこ焼きでも買おうかと思い、手首に振動を感じて視線を落とした。



スマートウォッチに通知がある、

メール着信、スマホを取り出す、ケヴィンからだった。



なんだよもう、と気怠くメールフォルダを開く。


表示された画像に絶句する。

似顔絵のあの女の姿がそこにあった、



あの女を見つけた。



ただそれだけがケヴィンからのメールの全文。



























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