第9話(終わり)

「あれからどうなりましたか?桜ちゃんの様子」


昼休み、俺は生徒会の2人に桜の様子を伝えるため昼飯を持ってやってきた


「あの後、桜から兄弟みんなの笑顔写真送られてきてるよ、ほら」

俺は秋菜にスマホを渡した

「わぁ!桜ちゃんのお姉さんたち可愛い!ほら先輩もみてください!」

秋菜は先輩にも桜の送ってきた写真を見せていた


これは薄々気づいていたのだが

先輩はともかく、元気で清楚で優しくて可愛い秋菜、なんでモテないんだろう?

「先輩はともかく、元気で清楚で優しくて可愛い秋菜、なんでモテないんだろう?」



「「え?」」


微笑ましく写真を見ていた二人は目を点にしてこちらを見ていた

「どうしました先輩?」

「どどど、どうしたもこうしたもごろーくん、きみは何を口走ってる!」

「へ?俺なにかしちゃいましたか?ん?秋菜、どうした顔まっかだぞ?」

秋菜は顔を真っ赤にし涙目になっていた。


「いっ、五六先輩の……ばか」


頭の中は【?】だらけでどうにもよく追いついていない

「………はぁ、ごろーくん、君はさっき言ったこと忘れたのかね?」

「なにか言いました?」

「んんっん、【先輩はともかく、元気で清楚で優しくて可愛い秋菜、なんでモテないんだろう?】君はそう言ってた」

「お、俺、心の中で思ったこと言ってたのか!」

「ようやく気づきましたか、へっぽこ先輩」

慌てた俺を見ながら嘆息して席に着く秋菜

「私も確かにごろーくんと同じ考えを持っていた、アッキー、そろそろ私の耳にも君のモテモテな噂を聞きたい」

先輩がそう言うと秋菜はものすごい勢いで首を振り

「ダメです!いくら仲のいい先輩たちには言いません!私なんてモテませんから!」


「じゃあこうしよう、アッキー、きみはごろーくんと付き合って見てくれ」



「「はぁ!?」」


「どど!どうしてですか!?」

廊下に響き渡る秋菜の声

「いやぁ、誰も本気で付き合えと入ってないさ、もし仮にアッキーに彼氏がいたらどうなるのか思っていただけさ……それと」

ニヤリと笑い先輩がこちらを向き

「もし仮にゴローくんに彼女が出来たら妹ちゃんたちどういう反応するのか楽しみでね……ククッ」


少し前にどこかで聞いたセリフだな

「だからといって俺は秋菜とは付き合いませんよ!」

俺がそう言うと秋菜が小さい声で「そんな…」と言った気がした




放課後、俺と秋菜は一緒に下校した

「せ、五六先輩は私と仮に!仮にですよ、仮に付き合うとしたらどう思います?」

赤面して秋菜は質問してきた。

「仮にか、そうだな………今日みたいに普通に下校すると思う」

「そ、それはそうですが、えと……て、手とか繋いでですか?」

モジモジとスカートの端を掴みうつむいて言った。

「手かぁ……」

俺は秋菜の小さな白い手をみて考えてみた・・・・




(せんぱーい!私と手を繋いでおうちに帰りましょう!)

可愛い彼女の秋菜は放課後抱きついてきた

【手を繋いで帰るか!いいな!】

(でっしょ!つ・い・で・に!いつものコースじゃなくて遠回りして河川敷でおっぱい触らせてあげる)

【マジかよww!】


・・・いいな

「ぐへへ……へへへへ」

「せ、先輩?急に口が緩み変な声が聞こえてるんですけど大丈夫ですか」

変な妄想していたら顔の前に可愛い秋菜の顔があった。

「は!……う、うん大丈夫だし、多分手を繋ぐと思う……」

「そうですか、私手が小さいから先輩の大きな手ちゃんと掴めそうですかね?」

「多分大丈夫だと思うよ?……繋いでみる」

「え!?………えっと、は、はい」

柔らかな秋菜の手を俺は掴んだ


すべすべして……柔らかくて……それに横を見ると秋菜の顔が近くて……



「おれ、お前のこと好きかもしれない」



「え?」


「俺、もしかしたらお前のこと好きかも知んない」


夕暮れの放課後俺は秋菜に本当に告白した



「う、嘘ですよね先輩!」

赤面する秋菜、ううっかわいい


・・・・・・・・


俺は「本当だ」というセリフが喉の先まで出ているのに緊張して言えなくなってしまいしばらくの間俺と秋菜は見つめあっていた

「あの………先輩?」

秋菜の甘い声で俺は我に返った

「え?あっ、うん、本当だ」

俺がそう反応すると

「ま、まさか惚れたのってこの間のホテルの行為ですか?」

「ちが!………くはないけどそれ以前にお前のこと好きで、この間の事故の時告る前にお前の胸見れたのは嬉しかった……」


あ、これは嫌われる……とおもったら秋菜が

「わ、私もこの間の事故以前に先輩のことが好きでした!細かく言うとこの間の秋葉の時、夜家まで送ってくれた時から先輩に恋してしまいその翌日から先輩を意識し始めてホテルでの暴走は2人っきりになって爆発してしまったからです!」


「じゃあ本格的に付き合ってみる?」

俺はそう言うと秋菜は思い切り首を縦に振り

「ぜひ!お願いします」

と涙ぐみながら言った


翌日の放課後

「ある日突然彼女ができて俺は毎日愛でてます」

俺は先輩にそう言ったら

「そうかい!私の思惑通りになった、よし、祝ってあげる!今週の土曜日は空いてるかい?空いてるなら私の家で付き合い記念会としてケーキを焼いてやろう!」

「け、ケーキ!?先輩、ケーキ作れるんですか?」

俺がそう言うとふふんと先輩がドヤって

「ゴローくん、私をあまりバカにしないでくれこれでも家庭科での調理実習では高成績を残しているのでね、ではわたしからあっきーに……いや、あっきーに連絡はゴローくんにやってもらおう」

「分かりました」

俺はスマホを取り出し秋菜に連絡をしたらすぐ既読がつき【いいですね!】とアニメキャラが言ってるスタンプを送ってきた


「秋菜もやって欲しいらしいです!ではお言葉に甘えてよろしくお願いします」


こうして俺と秋菜のお付き合い記念会を行うことになった



家に帰り、俺に彼女が出来たことを伝える為に萌と薫を部屋に呼んだ

「ん?萌、薫は?」

「薫お姉ちゃんならちょっと話があるから先行っててって言ってたよ?」

俺は眉間にしわを寄せ

「話?俺も話があるのに……」

俺が薫の部屋に行こうとしたその時、部屋の扉が開いた途端薫が




「お兄さん、私、彼氏できた」


と言った。


「お兄さん、私、彼氏できた」


突然言われた俺は空いた口がふさがらなかった


「おま、いつの間に」

俺が言うと薫は俯き

「お兄さんが桜ちゃんのところに行ってる間に……出来ちゃった」


出来ちゃった………じゃねーよ、妊娠か!


「あ、も、萌は知ってたか?」

咄嗟に俺は萌に聞いてみたが萌の方は開いた口が塞がらなくなったらしい

「萌ちゃんにもお兄さんにも初だし、当然桜ちゃんにもいってない」

「ち、ちなみにどんなやつなんだ?」

一応、いちおう!聞いてみることにした


「えっと、その人は学校の友達で……」


俺はその瞬間、無意識に薫の頬を殴ってしまった


「お兄さん、なんで私を殴ったの」


「え……」

俺は薫の頬を殴った左手を見つめた


「えっと、仮にもおまえは俺の妹だから、えっと、母性というか家族愛というか瞬間的にショックを抑えきれなくて……ご、ごめん」


おれは殴った手を見て薫に謝り部屋を出ていった




自室に行き俺は秋菜に電話した


「秋菜、起きてるか?おれだ」


【あ!私の彼氏さんです!なんですか?】

電話からは優しい声が聞こえた

「えっと、付き合うことを薫に言おうとしたら薫に彼氏が出来たんだよ」

【あらまぁ!おめでたじゃないですか】

おめでたい……そうなんだよな、

「でも、俺何故か無意識に薫の頬を殴ってしまったんだよな、何でかなって」

【薫ちゃんの頬を!なんでかって……うーむ………悩みますね、私には兄弟がいないので】

「そうだよなぁ」

電話越しにため息をしてしまった。


数分沈黙後、秋菜が

【たぶん、多分ですけどそれって愛情だと思います】

「愛情だと?」

俺はその言葉を聞き眉を寄せた

【そうです、愛と言っても私たちのような恋愛感情ではなく1番近くにいて見守っていていつの間にか身につく愛です、えっと上手く伝えられないと思いますが要するに『家族愛』です】


「家族愛かそう言えば桜にお兄さんがいて、家出するってなった時も心配になったな」

【多分それと同じく感情だと思います】


そうか、あれは愛情で殴ってしまったのか、


「謎が解けたよ!ありがとう秋菜」

【お役に立てて幸いです】

俺はすぐ秋菜との電話を切り薫の部屋へと向かった。



「薫!さっきは殴ってごめん!」

おれは薫の部屋の前で謝った……だが薫の部屋からは返事がなかった

「薫!聞こえるか?お兄さんが悪かった!彼氏出来て良かったな」

しかしまた返事が来なかった


数分粘ったが返事はなく部屋へと戻ろうとした時

「お兄さん、さっきから私の部屋の前で何してるの」


後ろから薫の声が聞こえた


「か、薫!さっきまでどこに」

「え?お兄さんが私を殴って部屋に行ったあとずっと下にいたけど」

頬に氷を当てて薫は答えた

「氷、だ、大丈夫か?さっきは思い切り殴ってしまってすまない」

「大丈夫だよお兄さん、で、部屋の前で何してたの」

ムッと薫が聞いてくる

「えっと、さっき殴ってしまった謝罪と彼氏出来た報告の祝辞を」

「そうなんだ、ありがと、それでお兄さんは私にもうひとつ言いたいこと無かったっけ」

「えっ?あっ!お、俺!1年の秋菜との交際を始めました」

薫は驚いたが直ぐに微笑み

「私とお兄さん、どっちも同じことを考えてたんだね、お兄さん、おめでとう」

「うん、ありがと、桜にはまた後で報告する、もちろん薫の話も」

「うん、よろしくね」


こうして俺と薫にいいことが起こった。


俺は本当に幸せだと思う、欲しかった妹が手に入り(義理だが)彼女までも出来た。


こんなに素晴らしい青春はあるだろうか!?


そう思いながら桜、薫、萌の3人を思い出し


『お兄ちゃんもう朝だよ? 今日は桜を幼稚園に送ってくれるんでしょ?』


≪桜の声で目が覚めた俺は自分の上にどっしりとのっかってるかわいい顔をしている妹に優しく微笑んだ≫


『おはよう、朝からこんなの言うのは悪いと思うけど桜、重い、どいてくれるか』


俺はそういって桜を自分の上から下ろさせた


「そう言えば薫と萌は」

薫が作った朝食を食べながら桜に聴く

「萌ちゃん達はもうとっくに学校いったよ」

「そうか………って、今何時だ」

俺は後ろを向いて時計を確認すると8時半になる直前だった

「さ、桜!急ぐぞ!こんな時間だったなんてってなにウインナーやいてるんだ」

「え!遅刻してもいいじゃん」

「よくないんだよ!ほら、早く行くぞ」

おれは桜の手を引っ張り玄関を開けた


目の前にいたのは秋菜だった

「ごろーくん!遅すぎだったのでお迎えに来ました」

にこっと笑顔でお迎えしてきた秋菜に

「秋菜!って迎えに来たのはいいがもう少し早く来てくれるか」

「そうしようとして昨日熟睡したのですが寝すぎてしまってつい10分前に家を出たんです、ところでごろーくんはいつまで桜ちゃんの手を繋いでるんですか、まさかうわきですか」

一瞬秋菜が眉間にシワができた

「うわきじゃねーよ!てか早くしないと遅刻してしまう」

「お兄ちゃん、秋菜さん、悲報です、遅刻確定です、ちなみにわたしは遅刻していいように先生に賄賂を使っているのでいつ行っても大丈夫、ささ、お二人共水入らずで登校してください」

そういい桜は家の中に戻ろうとしていた

「だめだ、てかだいたい先生に賄賂つかうなよ」

「だって先生がお前は優秀だから好きな時に学校来て良いっていってくれたんだもん」

頬を膨らませ桜は言った

「そ、それよりごろーくん早くしないと学校遅刻しちゃう」

あわてて秋菜がそういうとおれはスマホの電源を入れ時間を確認した


時刻は………8時40分だった


あ、もう学校遅刻確定だわ




学校につき遅刻確定してこっぴどく叱られたのは別の話で、10分休憩になった。


10分休憩になった途端俺に寄ってたかってきた生徒が多く話しは俺の彼女の話で持ち切りだった


『キスはしたの~』だの『手は繋ぎましたか~』だのガヤがうるさかった


昼休み、先程の話の続きを聞かれる前におれは昨日の夜秋菜と約束した屋上へと急いだ


屋上には下のグラウンドを秋菜がロングヘアの髪を風に揺らしながら見ていた


「秋菜、お待たせ」

俺が声をかけると振り向きニコリと笑った

「ごろーくん遅かったね早く食べてお話しよ」

そういい秋菜は弁当を開けた

「ごろーくんのお弁当は桜ちゃんの手づくりなの」

俺の弁当を覗き秋菜が言った

「おう、このハンバーグのタネ昨日の夜から作ってたぜ、食べてみるか」

「うん!えっと、交換するものは………これかな」

秋菜が俺の弁当箱に入れたのはなんとも可愛らしい1口おにぎりだった。


「えへへ、小さいけど私の手作りなの、まだごろーくんのお弁当とかは作れないけどそのうち努力します」

「手づくりおにぎりか、ありがとう」

おれはそういいおにぎりを食べた


秋菜のおにぎりは塩加減が完璧でちょうどいい美味しさだった

「どう、かな」

「うん、とっても美味しいよ」

俺がそう言うと秋菜は満面の笑みを浮かべ抱きついてきた

「ありがとうごろーくん!だいすき」

「あ!お弁当が落ちちゃ……ぶへぇ」

飛びついてきた瞬間顔面に秋菜のふたつのマシュマロが当たった。



放課後、遅刻したことを題材に反省文を書くはめになった

「えっと、『僕は彼女のために遅刻したことを認めます』これじゃだめか、えっとうーんと『朝起こしてもらう幼なじみがいなくて』ってのは俺の妄想で………反省文って嫌だなぁ」

書くことが決まらなくペン回しをしていると


「僕は義理の妹に騙され遅刻しました。ってのはどうお兄ちゃん」

突然桜の声が後ろから聞こえた

「さ、桜!いつ学校に来たんだ」

「うーんと、今」

「今!?もう放課後だぞ」

にひひと桜は笑い

「そんなことより校門であっきー待ってたよ、別にその反省文って全文書かなくてもいいって聞いたことあるよ、ささ、行きなされ」

桜は手を外へ向かって仰いだ

「桜……お前のその言葉信じるからな」

おれは原稿用紙に『義理の妹が起こしてくれなかった』といい教卓に置いて急いで秋菜がいる校門へと向かった


「あ!ごろーくん!遅かったね」

校門で秋菜はスマホを片手に俺を見るなり手を振っていた


ふっている時に少しジャンプしていたのでスカートから色白な太ももが見えたり消えたりしていた


「お待たせ、さ、帰ろうか」

「うん」

俺たちは手を繋いで帰った


帰り道

「あのね、ごろーくん」

「ん、何」

俺が秋菜の顔を見ると俯いて赤くなっていた

「あのね、私の事『秋菜』って呼ばずにあだ名で呼んで欲しい」

「え?た、例えば」

「例えば………あっきーとか、会長のように……ごろーくんは私の彼氏だから、あだ名がいい」

「あー………えっと………好きだよアッキー」

「!………ふふっいいね」

秋菜は握っていた手を少し強く握った

……………………………………………………………………………………


俺にはいま彼女、妹がいる



この言葉を思い切り言おう


『妹はいいぞ!』





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る