14話 ここどこぉ?

・?月?日・  ……???……


 体がだるい……いや、重い

 

 ……ここは、俺の家?


 見慣れた天井、よく使うカメラ、その他もろもろ


 ただ1つ違うところは本棚に何も本がないこと、机の上にあった勉強道具などの小物類それらが全てなくなっている。


 窓の外を見ても普通の景色だ。

 俺の街がある。

 人1人歩いていないのが気になるが、ここが俺の家というのは本当のようだ。


 ……まさか、夢オチ?

 本当は妹は失踪してなくて、親父が俺を異世界に飛ばしていなくて、アリスは死んでなくて……全部夢だったってことか?



「うぅん……」


 ん? 布団の中から声がする


「あれ? ここどこぉ……?」


 布団から飛び出してきた水色の髪の少女はこっちを見る少女は、数秒停止して頬を紅潮させる。


「マリ……ン?」


 俺のよく知るマリンだった。


 うん、夢じゃなかったわ

 マリンを見たことで複雑な気持ちになる。


 ただ、それよりも気になったことはマリンが喋れているし、何より雰囲気が全然違うこと。

 あれだけあった傷が全て綺麗になくなり、白い肌が露わになっている。

 一体何が起こっているんだろう。


「す、すいません……」


 顔が耳まで真っ赤のマリンは俺との距離を思い出し、ハッとして涎を拭きながら後ろを向く。

 もともとマリンは俺にくっついて寝ていたらしい、なんか体を舐めていた後がある……


 まぁ気にしないでおこう


 マリンが後ろを振り向くと、背中に見えるのは小さな羽

 魔族と人間の違いが今まで謎だったが、こんなところに魔族特有のものがあったのか。


「ひゃう……!?」


 やばい、つい触ってしまった


「わ、わるい、つい……」


「いや、だ、大丈夫です。ちょっとびっくりしただけで……」


「そ、そうか……」


 ――気まずい空気が流れる……


「喋れるようになったんだな……」


「はい、ご迷惑をおかけしました……」


「ということは、俺のことはわかるか?」


「はい。陽太さんですよね?」


「あぁ」


 じゃあ喋れなかった時の記憶もあるってことだよな……

 そしたら1番気になっていることを聞けるはずだ


「マリン……いや君のことについて教えてくれないか? 今まで何があったとかも頼む」


 マリンは仮の名前だからな、本当の名前があるはずだ。

 


「マリンでいいですよ、陽太さん。そうですね、今までのこと、話そうと思うのですが……」


 少し話しにくそうにしている。

 話しにくいことなのだろうか


「実は……」


 とん……とん……とん……とん……


 廊下の階段から音が聞こえる。


「マリン! 俺の後ろに隠れろ!」


 マリンに小声で声をかける。

「は、はい……!」


(アリス、魔法準備だ)


 アリスにいつも通り魔法を頼む……が

 応答がない


(アリス! おい、アリス!!!)


 くそ、落ち着け俺。

 いつも当たり前のようにいたアリスから応答がない……よくあることじゃないか。

 あいつは普段よく寝てる。

 今も寝ているはず……


 だが俺には嫌な予感が鳴り止まなかった。


「大丈夫……?」


 マリンが心配してくれるが、それも頭に入らない。


 どうであれアリスは今いない。

 マリンは……今の状態で戦えるかもわからない。

 俺しかいない。


 俺は震える手を前に出し、詠唱を……


「はい、どーーん!」


 部屋のドアが思いっきり開く。


「おはようございまーす! 朝だよーーー!って2人とももう起きてたんだね」


 そこには現実にはいないはずの少女……アリスが立っていた。

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