第28話 ほんとのところ
「いーや、マージでないわー。キモすぎだわー」
「ねー。普通ここまでするー? コサき……じゃなくて、小咲さんのとこの高校から電車使ってうちらに会いに来るとか、ヤバすぎw」
「………………」
三代駅前にあるファミレス内、テーブル席にて。
俺は派手女子二人組、ミナ&ヒナから軽蔑のような視線を受けながら、テーブルを挟み、向かい合うようにして椅子に座っていた。
三代高校の校門前で待機していると、二人とはすぐに出会えたのだ。それから話を付け、奢ることを条件にし、ファミレスで小咲さんについて聞くことにした。
最初は断られるかもと思っていたが、たまたま一緒に遊ぶ予定だった男子二人組が急遽入った補習か何かで遊べなくなり、暇してたらしく、ついてきてもらえた。幸運以外の何ものでもなかった、ということになる。
「俺がキモいとか、ヤバいとか、今はそんな話どうでもいいんだ。二人が中学時代、小咲さんに何をしていたのか教えて欲しい」
「何をしていたかって、なに?w まるでうちらが直接的に被害与えてたみたいな言い方じゃんw」
「……。ごめん、ちょっと気に障る言い方になるけど、与えてたんじゃないの? 二人に会ってからの小咲さんは、すごい落ち込んでた。それに、コサ菌なんてあだ名、そんなの使えば普通にいじめみたいなもんだ。違うのか?」
俺が厳しめに問いかけると、二人は呆れたような表情を作り、顔を見合わせ、一人がため息を吐いた。こっちはミナの方だ。セミロングの方。
「あのねぇ、関谷……ゆーりだっけ? あんたさ、うちらの何を知っててそんな失礼な推測しちゃってんの? 気に障る言い方になるけどって、だったらちょっとは言葉選んだらどーなのよ。ふっつーにイラっとくるんですけど」
「ねー。めちゃくちゃ決めつけしてくるんですけどー」
「イラっとさせたのは謝る。けど、何も知らないからこそ、今日こうして話を聞きに来た。小咲さんのこととか、あったことを教えてくれ」
頼む。
その一言で締めくくり、俺は頭を下げた。
頭を下げてたから、表情こそ見えなかったけど、「っ……」と詰まるような、言葉にならない声が小さく聞こえてきた。
彼女らにしてみれば、なんで小咲さんのためにここまで俺がするのかと、ひたすら疑問に思ってるのかもしれない。気持ち悪い、とも思われているかも。
でも、そのことについては二人とも聞いてこなかった。
高校に入って、小咲さんに俺という友達ができたことに驚いたのか、はたまた別の理由か、よくはわからない。とにかく、そういったことについて言及することはなかった。
「はぁ」
代わりに、さっきよりも軽いため息が聞こえてくる。俺はそれを聞いて、ゆっくりと顔を上げた。
ミナも、ヒナも、仕方ないといった様子で、どこか冷や汗を浮かべているような、バツの悪そうな顔をしていた。
「別に二人がやったことに対して俺は偉そうなことを言ったりしないし、罵倒したりすることもない。何もかも、中学時代のことだ。それに対して外野がとやかく言っても仕方ないからな」
「だったら……」
「聞かなくていいってわけにもいかないんだ。今の俺……いや、俺たちにはその情報が必要で、小咲さんと仲良くなるには、どうしても色々と知っておく必要がある。だから、頼む。教えてくれないか?」
二人はゆっくりと顔を見合わせた。バツが悪そうなところから、申し訳なさそうな顔をする。
もしかしたら、根っから悪い人たちというわけでもないのかもしれない。
「……わかった。じゃあ、話す」
小さい声で、ヒナが言う。すると、ミナがかぶせるように少しだけ身を乗り出して言ってきた。
「でも、勘違いしないでよ!? うちら小咲さんのこと直接的にいじめてたとか、そういうわけじゃないかんね!? いじめとか、そんなん基本しないし!」
「わかった。じゃあ、そのうえでありのままを話して欲しい。いい?」
「……りょーかい……。あ、あとなんだけど……」
「?」
「この……抹茶パフェ……追加してもいい?」
視線を俺から逸らして言うセミロングじゃない方、ショートヘアの派手子ヒナ。
「あ、ああ。いいけど……」
俺は若干引きつった笑みを浮かべてしまい、了承。
お前、それ二つ目だろ……。
なんてことは言えず、チラッと伝票を確認するのだった。
うしろの席のクール美少女が授業中いつも俺の背中に照れながら「好き」と書いてくる ~背中に指で書いてるからバレてないと思ってるみたいだけど、実はバレバレな件~ せせら木 @seseragi0920
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