宴の火
バブみ道日丿宮組
お題:それいけ宴 制限時間:15分
宴の火
これを読んでるとき、すでに僕はいないだろう。
だからこそ、今宴が開かれてるはずだ。
君は人が死んだのにどうしてこの人たちは喜んでるのだろうとさぞや思うであろう。
知らないことがたくさんあるーー君が知らない僕だけの秘密があるんだ。
それを残してしまうと君が狙われるから、詳しいことはここには書かないでおこう。書かなければ、君以外の誰かが発見したとき君の手元にくる確率も高いしね。
もっと話をしておけばよかったかなと今更ながら後悔しそうになるが、これは一時的なものだろう。いなくなった人が帰ってくることはない。後悔してもすでに遅い。
まぁ……僕が生きてる頃に帰ってくるとかそういう話は酷くおかしな話だけどね。
誰もが僕が死んで喜んでる。
僕がやったことというか、僕という存在はそれだけスケールのでかいことなんだ。
僕が書かなくても君はいずれ到達するかもしれない。
君は僕と同じ血を強く受け継いでる。いつ発症してもおかしくないだろう。大丈夫。病気なんかじゃない。しいていえば、因子か。才能のようなものだ。
もっともそれを許す人は君のそばにいない。きっと封じ込めようとしてくるはずだ。
だからこそ、今は宴を楽しむといい。
一週間……いや一月はやってるだろうしね。
悲しみに落ちるのは少しだけでいい。
僕がいないことを悔やまなくていい。
だから、前にだけ進め。後ろを振り向くな。
これから君が進む道はひどく険しい道だ。戻りたくなることもあるだろう。けれど、もう子どもじゃ入れられないんだ。
「……これが因子」
見えないものが見えてきただろう。
それは世界の仕組みかもしれないし、一族の呪いかもしれない。
「……うん」
力あるものは力なきものを導く必要がある。
僕ができなかったことだ。もしかしたら、君は一族を変えられるかもしれないし、ダメかもしれない。
「……お兄ちゃん」
夢忘れることなかれ。
そうすれば、君はキミのままでいられるだろう。
「……赤色、青色、紫色」
今は密やかに過ごせばいい。
歩み出したら、もう戻ることはできない。
「……うん」
さぁて、手紙は最後まで読めたかな?
読めたのなら、君も力に目覚めたということだ。他のものには見えない言葉。様々な因子が作り出した文字の線。つながる想い。
なにをどうするかは君が決めろ。僕はもう関われないから。
「……さようなら」
宴の火 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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