第20章

 店に入ると、店員が二人立っていて、若い方の男が愛想笑いを浮かべながら、近づいて来た。

「ご来店は初めてでしょうか?」

「うん。リナさんをお願いします」

「あ、誰かからお聞きになられましたか?」

  何故か店員は微妙に顔を曇らせた。

 それから、「こちらへどうぞ」と言って、左側のピンクのカーテンを開いた。

 カーテンの内側には更衣室くらいの大きさの部屋があり、その壁には女の子達の顔写真が貼ってあった。サイトのものとは違って、手で顔を隠していない写真であった。

「この子になりますが、よろしいですか?」

 店員が指差した写真はまさしくりんの写真だった。

「そう。この子。……お願いします」

 光彦は妙にどきどきし、声が上ずった。体が汗ばむのを感じた。探し求めていた物をようやく見つけた時の喜びと興奮に似ていた。

 店員はまた困ったような顔をして、写真の上の文字を指差した。そこには120分待ちと書いている。

「リナさんはすごく人気なので、120分以上待って頂くことになりますが、よろしいですか?……それよりもこの子なんかどうですか?先週入店したばかりの子で、可愛いくて、性格も良くて……」

 忙しい女の子よりも客がつかずに暇な女の子に客をつけたいのだろう。そんな店員のセールストークをぼんやりと聞きながら、彼はりんのことを考えていた。

 りんがそんなに人気があるとは思いも寄らなかった。可愛いい顔立ちでなく、ちょっとキツめの美人系の顔だ。それに女子力も高くないし、色気もない。

 また、竹を割ったようなという形容がぴったりのサバサバした性格で、媚びることもなければお世辞を言うこともしない。

 こういうところに来る客は愛嬌のある可愛いらしい子か、優しくて癒される感じの子を好んでいて、彼女みたいなタイプはあまり人気がないのではないかとなんとなく思っていた。意外な気がした。

「いや、リナさんでお願いします。待ちます」 

 店員の説明が終わった時に、そう答えると、店員は不承不承という感じで「わかりました」と頷いた。

 

 それから、料金を払い、案内されて、待合室に通された。

 そこはかなり広くて、12畳以上はあった。真ん中にテーブルがあり、その四方をソファが囲んでいる。光彦は腰を下ろして、周りを見回した。こういう店に来たのは初めてだった。

 客は10 人くらいいた。土曜の昼なのに、結構混んでいるものだなと思った。なんか野暮ったい田舎のおじさんというか、垢抜けないしょぼくれた感じの中年や初老の男ばかりであった。

 自販機があり、飲み物はただで飲めるようになっている。

 光彦は何杯もコーヒーを飲みながら、スマホでニュースを読んだり、置いてある雑誌を読んだりして、時間を潰そうとしたが、落ち着かない。苛々しながら、待ち続けた。

 2時間どころか、3時間も待たされて、やっと名前が呼ばれた。

 店員に先導されて、二階に上がる。廊下の両側に扉がある。そして、店員が左奥の部屋の前で立ち止まり、その扉を開けた。

 そこには、りんがいた。

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