エッグ陥落if

「いいんだよ、ゆっくり仲良くなろうね」


 あまりにも優しく、慈愛に溢れた表情で自分の事を見つめてくるので、真珠はつい頷いてしまった。どちらにしろ、自分の家族に筋に通った虚偽報告と大金を渡して、経営難の会社もどうにかしたらしいので、他に頼れる場所は今のところ思いつかない。そもそも連絡手段も絶たれている。

 あのヒーロー警官が知ったならば、きっと怒髪衝天は間違いなかろう。怪人ではないが悪党の部類である。そんな人間に命運を預けるような真似をするなんて。ましてや先週の詐欺グループのガサ入れ程度で済んだ案件を引っ掻き回した相手だ。

 しょんぼりしている真珠の両肩に、美しい指輪が嵌めた男の手が触れた。


「そんな顔をしなくていいのに。貴女は何も悪くない」


 真珠の肩を抱きよせ、トパーズは好物を口にする時のような嬉しそうな表情で、頬にキスした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る