4.カントリーフェスタへの誘い

「あんたか、俺に話があるってぇのは」

 手持ち無沙汰にパズルを弄りながら、男は呼び出しの場へやって来たフード姿の人物を眺める。どう見ても堅気には見えない。

 もっとも、それは自分も変わらない。男もユーシズ魔導公国東部において、『槍使い』のあだ名で少しは知られた盗賊だ。

 そして、相手の体格はそんな熟練の重戦士として鳴らした『槍使い』に勝るとも劣らないものだった。

「その通りヨ。ワタシと協力すれば、アナタ大儲け出来るネ」

 フード姿の言葉にある妙な訛り。これは人族の宿敵、蛮族であることを告げていた。普通のものであれば、その言葉に信を置くことは出来ないだろう。

 だが、フード姿がよこした情報、それは緻密な物で、自分たちを罠にはめるために用意したものとは考えられなかった。

「信じられねえ話だなあ。大体、なんだって俺らの手を借りようとする。こんだけ調べているんだったら、てめぇらでやりゃ良いだろう」

 儲け話を無料で教える馬鹿はいない。当然のことだ。

 フード姿は含み笑いをしながら答える。

「簡単ネ。騒ぎを最大にしたいカラ。アナタが欲しいのは金だけだろうガ、ワタシ達は出来る限り、祭りをムチャクチャにしたいのヨ」

 フードの奥で牙が光った。

 『槍使い』は改めて、自分の背筋に冷たいものが走るのを感じながら、相手が蛮族だと思い知る。

「俺らを裏切らねえって保証はあるのかい?」

「無いヨ」

 フード姿は口をゆがめて笑う。

 『槍使い』は自分の得物に手を伸ばす。

 そして、フード姿は当たり前のように、笑って言った。

「そんなもの無いヨ。襲撃したらお互い、やりたい放題やるだけ。でも、それが一番、お互いが儲かる。違うネ?」

 普通であれば交渉の場で言うような話ではない。

 しかし、それゆえに『槍使い』の心に響いた。

 当たり前だ。人族と蛮族の間に信頼など成立しない。だからこそ、成り立つ関係というものもあるのだ。

 『槍使い』は武器へ伸ばした手を引っ込めると、凶悪に笑って見せる。パズルはもう、弄っていない。

「良いだろう、決まりだ。俺の手勢を貸してやるぜ、剛毛野郎」

「ありがたいネ。なら、襲撃は祭りの夜。それまでの計画、お話させてもらうヨ」

 その時、フード姿の後ろで何かが軽く唸った。

 それは、祭りの夜が血と炎の宴になる予感への喜び、だったのかもしれない。



GM : では、先の事件から数日後、皆さんは拠点であるファリアの街に戻ってきました。皆さんはここにある冒険者ギルド「樫の木亭」にいます。ギルドの中央に巨大な樫の木が生えているという、特徴的なギルドです


クリスティーネ : 「~♪(鼻歌)」研究に進展があったので上機嫌にしていますわ


GM : では、みんながギルドの食事スペースでのんびりしているところに、クリスティーネが上機嫌でやってきた感じかしらね。ちなみに、フラッドは用事でちょっと外している


ジェニー : 「蛮族は見つからず……ヒマね」


ナング : 「やぁ、教授。その様子だと新しい遺跡の情報でも得たのかな?」


クリスティーネ : 「いえ。前に受けた依頼の時に見つけた古文書。あれを解読していたのだけれど、興味深い事が書かれていたのよ」


GM : これは専門用語の羅列が長くなる奴


クリスティーネ : 語らせると延々語った挙句に調査に行こうと言い出すやつです


ナング : 確かに完全にシナリオの導入になっている(笑)


クリスティーネ : 「聞きたい?」(ここが分岐)


GM : では、そんな話しているところに、フラッドがやってきます


ナング : ではナングがうっかり「聞こうか」とか言いかけたところで、フラッドに任せよう(笑)


フラッド(GM) : 「おお、クリス女史が上機嫌とは、何か良い研究成果でも上がったか。あいや、すまん。ちと神殿の方で頼まれごとがあってな。すまんが、冒険者の手が足りんということじゃ。力を貸してもらえんか」


ジェニー : 「神殿? またアンデッド?」


ナング : 「フルシル神殿か。俺は直接の信者じゃないとはいえ、いつも世話になっているからな。やぶさかではないが……」


クリスティーネ : 「人助けかしら? こっちは急ぎでは無いから、協力はするわよ」


フラッド(GM) : 「いや、ジェニー殿の好む蛮族退治……というわけでもない。ああ、人助けということになる。儂の顔を立てると思って、手伝ってもらえるとありがたい」


ナング : 「アンデッドでない、蛮族でない……ならば、奈落か?」


ジェニー : 「好んでるわけじゃないけど……大きな獣でも出た? サーカスの猛獣でも暴れたりとか」


フラッド(GM) : 「いや、実は祭りの警護じゃ。どうにも人手が足りないと言うことでな」


ナング : 「そいつはまた……平和な依頼だね」


 フラッドの持ってきた依頼はこのような物でした。

 この辺り一帯に住むリカントの祭りがファリアの町はずれで開かれようとしています。祭りは色々な街が持ち回りで主催をしていて、今年はこの街が舞台になったとのことです。この辺に住んでいる10あまりの部族が一か所に集まって、名産品を交易したり、名物料理を出したりして交流する大規模のカントリーフェスタになります。また、若者たちのお見合い目的を兼ねているものです。


ジェニー : 知り合いいそう……


GM : 知り合い……いるだろうなあ(笑)


ナング : 今のジェニーを見られるのは気まずいのでは(笑)


GM : ジェニーもこの街で主催している時じゃないけど、何度か参加したことはあるだろうね


ジェニー : 「リカントの祭りって……あのリカントの祭り?!」


フラッド(GM) : 「おお、ジェニー殿はご存知か」


ナング : 「しかし、それがどうして「冒険者の」警護がいる事態に?」


フラッド(GM) : 「まあ、ジェニー殿は知っているだろうが、平和なもんでそんなに大規模の警護は雇ったりしておらんかったのだが。最近、この辺りで盗賊が多く出ている。また、蛮族の目撃情報も増えていると言うことでな。それで、警護を増やそうと言う話になったそうじゃ」


ジェニー : 「……蛮族? わたしたちリカントの祭りに、蛮族が?」


ナング : (あっ、という顔)


フラッド(GM) : 「ああ、いや、来ると決まったわけではないぞ。来ると困るからってことじゃぞ(あせあせ)」


クリスティーネ : 「あくまでも可能性、の話ですよね」


ジェニー : 「……そうだったわね。でも、可能性にしたって急よね」


ナング : 「フラッド、その目撃情報の有った"盗賊"と"蛮族"は同じ存在なのか?」


フラッド(GM) : 「"盗賊"と"蛮族"は別じゃよ。以前から集めてはいたんじゃが、微妙に集まりが悪くてな。で、儂が神殿の集会で顔出したら、助けを頼まれたと言う話じゃ」


ジェニー : 盗賊団だとすると平和な割に比較的規模が大きいんで、狙い目ではあるんですよこれ


GM : フラッド(『黒き焔』の件で、リカント部族が警戒して神殿に警護を増やしたいと申し出た……ってのは、言わん方がいいな、こりゃ)


クリスティーネ : ま、シナリオ的には関係ありますわね(笑)


フラッド(GM) : 「ということで、手伝ってもらえんじゃろうか? 世話になっている相手でな、儂も断りづらいんよ」


ジェニー : 「……蛮族のこと抜きにしても、昔のお祭りの警護手伝えるんだったら、私は行く」


ナング : 「まぁ、教授も手伝うと言っているし、俺としても先に言った通りやぶさかではない。こういう形で”平和を守る”のもいいだろうさ」では、フルシル神殿に顔を出しに行けばいいのかな?


GM : 話が早くて助かる。それでは、皆さんはフルシル神殿に向かいます。祭りは明日からなんで、その前日の説明を受けていただきたい


ジェニー : 天候の神で農民の信仰も多いみたいだし、主催なのはそれが理由かな


GM : はい、そうです。小神の神殿なので、そこまでは大きくないけどね


フラッド(GM) : 「おーい、副神殿長殿はいるか?」


GM : 皆さんが神殿にやってくると、副神殿長が姿を現します。狼リカントの女性でフォスさんです。年齢29歳で凛とした雰囲気の女神官さん


ナング : リカント祭りの管理人だから、そりゃリカントか


フォス(GM) : 「ありがとう、フラッド老。皆さん、初めまして。私はフォスと申します」


ナング : 「我が友フラッドがいつも世話になっているようで。私の名はナング」


フォス(GM) : 「あなたがナング様ですね。お噂は聞いております。止まない雨はありません。あなたの未来に晴れの日が訪れんことを」


クリスティーネ : 「初めまして、クリスティーネと申します」


ジェニー : 知り合いだったりする?


GM : リカント社会だって広いし、全てが知り合いではないさ


ジェニー : 「ジェロニモ・J・ジェニーよ」


フォス(GM) : 「さて、それでは皆さんには警備をお願いしたいの。これが会場の地図ね(GMマガジンのマップを見せる)」


ジェニー : 本当に祭りの警備だ


フォス(GM) : 「基本的には祭りは3日あるので、その間ついて欲しい感じになるわ。日当は本来30ガメルなんだけど、皆さんの力量に合わせて色を付けて50ガメルお払いします」


ナング : 盗賊を警戒するって話だから……資産価値の高いエリアを重点的に守ればいいのかな


ジェニー : 多分、どのエリアも盗賊にとっては重要そう


ナング : 本当に冒険じゃなくて「人助け、お手伝い」なんだね


GM : そういうことですね。もちろん、大きなアクシデントを解決すれば、ボーナスを出します。本当に警備のバイトです(笑)


フォス(GM) : 「あと、こんなものしか用意できないんだけど……」


GM : と言って、皆さんには食べ物エリアの屋台で使えるチケットをくれます(笑)


ナング : コロッケ1つ無料とかの(笑)


GM : そうそう(笑)


ジェニー : 一瞬満面の笑みを浮かべそうになって思いとどまります


ナング : まだ「一生を復讐に捧げた戦士」にはなっていなかった、良かった良かった


GM : ちなみに、リカントの郷土料理が多くて、鹿・熊・猪を用いたジビエ料理や、虫や魚を使った料理がある感じです


ジェニー : 「懐かしい……」


クリスティーネ : 「~♪」(チケットを見ながら何にしようかと、ちょっと楽しそうにしている)


ナング : 警備の事を真面目に考えているの此処だけか!?(笑)


クリスティーネ : 失礼な、警備の事『も』真面目に考えてますわ


ナング : 『も』(笑)


フラッド(GM) : 「手広い場所だけにたしかに冒険者の質よりも量にはなるか(←真面目に考えているアピール)」


クリスティーネ : 「これも調査ですよ。食生活には過去の歴史や文化が反映される物ですから。」


ナング : 「ふ、そういうことにしておこうか」


フォス(GM) : 「それでは、宜しくお願いするわ。明日は頼むわね。会場の下見をするなら、問題ないから」


ナング : 「ええ、冒険者にお任せを」

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