悪魔の卒業アルバム

卒業アルバム・・・それは進学した先で垢抜けない自分を自虐したり

ちょっと可愛い子を捜す為のアナログながら確実な禁断の書である。


俺も魔界の中学校、高校、大学と進んで

あまり髪を染めたりピアスを開けずに筋トレと

格闘術とプロレスに明け暮れ

気が付けば周辺にはガチムチな野郎共で溢れかえっていた。


それに科学の分野においては混ぜるな危険のモノを混ぜて

マスタードガスでガンギマリエディションになったり

(悪魔は毒物が好き)

胃袋でダイナマイトを爆発させたりもした。

デビル内臓を鍛えるのには持ってこいなのだな。


女なんぞ必要としない。カッコよさを認める事がカッコ悪い。

そんな意地だけで駆け抜けてきたと言っても過言ではない。


ただ、一時期お笑いに目覚めたと勘違いして高校の文化祭で漫才をしようとしたが

練りに練ったネタが複雑な台本と化して覚えきれずに

結果としてステージ上で魔界ビーム警棒を使い殴り合ってプロレスをすると言う

そんなドタバタ漫才で凌いだ事もあった。あの時にちょっと可愛い女子に

名前を憶えて貰えたのは嬉しかったが、それももう遠い日の想い出だぜ。


「へぇー。みんなヴェっさんみたいにミドルネーム付いてるんですねー。」


「師宮は武芸馬鹿でアホの子だったが、無駄に女にモテるヤツだったな。

 やっぱ悪魔の癖に悪いヤツじゃないと言うのはギャップ萌えなのだろう      か・・・」


「ヴェっさんだってあんまり悪いヤツと言うほどでは・・・」


そういいたいところだが、高校時代はかなりグレてたせいもあって・・・

大量の蟹ビデオのダビングで金儲けをしていてだね。

「鬼龍高校の機動隊」と言えば俺の事を指すのだ。

うん。それは言わないでおこう。


「結ちゃんも卒アルとか持ってないの?ご実家とかに眠ってるんかな?」


「ところがどっこい!魔界卒アル観れるって言うから

 私も高校時代の卒アル!持って来てるんですよー!」


・・・〇×県立越楠エックス高校・・・なんだこれは・・・

校舎の壁に「クレナイダー!!」とか「らすてぃ・ねいる」とか

頭悪そうなスプレーの落書きが施されていて

なんか教室がハードコアデスマッチの舞台の様になっていて

釘バットとか持ってるヤツ居るし・・・

おそらくは未成年であるにもかかわらず不健全な行為とか

おタバコをお召し上がりになっている様な不良の男だらけの真ん中に・・・

いかにも品行方正な学生時代の結ちゃんがニコニコと鎮座している。


「かなり荒れたトコだったみたいだけど・・・大丈夫だったの?」


「え?みんな宿題忘れるんでお勉強教えてあげてたら

 何故か彼らは顔を赤らめてモジモジと下腹部を抑えて

 一人でトイレ行っちゃって・・・

 そういうのが複数回あってから何故か慕われる様になったんです。」


そこまで行ったらアレな意味で襲われるのでは?と思っていたが

どういうワケかみんな全員ウブだった様だ。


「そもそも何でこんな学校に?」


「家が近かったんです!徒歩5分ですよ!お得でしょう!?」


修羅の国の様な学校に行くにしては動機が安直だったであろうが

特に問題は無かった様だ。


「いや、悪い子ばかりじゃないんですよ?いつも私を『姫』って呼んでくれて・・・懐かしいですね。でも一緒に居るとみんな一人でトイレ行っちゃって

エンドレスレインしてたと言うのですが・・・何の雨が出てたんでしょう?」


何とは言うまいよ。うん。見た目は不良だが

中身は到って健全な男性陣に囲まれていた様だ。

まぁこの頃から可愛いし今でも良い匂いしてくるし・・・

おそらくその頃から手にかけようものなら返り討ちにされていたであろうが

人間界にも悪魔の卒業アルバムがあるのだと思い知らされた悪魔であった。



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